世界最大のヘッジファンド、米国株を大幅買い増し

毎四半期恒例、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fの季節がやってきた。米国株が最高値を更新してゆく中で著名投資家のポートフォリオはどうなっているのか。先ずはレイ・ダリオ氏率いる世界最大のヘッジファンドBridgewaterのポートフォリオから紹介したい。

米国株買い増し

まずポートフォリオ全体の傾向からだが、意外だったのは今回Bridgewaterのポートフォリオが大幅な米国株買い増しになっていたことである。Form 13Fに申告されているBridgewaterのポジションの総額は156億ドルとなり、3月末の113億ドルから大幅に増加した。

ダリオ氏の動向はここでも逐次伝えているが、ダリオ氏はそれほど米国株に強気ではなかったような印象だった。

しかし一方で、金利が下がるならば高い株価も正当化できるという発言もしていた。

そしてここ数ヶ月はアメリカの長期金利が下落した局面である。長期金利は次のように推移している。

この状況をダリオ氏は恐らく見通していたのだろう。Bridgewaterが3月末から買っていた銘柄といえば、配当株である。

株式の配当は国債の金利と競合するので、金利が下がれば配当利回りも下がる。配当利回りが下がるということは、株価に対する配当の大きさが減るということなので、つまり株価が上がるということである。

よって低金利になれば配当株が上昇する局面ということになる。Bridgewaterのポートフォリオは3月末からそういうものになっていた。そして見事に3月から金利は下がり始めたのである。

個別銘柄

では次にポートフォリオに含まれている個別銘柄を見てゆこう。今のBridgewaterのポートフォリオは配当株が多いため、いわば昔のバークシャー・ハサウェイのようなポートフォリオとなっている。

例えばスーパー大手のWalmartは3月末の時点で4.9億ドルの大きなポジションだったが、6月末では7.4億ドルに増額されている。そしてWalmartの株価は次のように推移している。

金利が低下に転じたあたりで底打ちしているのが分かるだろう。

ポートフォリオに含まれる他の銘柄も似た動きになっている。P&Gは4.3億ドルから6.4億ドルに増額されているが、次のような値動きになっている。

次はJohnson & Johnsonで、2.8億ドルから4.7億ドルに増額されている。

薬品株でもあるため他の銘柄よりも良い動きである。

次は典型的な(旧)バフェット銘柄で、Coca Colaである。3.0億ドルから4.5億ドルに増額されている。

次はそのライバルのPepsiCoで、2.5億ドルから4.0億ドルに増額されている。

そして最後は日本でも有名になってきたCostco Wholesaleである。2.0億ドルから3.3億ドルに増額されている。

結論

こう見ると見事な底値買いである。銘柄だけ見れば完全な(旧)バフェット投資だが、しかしバークシャー・ハサウェイ的な投資をするにしても金利の動きが重要であることがこのようにチャートを並べると一目瞭然となる。

金利の動きはどうなるだろうか。ここ数ヶ月の低金利を見事に予想した人物と言えば債券投資家のスコット・マイナード氏である。

しかしそのマイナード氏は株価の調整を予想している。

一方でBridgewaterが6月末のタイミングで米国株を大幅に買い増し、しかも配当株投資を継続しているところを見ると、ダリオ氏は金利低下による株高シナリオを支持しているように見える。

金利に対する見方が同じでも株式市場に関する結論は違うということである。しかし同時にダリオ氏もテーパリング(量的緩和縮小)を警戒していたはずである。

だからいつまで株式市場に足を載せていられるかというチキンレース的なものなのだろう。天井を予想するのはいつも簡単ではないのである。