デルタ株はテーパリングを遅らせるか?

Fed(連邦準備制度)は利上げとテーパリング(量的緩和縮小)を考えている。

しかしテーパリング開始には懸念材料がある。デルタ株の感染拡大である。

感染者数と景気動向

コロナ初期には各国の感染者数を頻繁に取り上げた。市場がコロナの流行度合いに敏感に反応していたからである。

しかし市場がコロナにあまり反応しなくなってから、感染者数を取り上げることはしていなかった。

しかしアメリカでのデルタ株は徐々に大きな問題になりつつある。Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏はデルタ株の流行拡大で株式市場が急落すると主張している。

また、流行が拡大して経済が冷え込めばFedのテーパリングにも影響する可能性があるかもしれない。そこで久々にアメリカの感染者数のデータを確認したい。

アメリカの感染者数

以下が直近10日のアメリカにおける新型コロナ感染者数(累計と1日の増加人数)のデータである。

  • 8月13日: 33,711,583人 (+ 271,409人)
  • 8月14日: 33,755,895人 (+ 44,312人)
  • 8月15日: 33,811,934人 (+ 56,039人)
  • 8月16日: 33,983,145人 (+ 171,211人)
  • 8月17日: 34,086,455人 (+ 103,310人)
  • 8月18日: 34,217,125人 (+ 130,670人)
  • 8月19日: 34,333,441人 (+ 116,316人)
  • 8月20日: 34,614,519人 (+ 281,078人)
  • 8月21日: 34,688,313人 (+ 73,794人)
  • 8月22日: 34,728,406人 (+ 40,093人)

今は日本でも結構な増加人数になっているが、アメリカでも以前のように1日あたり6桁の新規感染者が確認されている。21日と22日で減少しているが、これは土日の数字が少ないことによる。

増加スピードはそれほどでもないのだが、7月後半からの傾向で見れば、新規感染者数は確実に増えつつある。

このまま感染拡大が進めば再びロックダウンが行われるのではないかという観測もあるが、決まった話は現時点ではない。しかし一方でピークと呼べるような状況はまだまだ遠いデータにも見える。

今後の見通し

恐らくはこのまま9月か10月まで新規感染者の数は増え続けるのではないか。

テーパリングはどうなるだろう。パウエル氏以外の多くの会合参加者はテーパリングを支持している。

しかし次のFOMC会合は9月21日から22日である。恐らくデルタ株の流行はこれから拡大し、ピークに近いかまだピークに達していないくらいの日程に会合が行われる。

この9月の会合でテーパリングの開始が決定されるのではないかという憶測もあったが、デルタ株の状況を考えれば9月は見送りになる可能性が高いのではないか。テーパリング支持派の委員たちも、テーパリングを渋っているパウエル議長への譲歩として9月は見送りということにすれば、その後のテーパリングもやりやすくなるだろう。

このシナリオが正しければ、影響を受けるのは金価格である。金価格は一時的なインフレ鈍化で下落トレンドが止まるということを以下の記事で予想しておいた。

その後金価格は以下のように推移している。

金相場は記事の後CPI(消費者物価指数)の発表を受けて反発している。デルタ株は恐らくこの短期的な下落トレンド停止を後押しするだろう。

当分の間コロナのデータは重要視していなかったが、今後1ヶ月か2ヶ月ほどはデルタ株の動向を注視した方が良いだろう。