米国株急落を考える: 買い下がるべき銘柄、金への資本逃避など

3月の末となったが、米国株が急落している。25日の株式市場でNasdaqは2%以上の下げ幅となり、S&P 500の-1.46%を上回った。26日には日本の株式市場にも波及し、日経平均は1.39%の下落、弱気相場はヨーロッパ市場にも持ち越され、特にこれまで堅調だったドイツ株の下げ幅が大きい。

2015年の金融市場についてはこれまで書いてきた通りであり、大局的な見方に一切変更はないが、為替や商品先物の動きなど、今回の急落で気になる点についていくつか書いておきたい。

ユーロ安、円安は一旦巻き戻し

先ずは為替相場であるが、株式市場の下落からリスクオフが波及、これまで活発だったユーロ売りや円売りのポジションが巻き戻されている。しかし、これはドル高の巻き戻しという感じではなくポジション調整であり、その証拠に投機筋の関与が比較的薄いポンドドルの反発幅は限られている。

ポンドについてはリスク分散の観点から部分的な保有を薦めてきたが、要するに、円やユーロの空売りにも、またそのポジションの逆流にも出来る限り関わらないことである。ファンダメンタルズ的には円はもう少し上昇余地があるが、需給が荒れる2015年以降の市場では、ファンダメンタルズで投資をできると思わないほうが良い。

金と原油が反発

また、今回の急落で一番重要な動きは金と原油の反発である。これは恐らく単なる空売りポジションの巻き戻しではなく、Fed(連邦準備制度)がドル高を懸念したことにより、世界的な通貨安競争への懸念が生じ、どの通貨も買えないと判断した投資家が資金をコモディティ市場に逃避させているのである。

とりわけ多くのヘッジファンドは、ドルを持ちたくないにもかかわらずドルを持たざるを得ない状況に置かれている。ドル高がアメリカ経済を圧迫していることには気付いているが、量的緩和のある円やユーロを保有するわけにもいかず、また利上げが想定される状況では金利の付かない金は買いにくい。しかし今回の金価格の上昇は、一部の投資家がドルから金に資金を移し始めたと考えて良い。

利上げが近づくにつれ、金が再び下落にさらされる可能性はある。個人的には金価格が1,000ドルに近づかない限り買いたくはなかったのだが、それでもある程度の量はポートフォリオに組み込んだほうが良いかもしれないと思い始めている。

米国株個別銘柄

米国株で買い下がりが出来そうなのは半導体業界である。

上記の記事で紹介した銘柄のうち、Lincoln National (NYSE:LNC、Google Finance)はS&P 500に比べて好調だが、Micron (NASDAQ:MU、Google Finance)は弱気トレンドから抜けておらず、25日の終値で予想P/E(株価収益率)はついに7.61まで落ちてきている。P/Eは実績値で見ても8.62であり、この水準はほとんどバーゲンと言っていいが、唯一の懸念は4月2日の決算である。上記の割安な数値を一気にひっくり返すほどの懸念はないはずだが、決算では基本的には何でも起こりうると考えるべきであり、そのリスクを考えた規模のポジションを取って行きたい。個人的には買い増している。

半導体業界はいまだ高いポテンシャルを有している。ハードディスクはほとんどすべてSSDで置き換えられるだろう。モバイルインターネットの普及によりユーザはますますクラウド上にデータを置くようになり、そしてそのクラウドを支えるAmazon EC2などのサービスではSSDが主流となってきている。

また、CPUの速度が物理的限界に達している現在では、ハードディスクをSSDに変えてしまうのがユーザの体感速度を上げるためのほとんど唯一の方法であり、AppleのMacBook AirなどはSSDのみでの提供となっている。将来的にはほかのメーカも追従することになるだろう。今回の決算がどうであれ、財務状況が著しく懸念されるような内容が出ない限り、Micronの長期的ポテンシャルは変わらない。

日本株は電力小売りの自由化関連を買い下がり

2016年4月より一般家庭等への電力供給が自由化され、電力会社が独占してきた市場がほかの企業にも開放されることになる。いまの日本株で買い下がるべき銘柄といえば、恐らくこの辺りになるのではないか。詳細は上記の記事を参照してほしい。

イーレックス (TYO:9517、Google Finance)はもう少しで買える水準である。2014年10月−12月にシンジケート・ローンのための費用を計上したことを差し引けば、来年3月までの1株あたり純利益は80前後は堅いと考えてよく、その場合株価が800円でP/Eが10、960円でP/Eが12となり、この辺りの水準は2016年4月以降の家庭への販売開始を考慮すると割安となる。

ベータリスクのヘッジを忘れずに

どの市場に投資するにしても、株式指数の空売りでベータリスクをヘッジすることを忘れないでほしい。米国株が震源地となっている状況では、日本株に対してもS&P 500の空売りが効くのではないかと思うが、その辺りは各自の判断である。今回の下げはどの程度の下落幅になるだろうか? そして米国の利上げの後の株式市場はどうなるのか? この辺りについては、下記の記事を参考にしてほしい。