11月FOMC会合結果: テーパリング開始決定

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間10月2日から3日まで金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、政策金利の維持とテーパリング(量的緩和縮小)を決定した。

「インフレは一時的」

テーパリング決定は事前の予想通りだが、大きなイベントであることは確かである。しかしいつも通り先ずは発表された声明文から検証していこう。

テーマはやはりインフレである。アメリカでは現金給付と脱炭素政策による化石燃料高騰によって物価が高騰している。

しかしFedは現在アメリカで発生している物価高騰が短期要因によるものであるとの姿勢を崩していない。著名ファンドマネージャーらが猛批判しているが、パウエル議長は知らんぷりである。

パウエル氏はもう長らく「インフレは一時的」だと言い続けてきた。彼がそれを始めてから半年ほどになる。もはや「一時的」とは果たして何処まで長くなれるのかという言語学上の問題に発展しているのではないか。

いつまで経ってもインフレが収まらないので、今回の声明文ではトーンが少し変化している。前回の声明文では、インフレに関して次のように書かれていた。

インフレは短期的要因を反映して上昇している。

それが今回の声明文では次のように変更されている。

インフレは短期的と予想される要因を反映して上昇している。

段々雲行きが怪しくなってきたのではないか。

テーパリング開始

Fedの経済見通しが間違っているのはいつものことなので、あまり気にせずテーパリングの話題に移ろう。声明文には次のように書かれている。

われわれは国債の月間買い入れ額を100億ドル、モーゲージ債の買い入れ額を50億ドルずつ減額し始めることを決定した。

これは今月から始まるという。現在の月間買い入れ額は国債が800億ドル、モーゲージ債が400億ドルなので、このペースで行けば量的緩和は来年6月には終了することになる。ただ、声明文によればこの減額ペースは変更される可能性があるという。

各月において同じような減額が行われることが適切になるだろうと判断しているが、経済見通しの変化によって正当化されるならば、減額ペースを調整する準備がある。

結局どうするのか何も明確にならない。基本的にもう何も明らかにはしないということが、自分が原因で2018年の世界同時株安を引き起こしたパウエル氏の信条なのである。

利上げは宣言せず

さて、テーパリングについては想定通りだが、投資家にとっての問題は今後の利上げである。少なくともパウエル氏は利上げに積極的ではないようだ。会合後の記者会見で次のように述べている。

利上げを行う良いタイミングではないと考えている。労働市場が回復する必要があるからだ。

しかし曖昧な文言を付け加えることを彼は忘れない。

もし対応が必要なら躊躇しないつもりだ。

ちなみに金利先物市場は来年6月の利上げを想定している。もっと重要なのは、長短金利差である。最新のGDP統計はインフレが止まらないまま景気後退に陥るスタグフレーションを暗示している。

スタグフレーションになれば、景気後退で長期金利には下方圧力がかかるが、インフレに対応するために利上げをしなければならなくなるので、短期金利が上がって長期金利が下がり、長短金利差が縮小、あるいはマイナスになる。これはまだ市場に織り込まれていない投資チャンスである。

スタグフレーションになるならば、これがマイナスまで落ちるはずである。詳しくは以下の記事を参考にしてほしい。

結論

はっきり言ってアメリカ経済は詰んでいる。すべては現金給付と脱炭素政策が引き起こしたことである。

そして既に誰かが落ちている落とし穴に喜んで落ちに行くのが日本のお家芸である。現金給付に加え、岸田首相は脱炭素政策に1兆円出すらしい。

他人の金であれば人はこれほど簡単にドブに捨てられる。あるいは捨てる方がまだましだろう。ドブに1兆円を捨てても天然ガス価格は高騰しないからである。世界はほとんどコメディなのである。