債券王ビル・グロス氏が商品市場暴落と米国利上げを語る

債券投資家のビル・グロス氏がブルームバーグのインタビュー(英語)で、商品市場暴落の意味、米国の利上げとその後の金融市場について語っている。グロス氏は、世界経済に蔓延するデフレ圧力にもかかわらず、Fed(連邦準備制度)は利上げをしたがっていると指摘する。

デフレの気配がしており、CRB商品指数はもはやリーマン・ブラザーズが倒産したときよりも低くなっている。商品市場は世界経済の本当の姿を伝えてくれる。リアルタイムの需要と供給を反映しているからだ。

この論点は、奇しくもこのインタビューの一日前にここで公開した前回の記事とほとんど同じである。わたしのほうが早いので、真似をしたわけではないのだが、世界の市場を見ている投資家の考えることは皆同じということである。

事実、昨日の堅調な雇用統計を受け、9月乗り上げ観測が高まったにもかかわらず、ドルは下落し、長期国債は買われた。これは市場が9月の利上げを受け入れた上で、二度目の利上げはすぐには行われないと読んでいるということであり、これもこれまで書いてきた通りである。グロス氏は利上げについて以下のように述べている。

利上げはほぼ確実に9月だろう。市場には確実なことなど勿論ないが、ロックハート・アトランタ連銀総裁などの強いシグナルを考えればそういう結論になる。Fedはゼロ金利の弊害に気付いており、金利を正常化したいと考えている。

また、利上げ幅については以下の通りである。

利上げ幅については0.25%になるだろう。0.5%では市場を動揺させる。

利上げが進むにつれて市場がどう反応するかを聞かれた時には、以下のような冷静なコメントを返しているが、これは債券市場に限った話である。

債券市場は政策金利が2年で1.5%まで引き上げられることを織り込んでいる。したがって2年後そのシナリオが実現した場合、市場は無反応であるだろうし、金利がそれ以上ならネガティブ、それ以下ならポジティブな反応になるだけのことだ。

彼は債券投資家だが、多くの投資家にとっての問題は、株式市場や為替がどうなるかということである。これについては前述のデフレ圧力に触れた上で、次のように答えている。

コモディティ価格の下落や新興国通貨の下落は米国にとってデフレ圧力となる。そうなれば、株式市場やリスク資産にとってはマイナスか、少なくともプラスの影響にはならないだろう。

しかし、デフレの度が過ぎれば中央銀行も動かざるを得ない。米国が緩和を再開しなければならなくなれば、量的緩和に出口がないことが証明され、市場はインフレ相場へと戻ってゆくだろう。

市場が過度に反応し、バブルが崩壊したとき、それは結局は米国のインフレを示唆することになる。その状況は、デフレと呼びたければデフレと呼べばいいが、ともかくそのターニングポイントに近づいているということである。

このグロス氏の意見は、例えばジム・ロジャーズ氏が金相場について語っていることと同じであり、ここでも同様の見解をより詳しく説明してきた。

著名投資家のなかでは今後のシナリオがある程度共通見解として形成されてきているということであり、個人投資家にとっても、その相場観を知っておくことは非常に重要になるだろう。