ジム・ロジャーズ氏が中国経済とコモディティ市場の暴落を語る: 金、原油、中国株

米国の利上げが近づくにつれて、金や原油などコモディティ市場が暴落している。債券投資家のビル・グロス氏などは商品価格の下落に長期的なデフレ圧力を見、また、ここの記事でも商品市場暴落の意味するものを説明してきた。

しかし、フォーブスによるインタビュー(英語)によれば、ジム・ロジャーズ氏はコモディティ市場の超長期的な上昇サイクルは終わっておらず、現在の下げ相場は一時的な調整だと見ている。また、ロジャーズ氏は中国株を保有していることでも知られており、記者からは中国株の上昇とコモディティ価格の上昇が両立するのかという疑問が投げられた。彼はこう答えている。

株価と商品価格がともに上昇するのは、確かに歴史的にはあまり起こったことがない状況だ。通常、商品価格が上がれば株価は下がることが多いし、その逆も成り立つ。(中略)普通なら、商品価格が低くければ企業は利益率を伸ばすことができるし、商品価格が高ければ企業は利益を上げるのが難しい。

この観点は現在の市場に対する問題提起でもある。コモディティ市場が暴落しているにもかかわらず、株価が下がっている。流動性が下がるときにはどのような株でも下落しうるが、しかし例えば原油価格の恩恵を受ける航空株などは、他の株より下落幅が少なくなるべきである。暴落のなかではこの辺りに裁定の機会がある。

話を中国経済に戻そう。彼の中国株とコモディティ市場に対する強気は両立しうるのか? 彼の見解はこうである。

だが、中国経済が成長し、需要が伸び、新たな経済圏を作ってゆくとすればどうか? 通常とは異なる状況となるだろうか? 確かなことは何も言えないが、わたしはいくつかの国の経済について他の国の経済よりも強気だし、かつコモディティ市場についても長期的には楽観視している。

彼は実際に中国に足を運び、中国の人々と会話をし、生の情報を得ているので、中国に関してはデータの上で議論するわたしが口を挟むのは心もとないが、しかし問題は中国経済が成長していないのではないかという懸念である。

中国のGDPは公式には7%成長だが、これは完全な作り話である。多くのアナリストは3-5%を予想しているが、何人かはマイナス成長の可能性を指摘している。わたしもマイナス成長の可能性に同意する。

これについては金価格について書いた以下の記事で7月に指摘しているが、中国の電力発電量や貨物輸送量などの比較的信頼できるデータが軒並みマイナス成長になっているからである。

中国に関してもう一つ懸念されているのが膨大な外貨準備である。固定相場制を維持するにはコストがかかる。中国元の売り介入を行うためには、ドルを大量に買わなければならないからである。そのため中国の外貨準備には大量の米国債が積み重なっており、米国の利上げで債券が下落すれば、これがリスクになる可能性がある。

わたしはずっと、中国は膨大な外貨準備を積み上げる代わりに原油や銅などのコモディティを積み上げれば良いとアドバイスしている。米ドルや米国債を積み上げて、いつの日か売り払いたいと思うよりは、いつの日か必要になる綿などの在庫を積み上げるほうがいいだろう。

また、原油については米国とサウジアラビアの利害の一致により価格の人為的な下落が成功しているとしながらも、原油の上昇に賭けるならばロシアの資産を買うのがよいとしている。

原油価格が上がると思うなら、ロシアを買うのが良い手段だ。ロシアの通貨も市場も原油価格の暴落で過度に売られている。ロシアには豊富な天然資源と金融資源があり、米国や他の国のような債務超過の国ではない。ロシアは売りよりも買いだと思う。

原油の買いが良いかどうかは別として、航空株など原油安に恩恵を受けるポジションが多い投資家は、ヘッジとしてロシア株を持っておくのは個人的にも良い手段だと思う。ロシア株には非常に魅力的な水準の銘柄がある。しかし問題はロシア・ルーブルである。

ルーブルの政策金利はいまだ11%であり、ロシア株を為替ヘッジ付きで買う場合、ルーブルの空売りのために投資家が払う金利は、当然政策金利以上となる。しかし為替ヘッジを外せば、ルーブルの下落リスクを背負うことになる。

ロシア株はこういう意味でも投資家に敬遠されているが、非常に割安であることは確かであり、為替の問題が解決されれば外国人投資家の買いが集まるだろう。

インタビューの最後は連想ゲームで締めくくられている。記者がキーワードを挙げ、ロジャーズ氏がその単語についてコメントをするのである。この記事もその連想ゲームの引用で締めくくろうと思う。

記者:「量的緩和」

ロジャーズ氏:終わらせるべきだ。

記者:「米国」

ロジャーズ氏:落ち目だ。

記者:「ジョージ・ソロス」

ロジャーズ氏:何も知らないよ。わたしの最初の妻についても聞きたいかい?

記者:「ビクター・ニーダーホッファー」

ロジャーズ氏:彼は今何処にいるんだ? 興味はあるね。

記者:「シンガポール」

ロジャーズ氏:将来が期待できる。

記者:「中国元」

ロジャーズ氏:保有すべきだ。

記者:「金」

ロジャーズ氏:保有すべきだ。金はポートフォリオの保険として誰もが一定量保有すべきだと思う。

記者:今何か本は書いている?

ロジャーズ氏:いいや、書いていない。もう書かないんじゃないかな。

記者:ありがとう。興味深い話が聞けたよ。