FOMCは「相当な期間」を削除、6月の利上げを示唆

1月28日のFOMC金融政策決定会合の後、Fed(連邦準備制度)は声明(原文英語)を発表し、ゼロ金利政策を「相当な期間(for a considerable time)」維持するとの文言を削除し、金融政策の正常化まで「辛抱強く(patient)」いるとの表現を残した。

「辛抱強い」という表現は「次回と次々回の会合での利上げは考えていない」ことを示す言い回しであるため、3月と4月の会合では利上げせず、6月の会合での利上げを示唆した形となる。これを受けて米国債は上昇(利回り低下)、米国株は下落、ドルは円に対して下がり、ユーロに対して上昇した。これらをどう考えるかである。

先ず、為替相場の動きはあまり意味がない。ドルは円とユーロに対して逆方向に動いたが、ドル円はその後、ユーロドルに合わせるように持ち直している。

上記の記事で書いたように、ユーロドルは2016年9月までの量的緩和を織り込むように動いてきたのだから、今回も同様に半年後の利上げを先に織り込もうとしたのだろう。日本市場はいつも通り織り込みが遅い。総合的に見て、FOMCに対する反応というよりは、各市場の性格を反映したという感触である。

さて、問題は上昇した米国債と下落した米国株である。株式投資家は明らかに米国株の割高を意識しており、しかも量的緩和の下支えがないことを恐れている。前回の記事に書いた通りである。

しかしながら、この記事に書いたポートフォリオ・リバランスの逆流(株式から債券への資金の逆戻り)は利上げの後、もしくは日欧の緩和終了後である可能性が高く、株式市場は6月まで利上げを恐れた動きを続けるだろうが、予想が正しければ、利上げ前の株式市場の下落は一時的なものとなるはずである。

上記の記事で書いたように、米国株のポジションに正しいヘッジを入れている投資家にとっては、下落が一時的であろうとなかろうとあまり関係がないのだが、下落が一時的なもので終わった場合、株式市場は利上げを乗り越えたと考え、本当の資金の逆流がまだ始まっていないにもかかわらず、史上最高値を更新してゆく可能性がある。これは資金の逆流が延期されるシナリオであり、最終的な下落がもっとも大きくなるバブル崩壊のパターンである。

FOMC後の米国債の動きは、このシナリオを支持するものと言える。国債は利上げの影響を直接受けるにも拘わらず、株式市場より強い動きを見せたということは、利上げよりもユーロ圏の低金利政策に連動することを取ったということである。これは、利上げ後も米国債がそれほど下落せず、世界的な低金利が日欧の緩和終了後まで続く可能性を示唆している。この場合、債券から株式への資金の逆流もその時点まで延期されることになる。

1つ注意しなければならないのは、米国の経済がどれだけドル高に耐えられるかということである。P&G(NYSE:PG、Google Finance)は27日、ドル高のため業績見通しを下方修正した。現在のところはFedも米政府もドル高を懸念する考えは示していないが、彼らがそれを懸念し始めた場合、株と為替に大きな影響が及ぶことになるため、その可能性は念頭に置いておきたい。今後もFedの動きは注視してゆく。