世界同時株安で中銀はどうするか?: 金融政策をめぐる状況がブラックマンデーの原因に似てきた理由

米国の利上げと中国の景気停滞を原因とする世界同時株安が続いているが、米国株が高値から10%ほど売られる中、市場が短期的なリバウンドを見せるかどうかが注目される。

8月25日の市場は国によって異なる反応を見せた。先進国で一番最初に始まった日本市場は約3%安で開場し、正午にかけて前日比プラスに持ち直す場面も見られたが、再び売られ、日経平均は結局3.96%安で引けている。

量的緩和が今年始まったばかりの欧州市場は強い反発を見せ、ドイツ市場は強気のまま4.97%高で引けた。先程引けたばかりの米国市場は序盤から中盤まで強く推移したものの、最後に売られてS&P 500は1.35%安で引けている。

中央銀行の出方はどうか?

この市場の動きは中央銀行の出方を伺った動きと言える。日銀とFed(連邦準備制度)が沈黙を守るなかで、ロイターによれば、ECB(欧州中央銀行)は「インフレ見通しが大幅に変化した場合には追加措置を打ち出す」と表明した。

これは恐らく先進国の中央銀行が初めて世界同時株安に言及したコメントで、欧州株はこれを好感し反発した。一方、Fedは7月の議事録を公開し、11連銀のうち5連銀が利上げに賛同したことが明らかになると、米国株は大きく売られ、マイナスで引けた。これは勿論世界同時株安前の議事録だが、Fedの利上げへの意欲が再び明らかになった形である。

やはり中銀頼みの株式市場

これらの動きは、株式市場が各国の中銀次第であるということを明確に示している。この期に及んでバリューで市場を分析しているアナリストもいるが、悪い冗談として受け取るべきだろう。すべては流動性次第である。

さて、では各国の中銀が現在何を考えているかを推測してみよう。先ず、Fedの意図については以下の記事で明確にしておいた。

この記事は非常に重要なので読んでおいてほしいが、要約すれば、米国は緩和を他国に押し付けて、自国は量的緩和相場からいち早く脱出したいということである。

したがって、米国は市場が安定化し、利上げが可能になることを望んでいるはずである。米国株がこれ以上下げれば、Fedは少なくとも利上げを延期せざるを得ないだろうが、まだその望みは捨てていないだろうと推測する。

出来れば緩和したくない日銀

一方で、多くの日本の投資家は日銀の追加緩和に期待を抱いているようだが、日銀の立場に立って考えれば、日銀はここで追加緩和をしたくないはずである。日銀が追加緩和を行えば、市場はある程度は安定するかもしれないが、今度は市場が安定したことを口実に米国が利上げを行う可能性がある。

ここでずっと書いてきたように、日銀は追加緩和を利上げ後の市場急落の切り札として取っておきたいのである。ここで米国の利上げより先に緩和をしてしまえば、実際に利上げが行われた後により大きい市場急落があったとしても、日銀には対応の手段が無くなってしまう。

思い出されるブラックマンデー

ここで思い出してほしいのが、ブラックマンデーの直前に各国の中央銀行がどう動いたかである。ブラックマンデーの原因となった中央銀行の動きについては、以下の記事で説明した。

この時は、ドル安の行き過ぎを懸念した米国が、ドル安是正のために米国が緩やかに利上げする一方で、日本やドイツに利下げを要求した。これはルーブル合意と呼ばれ、ここで一旦利下げに合意したドイツは、しかしその後インフレへの懸念から利上げを断行する。

懸念されていたドル安のため、米国の緩やかな利上げはドイツと日本の協調があって初めて可能であったが、ドイツが利上げを急いだことで米国も利上げを急がなければならない状況に追い込まれた。以下の記事で説明した利上げ競争が、ブラックマンデーの頃には実際に起こったわけである。

日銀とECBはどう動くか?

そこで懸念されるのが、米国が利上げを撤回しても日銀やECBが追加緩和をするかどうかである。各国政府が連絡を取り合っている裏では、誰が先に緩和をするかの駆け引きが行われているはずである。上記に述べた理由で、誰も他国より先に緩和をしたくないからである。

何度も述べているように、今はまだ、量的緩和相場が完全に崩壊する場面ではない。だから各国中銀の協調も、何とか折り合いがつくはずであり、株価の下落速度に従ってそれぞれある程度の緩和を考えるはずである。ただ、個人的な見解はほかの投資家ほどハト派ではない。理由は以下の記事の通りである。

中銀の思惑を考える

投資家にとって重要なのは二点である。投資家の希望的観測で中銀の行動を予想しないこと、そして各国中銀の協調が上手く行かなくなるポイントを注意深く探ることである。

今はまだ大丈夫だが、急落が大きくなれば各国中銀はなりふり構わなくなってくる。そのポイントが、量的緩和相場の崩壊、株式と債券の暴落のタイミングである。

今回の急落も、将来の暴落も、すべては2月の記事で既に予想してあるので、もう一度よく読んでおいてほしい。すべては予定通りである。