2016年アメリカ利上げで米国REITはどうなるか?

2015年12月に一度目の利上げを行って以来、Fed(連邦準備制度)は金利正常化を継続しようとしている。多くのファンドマネージャーらが金融緩和への逆戻りを予想しているが、それでも2016年内に一度か二度の利上げは可能性があると見るべきだろう。

利上げをしたとしてもいずれは利下げに逆戻りすることになるのだが、しかしそれでも一時的な金融引き締めは想定しておくべきである。現在、金利先物市場では年内に一度の利上げ織り込んでいるから、利上げが二度行われればそれはサプライズとなり、ドルは強含み、長期金利は上昇する可能性がある。

ドルが一時的に上昇した場合には、日本の輸出株に有利であるため日経平均が反発する可能性があり、そうなれば絶好の売り場になるだろうと以前に書いた。

しかしFedが利上げを強行した場合に考えるべき投資対象がもう一つある。アメリカのREIT(不動産投資信託)である。今回は選択肢を広げる意味でも、不動産市場について検討してみたいと思う。

利上げと不動産

利上げをすれば、ドル以前に先ず長期金利が上がる。ドルが上がるのは金利が上がるからである。

金利が上がるということは、貸し手が多くの利子を得られるのと同時に、借り手にとっては負担が大きくなるということである。長期金利が上がれば住宅ローン金利も上昇し、不動産の購入を検討している消費者は、資金を借りて住宅を購入することが難しくなる。

逆に言えば、アメリカ経済の減速によっていずれFedが利上げから金融緩和に逆戻りする時には、不動産市場は住宅ローン金利低下の恩恵を受けることになる。だから利上げでアメリカのREITが一時的に下落すれば、それは買い場になる可能性があるということである。

米国REIT個別銘柄

詳細な検討に入る前に、個別銘柄の推移を見てみたい。現時点ではわたしはREITに投資していないから、銘柄については債券投資家ビル・グロス氏がバロンズ誌のインタビューで推奨していた銘柄を紹介しておこう。

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グロス氏が推奨していたのはニューヨーク証券取引所に上場するAnnaly Capital Management (NYSE:NLY; Google Finance)である。現在の株価で利回りは10%を超えている。

米国のREITは不動産に直接投資するものだけではなく、MBS(モーゲージ担保証券)に投資するモーゲージREITと呼ばれるREITがある。この銘柄も資産の多くをそうした資産に投資するREITである。

モーゲージとは住宅ローンの債権のことであるので、その場合、住宅ローン金利の低下による不動産価格の上昇に賭けるというよりは、住宅ローン金利の低下そのものに賭けることになる。

株価の推移を見てみると、2016年1月に底打ちしているという点ではやはり金価格の推移に近い。どちらも市場の利上げ観測の変化に反応しているのである。

米国REITは買いか?

では、Fedが利上げを強行し、株価が一時的に下落したとすれば、その時に米国REITは買いだろうか? Fedが金融緩和への逆戻りすることに賭けるという意味では、金の買いと重複しているのであり、金投資との比較が必要となる。

金投資に比べた米国REITには、長所も短所もある。先ず明らかな長所は配当があるということである。長期金利がマイナスの国もあるような現状では、10%を超える利回りは魅力である。当然ながら金には金利が一切付かない。

もう一つの長所は、REITには高いレバレッジを利かせたものがあるということである。レバレッジとはつまりは借り入れのことであり、借りる側が得をするのがマイナス金利あるいはゼロ金利の世界である。

金利が上がる状況下では、REITのなかでもレバレッジを利かせた銘柄は暴落する傾向がある一方で、低金利下ではとりわけ優れたパフォーマンスを発揮する。マイナス金利の世界ではレバレッジを利かせよというのが、債券王グロス氏の助言でもあった。

一方で、短所は実体経済の減速に影響を受けるということである。実需が限られ、金融需要で価格が決まりやすい金に比べ、不動産価格は住宅需要が落ち込めば下落することになる。アメリカ経済が減速するからFedは利上げを止める、という理屈で投資をするのであれば、需要減による悪影響を受ける資産クラスに賭けるのは一種の自己矛盾ということになってしまう。

総合的に考えれば、以上の長所と短所は良し悪しであると思う。個人的には不確定要素の多いREITよりは金投資の方を好む。金相場に影響するマクロ的な要素は非常にはっきりしており、Fedが緩和に逆戻りするというシナリオが正しい限り、金相場にネガティブな要素ははっきり言ってほとんど見受けられない。

とはいえ、様々な選択肢を持っておくことは良いことだろう。Fedが利上げを強行した場合の投資戦略としては、金の買い、米国REITの買いの他にも日経平均の空売りという選択肢も提示しておいた。

その時のそれぞれの資産の価格によっても決めたいと思う。今のところは金を保有したままFedの次の手を待つのみである。