1月FOMC会合結果、声明文は明確にタカ派、3月にリスクあり

1月30日から31日、アメリカの中央銀行に相当するFed(連邦準備制度)はFOMC会合を開き、政策金利を維持することを決定した。金利維持は市場の予想通りだが、これでFedの主張する2018年に4回の利上げを達成するためには3月の会合での利上げがほぼ必要となる形になった。

FOMC声明文

いつもの通り会合後に発表された声明文を見てゆきたいが、経済とインフレに関する部分は明確にタカ派であり、アメリカの実体経済に強気の内容となっている。先ずは以下のように、実際に好調な最近の経済指標の動向をはっきりと肯定する一文が加えられた。

雇用、家計消費、企業の固定投資における成長は力強く、失業率は低く保たれている。

また、中央銀行が目標とするのは経済成長ではなくインフレ率の安定だが、そのインフレ率についても前回より強気の文章となっている。

インフレ率とコアインフレ率(食品とエネルギーを除く)は引き続き2%を下回っている一方、市場の予想するインフレ率は低いもののここ数ヶ月で上昇している。

市場の期待インフレ率の上昇に言及する記述は、前回の声明文には無かったものである。こうした記述は以下の記事で述べた筆者の分析とも合致している。

因みに今後の利上げに関する意思表示は無かった。今回は議長の記者会見がない会合で、ドットプロットなどの参考資料の添付もないため、Fedの意思表示としてはアメリカ経済の強気の見通しを提示することで、これまで主張してきた年内4回の利上げを金融市場に再確認したいというところだろう。

実際に、会合を受けて金利先物市場では2018年に4回の利上げがある確率が上昇する結果となった。市場の織り込む年内の利上げ回数の確率は以下のようになっている。

  • 利上げ1回: 7.8%
  • 利上げ2回: 25.9%
  • 利上げ3回: 36.7%
  • 利上げ4回: 22.4%
  • 利上げ5回: 5.7%

次回のFOMC会合からはイエレン議長ではなくパウエル次期議長の率いる会合となるため、イエレン議長としてもパウエル氏が利上げを行いやすいように地ならしをした形となる。

3月の利上げはあるか?

次回3月の会合について少し触れておこう。パウエル次期議長の最初の会合となるが、パウエル氏については以前よりリスク要因を指摘してある。つまり、学者としても有名なイエレン議長への敬意から自分の主張を押さえ込んでいたFed内のハト派が、マクロ経済学の理解が弱いパウエル氏のもとではハト派的な主張を全面に押し出し、利上げが滞るのではないかというリスクである。

事実、前回12月会合ではシカゴ連銀総裁エヴァンズ氏やミネアポリス連銀総裁カシュカリ氏の両名が利上げに反対しており、イエレン議長の退任後彼らに追随するメンバーが出てくる可能性が大いにある。

ただ、このリスクも3月の利上げには問題とはならないだろう。多くのメンバーは少なくとも数回の利上げを想定しており、1回目の利上げさえ行われないようなことはないと思われる。

但し、利上げに反対するメンバーの数が増えるなど、Fed内の分裂が表面化するリスクはあり、その場合にはドル安方向で反応する可能性がある。この辺りのリスクについては以下の記事で詳しく書いてあるので、参考にしてもらいたい。