10月米雇用統計はコロナピークアウトで改善 インフレもたらす労働力不足は続くのか

11月5日に10月分のアメリカの雇用統計が発表された。失業率は4.6%となり前月の4.8%から改善、非農業部門労働者数は53万1,000人の増加となり、前月の31万2,000人増加から回復した。10月にはアメリカでコロナがピークアウトした結果だが、問題はそれが続くのかどうかである。

まだ遠いコロナ前水準

いずれにせよ、先ずはチャートを見てみよう。失業率はこれまで次のように推移している。

改善はしているのだが、コロナ前の3.5%まではまだ距離がある。

一方で非農業部門労働者数も回復してはいるが、コロナ前の水準にはまだまだ及んでいない。

要するに、労働市場を見ればコロナの問題はまだまだ解決していないのである。10月の数字はアメリカでコロナがピークアウトしたために改善したが、コロナは残念ながら一時的問題ではない。次の波が来ればまた労働市場は停滞し、コロナ前の水準はまた遠のくことになるだろう。

未回復の労働市場、始まる金融引き締め

アメリカ経済の問題は、この状況で金融緩和の縮小を強いられていることである。丁度先日のFOMC会合ではテーパリング(量的緩和縮小)が決定された。

次は当然ながら利上げである。本来、中央銀行は労働市場を改善するという目的で動いている。にもかかわらず労働市場が回復しないまま金融緩和を止めざるを得ない理由は、当然ながらインフレが止まっていないからである。

アメリカでは現金給付と脱炭素政策が原因で物価上昇が止まっていない。コロナで東南アジアの工場が止まるなど供給が限られるなか、消費だけは現金給付によって無理矢理押し上げたため、当然の結果としてインフレが起こった。日本の去年の現金給付はアメリカの1/3以下の規模だったためそうなっていないが、日本政府が現金給付を繰り返せばじきに同じようになるだろう。

また、それに火に油を注いだのが脱炭素政策である。

リベラル派の人々は脱炭素事業への資金供給を強制的に停止させることによって原油と天然ガスの価格高騰を招いている。同じ時期にインフレ要因が揃ったものである。

脱炭素政策が現金給付と同時に現れインフレを危険な領域に押し上げようとしていることは偶然だろうか? 恐らくは現金給付や脱炭素という個々の政策が問題なのではなく、人々が問題なのである。

だから政策を変えても基本的には同じことが起こるだろう。人々が同じだからである。そしてその帰結はどのルートを辿ってもインフレになるようだ。愚かな人々は生産せずに消費することを求めるからである。気候変動デモをやっている暇があれば働けば良いだろう。その方が人のためである。

弱い労働市場はインフレの原因

また、雇用統計に関して言えば弱い労働市場自体がインフレの原因でもある。理由を説明するためにもう一度個人消費のチャートを掲載しよう。

非農業部門労働者数のチャートと比べれば一目瞭然だが、コロナ前の水準を大幅に上回っている。この大量消費を減少した労働者で供給しているのだから、供給不足、つまりインフレになるのは当たり前である。

中央銀行がインフレのために労働市場を支えられなければ労働市場を通してインフレは酷くなるだろうし、緩和を続ければコモディティ価格の高騰が続いてインフレになるだろう。アメリカ経済は現金給付と脱炭素政策のお陰でもうどうしようもないのである。そして日本もそこに突っ込んでゆくだろう。