パウエル議長に反旗を翻し始めた連銀総裁たち

アメリカではインフレが始まっている。コモディティ市場では金属や穀物価格が高騰し、住宅価格の上昇が止まらず、CPI(消費者物価指数)も高止まりしている。

連銀総裁の反乱

Fed(連邦準備制度)のパウエル議長はインフレは一時的だと主張して市場を宥めようとしている。インフレは問題ではなく、緩和は続くと言い続けているが、投資家は彼の発言に惑わされるべきではないということを以下の記事で書いておいた。

何故ならば、他のFedのメンバーが経済学的に根拠のないパウエル氏の発言を無視して利上げを支持する可能性があるからである。

そして予想通りそのようになってきたようだ。複数の連銀総裁がインフレを懸念し金融引き締めを主張し始めたからである。

例えばダラス連銀総裁のカプラン氏はテーパリング(量的緩和縮小)に早く着手すべきだと主張した。Barron’sのインタビューにおいて彼はインフレについて次のように述べている。

物価上昇圧力のうちいくらかの要素は労働市場の需給問題を解決すれば収まるだろう。いくつかの要素はより長期的なもので、それは幾分広がってゆくだろう。原材料価格が今年高ければ、来年には製品やサービスの価格に転嫁されることになる。高騰している住宅価格は賃料に転嫁されるだろう。

非常にまともな見解ではないか。経済学者ラリー・サマーズ氏の見解とも一致する。

そしてカプラン氏はパウエル議長の「一時的」という表現を以下のように否定した。

わたしは一時的だとか一時的でないとかいう言い方を避けてきた。一部の要素は経済再開に関連するサイクル的なものだが、他の要素はもっと長期的で、構造的で、したがって根深いものだと言う方が良いだろう。

わたしの予想した通り、やはり他のFedのメンバーは現在の経済の状況をしっかり見ている。それが6月のFOMC会合に表れていたのである。

だからパウエル氏以外のメンバーの利上げ予想が見られるドットプロットの発表のない7月の会合がハト派だったからといって、それを重視すべきではないのである。

他のメンバーたち

カプラン氏の考え方が一番明確だったので最初に取り上げたが、このように考えているのは1人ではない。例えばセントルイス連銀総裁のブラード氏はテーパリングの早期開始を訴えた上で次のように語った。

インフレ圧力は強い。もし必要ならば、それを抑え込むための正しいリスクマネジメントを2022年に行わなければならないだろう。

緩和縮小を早期に行うことについては適切な比喩を用いて説明している。

巨大なタンカーを適切な時期に正しい方向に動かすようなものだ。

一方で当然ながらそう思っていない連銀総裁もいる。サンフランシスコ連銀総裁のデイリー氏は労働者不足による賃金高騰について、アメリカにはまだおよそ1,000万人の失業者がいるからインフレは問題ないと主張したがこの論理は正しくない。

何故ならば、アメリカの失業者は手厚すぎる失業保険を貰うために失業申請はするが職には就きたくない人が多く存在するからである。彼らは失業保険が手厚い限り職場には戻って来ない。

このように、政府による刺激策はあらゆる意味でインフレを悪化させる方向に作用している。コモディティ相場の長期的な上昇は止まらないと予想するのがやはり妥当なのである。

結論

ということで、やはり市場は早期のテーパリングと利上げを想定したほうが良いだろう。こうした環境下では、コモディティの中でもゴールドの動きは悪くなる。

しかし銅を代表とする他のコモディティについては少し違うということを以下の記事で書いている。

株式市場はどうなるだろうか? スコット・マイナード氏は株安を予想している。彼の予想がまたまた的中するのか、見ものである。