海外勢の目線から見る2014年の日本株

日経平均は2013年末に16,000円台の高値を記録したのち急落し、その後は移動平均線を下向かせながら14,000円台を推移している。この現状とその後の展開を考察するためには、この相場が海外の機関投資家に先導されて上昇したものであることを思い出す必要がある。

まず、日本の安部首相が金融緩和に言及する以前、海外勢による日本株の評価は著しく低いものであった。少子高齢化の人口構造、米国や欧州に比べて低いROE、人材の国際化に対する言語の壁など、様々な要因により海外からの買い手が少なかった日本市場に、グローバル・マクロ戦略のヘッジファンドを呼び込んだ金融政策が日銀の量的緩和である。マネタリーベースの急激な増加は、ほかの要因にかかわらず資産価値の上昇をもたらすからである。

株価上昇の中心は輸出株と不動産株であった。しかし現状の日米マネタリーベース比率を考えれば1ドル100〜105円は妥当であり、貿易赤字は巨額であるものの、短期筋が積極的に買い向かうほどの水準ではない。したがって追加緩和のない限り、輸出株に急激な買い戻しが入ることは想像しがたい。

また、不動産株も相当の水準まで買われており、これは日本市場の歴史においてはしばしば起こりえた水準であるが、しかし米国や欧州の市場において純資産の数倍の時価総額はかなり異常であり、たとえば不動産市場のかなり加熱しているロンドンでも、不動産企業の株価はファンダメンタルズで充分に説明のつく水準に留まっている。普段米国や欧州の株式市場を見ている海外勢にとって、ほとんどの不動産株はいまだ買いやすい水準ではないのである。

量的緩和の効果による株価上昇が止まった今、海外勢にとっての日本市場は、量的緩和前の日本市場の姿に戻っている。15兆円も買い越した海外勢にとって、居心地の悪いロングポジションの多いことだろう。

これらの状況に加え、投資家は消費増税の影響を考える必要がある。消費増税の上昇分3%は売上高に影響するのであり、したがって利益への影響はそれ以上に大きい。増税分の減益を考慮して計算すれば、多くの企業のP/Eは妥当であり、一般に言われるほどに安い水準ではない。また、増税はグローバル・マクロ戦略のヘッジファンドにとって売り要因であることも考える必要がある。

追加緩和がありうるかどうかは今後の経済指標次第であり、予測の域を出ない。この状況下で日銀によって保証されていることは、物価の上昇である。これは不動産価格の上昇を含む。したがって現状買い迎える銘柄の一つは、充分に割安な不動産株であろう。割高な不動産株は、はっきりとした経済指標の回復がなければさらなる下落もありうるが、例えば量的緩和の状況下で平和不動産 (TSE:8803)のような銘柄のP/Bが0.6以下となることはかなり考えづらい。底が見えていれば、どの水準でどの程度のポジションを取っているべきであるのかが決められるのである。また、地価の上昇は関西圏などでも見られるにもかかわらず、現状では東京の不動産のみをポートフォリオに含む銘柄のみが積極的に買われていることも考慮したい。

また、不動産銘柄のほかにも増税や量的緩和に比較的関係の薄い個別材料銘柄も安ければ買いである。防衛産業の輸出規制緩和などに関連した銘柄にも、買い迎える水準のものが存在する。様々な要因の交錯する中、状況を整理してポジションを決定する必要があろう。