Form 13F: ソロス氏は米国株暴落を警戒、アインホーン氏も空売り拡大へ

2015年1QのForm 13Fが公開され、機関投資家の3月末における買いポジションが明らかになった。詳細は以下に見てゆくが、引き続き、米国株の暴落を警戒していることが読み取れる。

ソロス氏、アインホーン氏ともに米国株に弱気

先ず、ソロス氏のポートフォリオではS&P 500のプット・オプションが復活しており、11億ドルのポジションとなっている。2014年3Qでは22億ドル、4Qではポジション解消となっていた。

ソロス氏を含め、グローバルマクロの投資家がヘッジ売りをするときにはS&P 500先物の空売りを主に使うため、ソロス氏は、Form 13Fには現れない先物の売りと、上記のプットの買いを織り交ぜながら、臨機応変にポジションをヘッジしているものの、米国株暴落への警戒感そのものは引き続き変わっていないということだろう。

同様に、デイヴィッド・アインホーン氏のグリーンライト・キャピタルも米国株の買い持ちを減らしているようであり、3月末でロングが資産の102%、ショートが88%、したがってネットで14%のロングであることを投資家宛ての書簡で明らかにした。2014年3Qは39%のネットロング、4Qは30%のネットロングであったから、彼もやはり米国株の買い持ちを粛々と縮小していることになる。

米国株は暴落するのか?

米国株はどうなるだろうか? 暴落が起きるとすれば、それは株を売るより他に投資家の選択肢がなくなったときである。債券か株のどちらかが落ちるしかないということが、中央銀行の手詰まりによって示されるときである。

以前書いたように、ブラックマンデーではドルか米国株かのどちらかが下落せざるを得ない状況に陥り、為替ヘッジをしていなかった米国株の投資家が米国株を売らざるを得なくなった。

今回では、先ず中央銀行が量的緩和を辞めることができないことを悟ることが第一歩である。それは日本とユーロ圏の量的緩和が出口を検討する2016年が始まりとなり、今年中に米国の利上げで株式市場がどれだけ下落しようとも、それは本当の暴落ではないことも書いた。

いずれにせよ、このような相場には賭けないことであり、米国株に投資をする場合には空売りを組み合わせてロング・ショートとすべきである。ソロス氏もアインホーン氏も2014年からこの戦略を踏襲しており、優れた投資家の間では既定路線であると言える。

ソロス氏は主要ポジションのいくつかを手仕舞い

一方で彼らの個別株はどうなっているだろうか? 先ず、ソロス氏は最大ポジションの1つであったイスラエルの製薬会社Teva (NYSE:TEVA、Google Finance)をすべて手仕舞っている。2014年4Qでは2億8000万ドル近いポジションがあった。

Tevaは後発医薬品に強みがあり、高齢化で比較的安価な薬品の需要が増えるという目算と、積極的な買収政策によって株価が上昇していた。ソロス氏はTevaを2013年から保有しており、当時30ドル台後半であった株価は3月末で60ドルを超えている。

一方で、最大ポジションであるAlibaba (NYSE:BABA、Google Finance)は4億6000万ドルから3億7000万ドルに大幅に減額されている。Alibabaは1月末に発表した決算で売上高が振るわなかったことから下落していたが、ソロス氏が決算より前にポジションを減らしたのかどうかは不明である。その後5月に発表した決算で、株価は少し戻している。

その他では、アルゼンチンの石油会社YPF (NYSE:YPF、Google Finance)は3億2000万ドルでほぼ変わらずとなっている。

アインホーン氏はAppleを利益確定、Micronは買い増し

グリーンライト・キャピタルのアインホーン氏の個別株はどうだろうか? 先ず特筆すべきは最大ポジションのApple (NASDAQ:AAPL、Google Finance)をやや縮小したことだろうか。株価が上昇しているため金額ベースでは9億2500万ドルとほぼ変わっていないが、株数で言えば860万株から740万株へと14%ほど減少している。

一方で、次に金額の大きいMicron (NASDAQ:MU、Google Finance)は株価が下落しているため、株数ベースでは3100万株から3400万株へと買い増しているものの、金額ベースでは11億ドルから9億1000万ドルと減額している。

Micronは2013年3Qから始められたポジションであり、現在の株価26ドルに対して当時の株価が15ドル程度であるから、今年に入っての軟調は長期トレンドのなかの調整という見方なのだろう。アインホーン氏のForm 13Fを遡って見れば、高値では売り、安値では買いというように価格に寄ってポジションを微調整しており、長期的な買いという姿勢に変化は見られない。

投資家向けの書簡によれば、「DRAM(半導体メモリ)業界は来るべき周期的な需要減少に対し、シェアを奪い合うために供給を増やし、利益率を犠牲にしたりはせず、状況に合わせて合理的に利益率を上げてゆけるというのがわれわれの理論である」だそうである。

DRAMの過当競争はエルピーダの破綻により既にピークを迎えているが、市場はいまだこの事実を織り込もうとしている最中である。また、NANDやNORなどの不揮発性メモリ、特にSSDに使われるNANDには大きな将来性があるだろう。Micronについては以下の記事も参考にしてほしい。

アインホーン氏は2015年1Qを「イベントのない四半期」と表現しており、確かに市場はここのところ停滞している。グローバルマクロの投資家にとっては大きな利益の得にくい状況ではあるが、米国の利上げと日欧の量的緩和の出口戦略によってそれも遠からず打開されるだろう。

それでもいち早く利益の欲しい投資家は、例えばMicronが$26前後のときに、$27-$29前後の執行価格でプット・オプションの売りを行うという選択肢もある。どのような状況でもやりようはあるのである。

ちなみにわたしのポートフォリオについては、以前書いた記事を参考にしてほしい。その後ポンドを買い増してから利益確定したことと、Fraport (ZETRA:FRA、Google Finance)などの銘柄を、上昇するにつれ一部利益確定したこと以外はそれほど変わっていない。

確かに市場は停滞しているが、それも半年と続かないだろう。各国の中央銀行の動向に注目したい。