ポール・チューダー・ジョーンズ氏: インフレはどんどん酷くなる

ブラック・マンデーを予測したことで有名な投資家ポール・チューダー・ジョーンズ氏がCNBCのインタビューでインフレについて語っている。

インフレ危機

ジョーンズ氏は次のように断言する。

今投資家が直面している最大の問題はインフレだ。

Fed(連邦準備制度)がインフレは一時的だと言い張る中でそうではないと言い続けてきたジョーンズ氏だから、今こう発言することに不思議はないだろう。彼はこう続ける。

インフレが一時的ではないことは明らかだ。このまま居座り、間違いなく金融市場に対する脅威となり、そして恐らくは社会全体への脅威となるだろう。

事実、ガソリン価格が高騰しているのは日本人でも実感しているはずだ。金融市場では原油価格は次のように推移している。

去年マイナスになった原油価格を高値まで押し上げたのは、現金給付と西洋のリベラル派が推し進めた脱炭素政策である。需要があるにもかかわらず、化石燃料の生産を無理矢理抑制した結果がこれである。

高騰するエネルギー価格が既に高くなっている物価を更に押し上げてゆくとジョーンズ氏は主張する。

5.4%というCPI(消費者物価指数)の数字は本当に驚きだ。30年来の高い数字で、もちろんここから数ヶ月で更に上がってゆく。

原油価格の高騰はそこから数ヶ月の遅れを経て、原油を原料として作られる様々な製品のインフレへと転嫁されてゆくからである。

インフレを招く現金給付

そしてインフレの原因となっているのは脱炭素政策だけではない。マネーサプライ、つまり銀行口座に存在する貨幣の量についてもジョーンズ氏は言及する。

経済の需要の側を考えよう。つまりM2(訳注:マネーサプライ)だ。M2は新型コロナの流行が始まってから5.4兆ドルも増えた。この増加量は本来の増加量よりも3.5兆ドル多い。

3.5兆ドル、つまりGDPの16%分が預金として待機しており、株式や暗号通貨や不動産や消費に使われるのを待っている。

アメリカでマネーサプライが増加したのは明らかに現金給付が原因である。アメリカでは都度3回、合計で1人あたり30万円以上の現金が給付されており、これが銀行預金残高の爆発的増加と物価の上昇をもたらした。

そしてこれは対岸の火事ではない。日本にも遠からずインフレの時代が来るだろう。何故ならば、日本も再び現金給付を考え始めているからである。

日本でもインフレ近づく

アメリカで既に日用品の値段が上がって年間で10万円どころではない損失になっている消費者も多いだろうに、負け確定の戦略に後から率先して飛び込んでゆくあたりは流石、第2次世界大戦で負けた日本らしいというべきだろうか。脱炭素政策についても同じことで、先導していた菅氏と小泉氏はいなくなったが、それでも日本政府は西洋の間違いを今後も真似するのだろう。

現金給付に関しては経済学者ミルトン・フリードマン氏が述べた現金給付の本質をもう一度思い出してほしい。

こうした政策の中身は、現実には政府がまったく恣意的に国民の一部から税金を略奪して国民の他の一部に補助金として与えるということでしかない。

結局GO TOトラベルも現金給付もそういうものでしかなかったにもかかわらず、前者を否定する人も後者には気を引かれるらしい。しかし国民がそういう道を選ぶならば、来年か再来年には日本にもアメリカのような物価高騰が待ち受けているだろう。

皮肉なのは、現金給付と脱炭素政策という物価高騰の二大原因が両方とも政治家によって引き起こされた、つまり政治家が何もしなければ問題は生じなかっただろうということである。経済学者ハイエク氏は本当に慧眼だったと言わざるを得ない。

政府が自分の頭で考えて行動しようとすれば、その被害は増大するように思われる。