REITはバブルになるように出来ている: REITバブルの造成から暴落まで

REIT(不動産投資信託)は、不動産投資にかかる面倒な問題を取っ払い、投資家が市場でいつでも不動産が売買できるようにする優れた金融商品だが、問題はREITが元々バブルになるように設計されているということである。

これはジョージ・ソロス氏が彼の著書『ソロスの錬金術』で指摘していた事柄だが、金融緩和の始まりや終わりの局面では、資産バブルに投資(あるいは空売り)できるREITに関する理解が非常に重要になるので、ここで一度説明しておきたい。

新参者の資金がREITの価値を底上げする

REITはある意味ではねずみ講である。新しく投資に参入してくる新参者の資金(増資)が、元々そのREITに投資をしている投資家の利益を底上げするように出来ているからである。

例えば、利回りが10%で一株当たり純資産が$10のREITが、発行株式数を倍にする増資を$20の株価で行ったとしよう。本来の価格の倍で同じ数の株式を発行するのだから、純資産は3倍になり、発行済株式数は2倍、したがって一株当たり純資産は1.5倍の$15に増えることになる。

また、純資産が$10であったとき、配当はその10%で$1であったが、純資産が一株当たり$15に増えるため、配当は$1.5となる。元々$10で投資をしていた投資家にとっては、利回りは15%である。

増資を重ねることで、一株当たり純資産と利回りが増えてゆくならば、将来の価値上昇を見込んで、投資家は本来の価値以上の価格でREITを買うだろう。投資家が高い価格でREITを買えば、そのREITはより高い価格で増資を行うことが可能となるため、投資家の期待と増資とが相互に上昇トレンドを強め合ってゆくことになる。これはソロス氏の言うところの「再帰的に自己強化的なトレンド」である。

金融緩和によるバブルの造成

また、特に金融緩和で不動産価格の上昇が見込めるときには、このトレンドは更に増幅され、自己強化的なトレンドに火が付けられることになる。

REITは投資家からの資金のほかに、借り入れを行い不動産を購入するため、金融緩和による低金利は借り入れコストを軽減し、高レバレッジを可能にする。金利が低く保たれている間は、高いレバレッジは高い利益を実現する。

更に、2013年からの日銀のように、中央銀行がREITそのものを買い入れるとき、REITは本当のバブルになるだろう。REITをバブルへと導く要素を纏めると次のようになる。

  • 増資による一株当たり配当および純資産の上昇
  • 低金利による不動産価格の高騰
  • 低金利を利用した高レバレッジによる高配当
  • 量的緩和によるREITそのものの買い入れ

しかしながら、これらの要素は、下げ相場においてはそのままREITを暴落させる要因となる。以下に説明しよう。

金融引き締めにおける暴落シナリオ

中央銀行が利上げに動くときには、金利上昇により借り入れコストが増加し、無謀な借り入れをしていたREITは破綻に追い込まれ、そうでなくともレバレッジを減らす必要に迫られる。レバレッジを減らせば利益は減ることになる。

中央銀行が早まった利上げをしているときには、住宅ローン金利の高騰により不動産価格が下落してゆくだろう。場合によっては、量的緩和でREITを買い入れた中央銀行はREITを売却することも考えられ、大規模な売りは当然暴落を助長する。

このような下落相場においては、増資による一株当たり純資産と配当の増加を当てにし、喜んでプレミアムを払っていた投資家は、はしごを外されたと感じるだろう。彼らが割高でREITを買っていた理由はもはや正当化されなくなり、彼らはREITを売りに走らざるを得なくなる。バブルの崩壊である。

いつ空売りすべきか?

纏めると、バブルが崩壊するのは以下の要因による。

  • 高金利によるレバレッジの低下、ひいては利益減
  • 高金利による不動産価格の下落
  • 中央銀行によるREIT売却
  • 増資をあてにしたプレミアムの圧縮

したがって、投資家がバブルを空売りしようと思えば、これらの要素を占ってゆくことになる。様々なシナリオが考えられる。

中央銀行が慎重に利上げをしているときには、金利が上がっても不動産価格が下落しないことがある。しかしながら、金利が上がるのであれば、財政の危ういREITはレバレッジを下げざるを得ない。その株価が高レバレッジによる高利益に依存していたのであれば、その株価は下がらざるを得ず、したがって空売りは個別銘柄の分析によって行うことになる。

中央銀行が不動産価格を犠牲にしてでも利上げをしようとしているときには、REIT全体を空売りすることができるだろう。この場合にはREITや不動産市場のファンダメンタルズというよりも、中央銀行の先行きを占う手腕が必要になる。

バブルの加熱はどう見極めるか?

REITバブルの加熱を見極めるためには、様々な指標を参照することができる。不動産価格や空室率などの不動産市場に関する数値や、レバレッジ比率、利回りなどREIT自身の数値を見ることになる。

利回りは社債や国債などほかの投資対象と比べることになるが、利回りの単純比較ではなく、レバレッジやキャピタルゲインなどリスクと利益を総合的に見て判断する。利回りは増資によって底上げされうることに留意する。

空売りのタイミングというものは、機関投資家にとっても難しいものである。明らかに割高であると判断したものが更に高騰してゆくことなど日常茶飯事であり、著名投資家でも踏み上げられることがあるものである。空売りのタイミングなど空売りそのものに関することは、次の記事を参考にしてほしい。