12月米国利上げはどうなる?: 利上げなら最終的にはドル安の可能性

Fed(連邦準備制度)が年内の利上げを主張し始めてから何ヶ月も経過し、2015年のFOMC会合は残すところ12月の1回のみとなった。

8月から始まった世界同時株安も10月には元の水準まで回復し、その後の投資戦略が求められる頃合いであるが、そのためには先ず米国の利上げがどうなるかを話さなければならないだろう。

12月米国利上げはあるのか?

12月の利上げがあるかどうかは微妙となってきたが、いずれにせよ前提として考えておくべき要素は以下の3つである。

  • 0.25%の利上げは実体経済にはほとんど影響がない
  • 1度目の利上げの後、2度目は当分ない
  • 利上げにかかわらず、米国経済は減速する

1つ目は、実体経済と金融市場を分けて考える必要があるということである。0.25%の利上げが米国GDPの大きな重しになるとか、そういうことはない。一方で金融市場がどう反応するかはやや未知数ではあるが、8月から10月にかけて大騒ぎしたことで、ある程度織り込んだとするのが妥当ではないか。

これは金融引き締めが問題ないということではなく、市場が市場を過信するようになったということだが、それが現れるのはまだ先かと思われる。

減速する米国経済

一番の問題はこれである。先日2015年6-9月の米国の実質GDP速報値が発表されたが、前年同期比2.03%と辛うじて2%を上回る数字であった。

内容についてもドル高とコモディティ安の両方が影響を及ぼしている数字となり、日本とユーロ圏の量的緩和が今後も続けば、これまで底堅かった米国の経済成長も、通貨安競争により遂に他国に吸収されてゆくことになりそうである。

12月に一度利上げが行われれば、二度目は当分ないと考えるのはそのためである。利上げも0.5%、0.75%と上がれば実体経済に徐々に効いてくる。利上げがなくとも減速している米国経済に、急激な利上げは致命傷となるだろう。

Fedはどう考えているのか

これはイエレン議長には厳しい状況だろう。以前述べたように、Fedが利上げをしたいというのは変わっていない。米国は日本とユーロ圏が量的緩和で世界的な低金利を保っている間に、量的緩和バブルからいち早く離脱したいのである。

しかしながら、頼みの綱のGDPが減速してしまっては、利上げをしたくとも出来ない状況となる。景気の減速が確定的となる可能性のある最初の機会は、2016年初頭に発表される2015年9-12月期のGDP速報値であり、そうなってしまえばもう利上げはできない。

したがって、12月の利上げがどうなろうとも、景気減速が確かな傾向であれば、2016年前半にもう一度利上げを行うのは非常に難しくなることになる。もし利上げをした後に景気減速が明らかになれば、利上げを撤回し利下げに走らなくならなければなる可能性があり、この場合ドル高トレンドの巻き戻しは、単に利上げをしない場合よりも急激なものとなるだろう。

したがって、12月に利上げが行われ、ドル円が上がり、金価格が下落したとしても、そのトレンドは長続きしない可能性がある。イエレン議長としては利上げ後の利下げへの転換は一番避けたいところではないかと思うが、年内利上げを主張し続けてきたこともあり、市場を浮かれさせずに利上げを撤回できるかが腕の見せ所となる。

結論

投資家にとってはまたも難しい場面である。8月には利上げに対する市場の反応を読まなければならなかったのが、それが終わったかと思えば今度は米国経済が本当に減速するかどうかを読まなければならなくなった。

傾向が確定するのは9-12月期のGDPだが、月次で発表されるそれより前の米国の経済指標にも注目しながら、減速トレンドがどうなってゆくかを確かめてゆきたい。