中国の人民元切り下げで世界同時株安: 米国株の空売りとドル円の押し目買い

中国が人民元の基準値を2%切り下げたことによって各国の株式市場が下落している。切り下げの経済への影響は各国様々であるが、基本的には以下の通りである。

  • 米国・欧州・日本の輸出業への影響
  • 中国のコモディティ購買力の低下
  • 中国人観光客の減少
  • 中国のドル建て債務の増加

中国に関して一番心配されているのはドル建て債務の増加である。通貨切り下げは中国の輸出業の助けになるが、米国の利上げによる中国の債務バブル(株式バブルではない)崩壊が懸念されているなかで、ドル建ての債務が増えることが致命傷になる可能性がある。

米国の利上げへの影響

次に懸念されているのは米国の利上げへの影響である。米国はドル高に耐えながらも2%の経済成長を辛うじて達成し、利上げに繋げようとしてきたところに人民元の切り下げが行われ、今まで以上に輸出がダメージを受けることが懸念されて株安となっている。

Fed(連邦準備制度)のタカ派な発言により、米国は9月の利上げが濃厚と思われていたが、人民元切り下げが世界経済に及ぼす影響から、市場ではFedが利上げを先送りするのではないかという観測が広がっている。

個人的には中国の通貨安を理由にFedの意志が揺らぐとは思わない。彼らの利上げの動機は強く、また彼らが実体経済より金融市場を気にしていることは以下に説明した。株安を受けて長期金利が低下しているため、これがむしろ利上げを支えることも書いた通りである。

しかし、利上げについては投資家としてはどちらでも良いのである。何故か。以下に説明したい。

効果を発揮するS&P 500空売り

ポジションの話をしよう。ここでは長らくS&P 500 (Google Finance)の空売りで現物株の買いをヘッジするべきだと書いてきた。以下の記事でも、株式の売り持ちが買い持ちよりやや多いと表明している通りである。

米国株は綺麗なトリプルトップを形成しており、お陰でこれまで単なるヘッジであったS&P 500の空売りが、上値での売り増しによって初めてそれ自体で利益を出し始めている。

このショートポジションは単に米国の利上げに備えたものだったが、これが中国の通貨切り下げで絶好のポジションとなった。

このまま米国の利上げが9月となれば、米国株にはネガティブな材料となり、空売りはそのまま効果を発揮するだろう。では中国の通貨切り下げの影響で利上げが延期されればどうなるか? 株式市場にはプラスの材料であるために、S&P 500は再び高値に向かい、ショートポジションの利益は振り出しに戻るかもしれないが、今度はドル円を安値で拾う機会が現れる。

チャイナリスクがポジションのプラスに

これらは共に、中国発のリスクオフが株とドル円を押し下げたためであり、それがなければ「どちらに転んでも利益の機会」とまでは行かなかったはずである。コモディティ市場の動きから世界的な景気減退を予測し、ポジションをリスクオフにしたことが奏功した。

また、この記事で推奨した通り、ユーロ圏の資産株へのシフトも進めた。フランクフルト国際空港を保有するFraport (XETRA:FRA、Google Finance)などを昨日の底値で拾ったが、この銘柄は今日の全面安のなかで辛うじてプラスで推移しており、相対的な強さを見せている。

ユーロ圏の輸出株は軟調

一方で、弱いのは輸出株であり、ヴィトンなどのブランドを保有するLVMH (EURONEXT:MC、Google Finance)は4%安となっている。中国株の暴落時に利益確定を示唆した、ベンツなどを販売するドイツのDaimler (XETRA:DAI、Google Finance)も軟調であり、やはり機敏な逃げ足は重要ということである。

一方で、押し目を狙えるのはEasyjet (LON:EZJ、Google Finance)など原油安の恩恵を受ける航空株などだが、買い向かう時も、買い持ちが既存の売り持ちを大幅に上回ることのないよう、単なる新規の買いポジションよりも、既存の買い持ちの銘柄を入れ替え、割安になった銘柄をより多く保有してゆく形で対応したい。

要するに、自分の相場観を信じて、トリプルトップのあいだにどれだけ空売りを増やせたかが、下落時にどれだけ買いを増やせるかを決めるのである。ちなみにEasyjetについては6月の底値付近まで下がるのを待って買い始めたい。

結論

ここから先、株式市場には悪材料しかなく、利上げが万一延期されて反発する場合も、長続きはしないだろう。問題は結局、ドル円をいくらで拾うかということと、その後金をいつ買うかということである。以下の記事を参考にしてほしい。