メルケル首相がブルカ禁止を主張、際立つドイツ人の異文化無理解

2017年のドイツ総選挙で再選を目指すアンゲラ・メルケル首相が、イスラム教徒の女性が被るブルカはドイツにおいて禁止されるべきだとの見解を述べた。Telegraph(原文英語)などが伝えている。

ヨーロッパ移民問題

周知の通り、メルケル首相はヨーロッパにおける移民政策を主導してきた張本人である。移民政策を望んだドイツ人がメルケル氏を選出し、メルケル氏がEUという植民地制度を利用してその政策をヨーロッパ全体に押し付けたのである。

その結果はどうなったか? 移民による殺人と性的暴行である。以下はヨーロッパの移民問題を取り上げた記事だが、こうしたものはもはや逐一取り上げてはいられない数に達している。

ドイツ以外のヨーロッパで人々と会話すれば、ドイツへの恨み言を頻繁に耳にする。不満の質と量には国によって差があるが、例えばイタリアはユーロ圏離脱寸前である。

メルケル氏の選挙戦略

結果、メルケル首相は2017年9月の総選挙での再選が危ぶまれている。だから方向転換を図ったらしい。メルケル氏は党大会での演説のなかで以下のように主張した。

法的に可能である場所では何処でも、顔を完全に覆うヴェールは禁止されなければなりません。顔を見せることはわたしたちの生活の一部です。

法律は儀礼や部族間の決まり事、シャリーア(イスラム法)より優先されます。

こうした主張はヨーロッパでは新しいものではない。確かスイスでは女性教員との握手を拒否したイスラム教徒の男子生徒が、握手を拒否すれば罰金を課されると脅されたのであった(Newsweek)。西洋人は本当に自分の考えを他人に押し付けることが大好きである。

愚かな移民政策

しかし問題の本質はもっと根深いところにある。ブルカの禁止はヨーロッパの移民問題を悪化させるからである。ヨーロッパでは連日大量殺人や性的暴行が行われているが、こうした過激な行動に出る移民の心理を考えてみれば、ブルカ禁止が持つ意味を理解出来るだろう。

ヨーロッパでは、元々ヨーロッパ人の殺傷を目的として入国したテロリストだけではなく、その他の中東移民までもが上記の犯罪に手を染めている。その原因は、経済的安定を求めてドイツに移住した移民たちが、その期待とは反対に、ヨーロッパにおいて貧困と孤独に直面しているからである。何度も言うが、彼らの大半は難民ではなく出稼ぎの経済移民である。しかしドイツ人にとっては彼らが難民かどうかなど関係がなかったのである。

貧困に直面し、生活が困窮した移民たちは自暴自棄になり、過激な行動に出る傾向がある。周囲が自分の国の文化と全く異なる人々であれば尚更である。彼らは自分たちが理解されていないと感じ、物理的にも困窮した結果、大量殺人などの行動に出る。日本人であれば生活が困窮しても自爆テロなど行わないだろうが、そこは文化の違いである。

偽善的な移民賛成派たちが考慮していないのは、先ず第一に元々失業率の高いユーロ圏に移民を受け入れたところで、彼らが食べてゆけるはずもなく、単に失業者が増加するだけだということである。そしてより重要なのは、言葉も文化も全く異なる土地で生計を立てることは絶対に容易ではないということである。

しかしそうした現実は、「難民に親切な主張をする優しい自分」が大好きな移民賛成派の人々には一切関係がなかった。彼らにとって移民などどうでも良かった。重要なのは彼ら自身の感情や主義主張なのである。

結果、中東移民たちは貧困と文化的疎外感に直面した。言葉も分からず、友人知人も居ない見知らぬ国で貧困に直面し、明日の食料もままならない状況に陥った絶望は、恵まれた日本人には想像しがたいだろう。

こうした状況でブルカの禁止を行えばどうなるか、読者にも容易に分かるだろう。火に油を注ぐだけである。自分が文化的に完全に疎外されたことを理解した中東移民たちは、より過激な考えに傾倒してゆく。移民による犯罪はより増加するだろう。

一方でブルカ禁止のメリットなど何もないのである。メルケル氏のようなリベラルの方々は問題に蓋をして見えないようにするのが好きだが、限界まで煮込まれている鍋に蓋をすれば加熱は加速する。問題は一時的に見えなくなるかもしれないが、その分確実に悪化するのである。

メルケル氏が主張するインターネット規制も同様の偽善である。問題は確実に悪化するだろう。今度はトランプ氏の台頭程度では済まなくなる。

正反対のイギリス

こうしたドイツの対応と好対照なのがイギリスの移民政策である。イギリスはEUを離脱し移民そのものを減らす選択をした。しかし一方で、ヨーロッパ諸国の基準で言えば、既に受け入れた移民に対してイギリスは比較的寛容である。ロンドン市長にイスラム系のサディク・カーン氏が選ばれたことなどは象徴的だろう。移民を文化的に抑圧すれば自分に刃が返ってくると理解しているからである。

だからイギリスは移民を極力減らそうとするが、受け入れてしまった以上は彼らを抑圧することはしない。好むか好まざるかにかかわらず、一度移民を受け入れてしまえば、その他に道は無いからである。

そして最も愚かな方策はその真逆、つまり移民を増やして文化的に抑圧することである。これがドイツのやり方であり、自分でテロリスト予備軍を招待してテロリストとして育成するようなものである。この愚かさが彼らには本当に分からないのだろうか?

結論

問題は結局のところ、ドイツ人がこうした異文化交流というものを一切理解していないところにある。ドイツ人は他国について何も知らない。いわゆる知的階級のドイツ人であったとしても、中国と日本の違いさえ禄に理解していないことはざらである。

だから中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を呼びかけた時にも、ヨーロッパ諸国が躊躇している最中にイギリスは先んじて手を挙げて中国に恩を売ったが資金そのものはほとんど出さず、ドイツは遅れてやって来て多額の資金を供出したのである。ドイツの外交音痴はプロイセンの頃から一切変わっていない。

ロンドンの社交界では10年以上前から中国に関する文化セミナーなどが頻繁に行われていた。イギリス人はそれほど以前から中国の台頭を見越して中国を文化的にも理解しようと努めていた。中国と日本の違いも分からないドイツ人とは外交のレベルが違うのである。