ジム・ロジャーズ氏: 金融市場でまだ安いのはコモディティだけ

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを立ち上げたジム・ロジャーズ氏がNEWSRioのインタビューでインフレとコモディティについて語っている。

インフレと中央銀行

現金給付などの景気刺激策の結果、アメリカではインフレが始まっている。

現在ではCPI(消費者物価指数)や住宅価格にもインフレが表れているが、金融市場で最初に上がったのは金属や穀物などのコモディティ銘柄である。

多くのマクロ投資家がコモディティの上昇を予想していたが、ロジャーズ氏は早くからそれを予想した1人である。

一方でFed(連邦準備制度)のジェローム・パウエル議長はいまだにインフレは一時的だと言い続けている。このことについてコメントを求められたロジャーズ氏はなかなか辛辣な答えを返している。

長らく相場にいた結果、こういう人々の言うことには耳を貸しても仕方がないということを学んだ。彼らが気にしているのは自分の職を維持することで、あなたやわたしや子供たちのこと考えているわけではない。彼らは自分の職のことしか考えていない。

パウエル氏は「インフレは一時的だ」と言うことが職を失わない最良の方法だと考えているのだろう。

インフレが一時的でないと言ってしまえばパウエル氏は何をしなければならないだろうか? 利上げなど金融引き締めをしなければならない。しかし2018年に自らの金融引き締めで株式市場を暴落させたパウエル氏はそれをやりたくないのである。

「インフレが一時的」だと主張している限りは金融引き締めをやらなくて良い。彼が考えを変えるのはインフレが長期的だと判断した時ではなく、状況的にインフレが一時的だともはや主張できなくなった時だろう。

何度もパウエル氏の批判をして申し訳ないが、世界経済の舵取りをするアメリカの中央銀行のトップの思考回路がこの程度だというのはあまりに酷いと思う。少なくとも前職のジャネット・イエレン氏はこのようではなかった。古い経済学に固執し間違うこともあったが、マクロ経済を専門とする経済学者である彼女は少なくとも真面目に経済学をやっていた。

しかし本当に何も考えていないパウエル氏はあまりに酷いと思う。彼がインフレという現実を認めたくないために世界中の国民が物価高騰で苦しむということをもう少し考えるべきである。世界の人々の世界よりも彼の職の方が大事なのだろうか? 政府の役職とはそういうものである。

コモディティ相場見通し

パウエル氏がインフレを無視している間にインフレは進んでいる。金融市場でその象徴となるのはやはりコモディティ銘柄群である。

ロジャーズ氏はコモディティ相場について次のように述べている。

金融市場でまだ安いと言えるのはコモディティだけだ。銀は史上最高値から50%下げている。砂糖は史上最高値から70%下げている。原油は史上最高値から50%下げている。これらの数字はバブルではない。

しかもインフレが来る。物価が上がる。インフレから身を守る方法はコモディティを保有することだ。例えばパンの値段が上がったとしても小麦を持っていればあなたは大丈夫だ。大丈夫どころか利益まで出るかもしれない。

わたしは最近農作物ETFを買った。農作物の価格が高騰すると読んでいるからだ。あなたのシャツの値段が上がるだろう。木綿を保有すれば儲かるということだ。

ロジャーズ氏が挙げた銘柄群の値動きを見てみよう。ロジャーズ氏が史上最高値を挙げているので、それが分かるように今回は長期チャートである。

まずはロジャーズ氏は挙げていないが金から始めよう。

ロジャーズ氏が挙げていないのは金が史上最高値付近にあるからだろう。一方で銀はどうだろうか。

まだまだ史上最高値には届かない。アメリカで最後に物価が高騰した1970年代以来のインフレ危機だとすれば、現在の銀価格はかなりの安値であることは確かである。

次に以下は砂糖である。

こちらも安い。

更にパンの材料である小麦の値動きは以下の通りである。

そして最後にシャツの原料である木綿価格である。

木綿はコモディティの中でも特別安いかもしれない。

結論

コモディティ相場は短期的に見れば現在ある程度調整中である。インフレ懸念が一時的に後退しているためである。

その短期的な見通しについては株式市場に影響されるので、スコット・マイナード氏などの株式相場予想を参考にしてもらいたい。

しかし長期的なトレンドがコモディティ高であることには変わりはない。短期的な値下がりが受け入れられるならばホールドしながら1年ほど寝ていれば良いだろう。

これらのコモディティは先物市場で取引されているが、先物価格に連動する米国株ETFも取引されている。以下の記事で紹介しているので参考にしてもらいたい。