ドラッケンミラー氏: ビットコインは中央銀行の問題への解決策

引き続きThe Hustleによるスタンレー・ドラッケンミラー氏のインタビューを紹介する。今回のテーマはビットコインと暗号通貨である。

ドラッケンミラー氏、ビットコインについて語る

機関投資家としてはビットコインにいち早く注目し、ビットコイン相場について大胆な予想をし的中させているスコット・マイナード氏のような人物も居る中で、ドラッケンミラー氏は著名投資家の中で比較的出遅れていることを気にしていたらしい。彼は次のような言葉から始めている。

このテーマについては自分も成長したよ。

ドラッケンミラー氏はビットコインについて良く考えていなかった昔について振り返る。

5、6年前に自分がこう言ったことを覚えているかもしれない。「ビットコインは解決すべき問題をまだ見つけられていない問題解決手段だ。」

一体彼らは何を求めているのだ? 通貨なら既にあるじゃないか。それはドルと呼ばれている。

当時、ドラッケンミラー氏はそう思っていた。そしてビットコインが上昇してゆくのを眺めていた。「自分が馬鹿のように思えた」と彼は言う。そしてドラッケンミラー氏にとって転換点となったのはコロナだった。

解決すべき問題をまだ見つけられていない問題解決手段。そして問題は見つかった。CARES法(訳注:現金給付を含むトランプ政権のコロナ対策)が来て、パウエル議長が中央銀行の行動規範についてのすべてのレッドラインを越え始めた。

問題はジェイ・パウエルと世界の中央銀行家たちがおかしくなり、わたしが逃避先にゴールドを使っていた時代には既にいかがわしくなっていた法定通貨を更にいかがわしいものにしてしまったことだ。

アメリカの中央銀行は一線を超えてしまった。それでアメリカでは物価高騰が止まらなくなりつつある。

それで投資家は金融市場で取引できる金属や穀物、そして暗号通貨に資金を逃避させている。ドルの価値が下がるからである。それでドラッケンミラー氏は暗号通貨にようやく存在価値を与えたということである。

ドラッケンミラー氏には失礼だが、しかし法定通貨の問題は大昔から存在している。戦時中にケインズ氏と論戦を交えた天才経済学者ハイエク氏が既にその問題を指摘していた。しかし中央銀行という紙幣印刷装置は各国政府にとってあまりに都合の良いものだったので、まともな経済学は無視されただけの話である。

しかしこういうまともな話を理解しているのもここの読者くらいのものだろう。大半の国民は政治家の並べた出鱈目を信じている。

天才トレーダーの嗅覚

コロナにおける政府の行動がドラッケンミラー氏に暗号通貨の価値を納得させた。しかしそれだけではなかったようである。ここから先の話にはドラッケンミラー氏のトレーダーとしての嗅覚が表れている。彼はこう続ける。

2つ目は、ポール・ジョーンズ(ブラックマンデーを予想した著名投資家)から電話があって彼がこう言ったことだ。「知ってるか? ビットコインが17,000ドルから3,000ドルに落ちたとき、17,000ドルで保有していた人の86%は売らなかったんだ。」

これはわたしの心の中で大きな印象を与えた。供給は限られていて、保有者の86%は熱狂的な信奉者だ。一体誰が17,000ドルから3,000ドルまで下落したものを持ち続けるというんだ? その86%は誰も売らなかった。これに中央銀行の新たな狂気の話が加わってくる。

これを需要と供給に敏感なトレーダーのマインドで考えてみてほしい。需要と供給が価格を決定する。供給は限られている。そして保有者の大半は売らない。需要は増加している。価格は暴騰するしかない。

トレーダーなら誰もがこの感覚を分かるだろう。ドラッケンミラー氏は恐らく去年のコロナ発生直後にAmazon.comを買い漁った時と同じ感覚だったのかもしれない。

そしてビットコインは実際に指数関数的に上昇した。ドラッケンミラー氏はどうしたか? 彼は買ってみた。しかしその時に問題が生じた。

ビットコインが6,200ドルになったとき、1億ドル分(訳注:およそ110億円)買ってみようとした。2,000万ドル(訳注:およそ22億円)買うのに2週間掛かった。結局6,500ドルあたりで買えたと思う。

それでこう言った。「これは馬鹿げている。」

流動性が足りなかったのである。個人投資家には分かりにくいかもしれないが、機関投資家に買えるものは限られている。彼らの資金は莫大なので、例えば小型株のようなものは買えない。彼らの資金が小さい市場に注ぎ込まれるとそれだけで価格が暴騰してしまう。

だから市場規模の小さいものは買えない。「同じ金額をゴールドなら2秒で買えただろう」とドラッケンミラー氏は言う。当時、暗号通貨市場はやはり機関投資家には小さすぎた。

結論

だが購買意欲のある資金が大きすぎることは暗号通貨にとって問題だろうか。その問題は解決されている。ビットコインは当時の6,000ドルから更に上がっている。参考に色々なものの時価総額を挙げてみよう。

  • 金: 12兆ドル
  • 銀: 2兆ドル
  • ビットコイン: 6,769億ドル
  • Berkshire Hathaway: 6,621億ドル
  • Bank of America: 3,633億ドル
  • イーサリウム: 2,891億ドル
  • Coca Cola: 2,384億ドル

暗号通貨市場は少なくとも大型の米国個別株ぐらいのサイズまでには成長した。世界最大規模のヘッジファンドでも買えないことはないだろう。大きなポジションは取れないかもしれないが、ボラティリティが大きいことを考えればそれでも十分なはずである。

そしてこの問題は暗号通貨の市場規模が大きくなればなるほど解決される。暗号通貨市場について天才的な予想を当て続けているマイナード氏は、暗号通貨市場の市場規模がゴールドのそれに到達するという予想をしていた。

しかし一方でマイナード氏は短期的には調整局面が続くとしている。暗号通貨の相場見通しについては現状では彼の予想が一番役に立つだろう。

暗号通貨の長期的上昇トレンドはいつまで続くだろうか? それはインフレ懸念による金属や穀物などのコモディティバブルがいつまで続くかということと同じである。暗号通貨もコモディティだからである。以下の記事を参考にしてもらいたい。