2015年2Q日本のGDP内訳: 明暗分かれた家計と産業、バブル経済的な構図が明確に

2015年4-6月期の日本の実質GDPが発表され、前年同期比(以下同じ)で0.71%の成長となった。

報道では前期比のマイナス成長ばかりが強調されているが、季節要因を取り除ける前年同期比で見れば、前期比ほどに悪い数字というわけではない。しかし、それでも日本経済が弱いのはどうしようもない事実ではある。内訳を見てゆこう。

2015-2q-japan-real-gdp-growth

前年同期比で描かれたグラフを見れば、報道で使われている前期比の数字とはかなり印象が違うことに気がつくだろう。これは前年の消費増税の時期ともかかわりがあるが、それも含め以下に説明する。

個人消費は下げ幅縮小も依然弱く

個人消費は0.20%の上昇となり、1-3月期の-4.04%に比べれば大幅な回復である。ただ、これは比較対象となっている2014年は4月に消費増税が行われたため、1-3月期は強く、4-6月期は弱く出ているためである。

したがって、実際の(マイナス)成長は間を取った-2%ほどと見るのが妥当かと思われ、これは2014年後半の-2.5%程度と比べてやや回復しつつあるとは言えるが、弱い数字である。

増税後の落ち込みから回復しつつある住宅投資

住宅投資は-3.46%のマイナス成長であり、これは前期の-15.59%から見れば大幅に戻している。前期比で見てもプラスの成長であるため、消費増税前ほどの高水準ではないものの、低金利が依然利いていると見るべきなのだろう。

個人消費よりは強い設備投資

設備投資は2.93%の成長となった。前期は-1.77%のマイナス成長であり、上記と同様に間を取ってもやはりプラスの成長となる。

内需のみに左右されるわけではない設備投資は、少なくとも個人消費よりはまともに推移している。2015年に入ってようやく回復しつつある住宅投資も考慮すれば、実需は回復していないが資産や産業は比較的好調であるという、バブル経済的な構図となっていると言えるだろう。

かなり悪い輸出

最後に輸出入であるが、先ず輸出は1.64%の成長となり、前期の6.93%から落ち込んだ。輸入は0.95%の成長となり、前期の-0.41%とさほど変わらず横ばいである。

輸出の落ち込みには弁解の余地がない。比較対象の2014年2Qにおいてはドル円はまだ100-105円程度をうろうろしていたのであり、今期のドル円は120-125である。

以下の記事で書いたように、円安は今後緩やかになることが見込まれ、中国の景気減退も考えれば、輸出は更に悪くなることが想定される。

結論

色々と書いたが、要するに日本経済は、実体としてはほぼゼロ成長なのだと思う。これには個人消費のマイナスと産業界や不動産市場のプラスが逆方向に作用しており、実体経済と乖離した産業・金融市場という構図をよく表している。

この状態で日銀が量的緩和を止めればどうなるか? その場合は明確なリセッション、そして少し遅れてコアCPIのデフレ入りということになるだろう。世界的なコモディティ価格の下落もデフレに貢献するはずである。

日本の現状は量的緩和相場の運命を一番よく表している。要するに景気後退か追加緩和かを選ばなければならないのである。

緩和を止めて景気後退に陥れば、株式市場は暴落だろう。日本の量的緩和に出口はない。ドル円は長期の売りである。米国は日本のようになりたくないために、利上げを急いでいるのである。

コモディティ市場の暴落、中国の景気減退、アメリカの利上げと、世界経済から需要を失わせる要因があまりに多い。金融市場のターニングポイントが近づいているのである。