株が上がった、ではどうするか?: 世界同時株安の反発はポートフォリオ入れ替えで対処

上がったと言っても米国株の話である。日経平均も反発してはいるが、ドルが軟調のため米国株ほど上がっていない。まずは米国株のチャートを見てみよう。

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次は日経平均のチャートである。

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ドルが奮わずに米国株が反発、金も好調となれば、これは市場が利上げの延期を織り込み始めているのである。

利上げの時期がどう決まるかについては上記の記事を参考にしてほしいが、本稿ではこの反発をどうトレードするかを議論する。

先ず、この反発に乗じて非常に上がった銘柄がある。以下の記事で反発前にここでもいくつかの銘柄を紹介したが、そこから例を挙げてみよう。

Teekay Tankers (NYSE:TNK、Google Finance)

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記事の時点での$6.87から金曜日の高値で$8.32まで上がった。21.10%の上昇である。P/E(株価収益率)もようやく8台を超え、まだ割安ではある銘柄だが、タンカー株は景気循環銘柄で利益が不安定であることもあり、ポートフォリオ再構成の観点からは一部の利食いを考えても良い頃合いだろう。

不動産関連

世界的な金融相場の束の間の復活を受け、不動産関連も好調である。フランクフルト国際空港を保有するFraport (XETRA:FRA、Google Finance)は以前の記事から6.18%、東京証券取引所ビルを保有する平和不動産 (TYO:8803、Google Finance)は10.64%の上昇となった。

ポジションの調整

Teekay Tankersも不動産銘柄も完全にポジションを閉じるほど上がったわけではないが、こういう局面で重要なのはまだ上がっていない銘柄にポジションを少し移すということである。例えば、他のバイオ銘柄の下げに巻き込まれ、上値を抑えられているGilead Sciences (NASDAQ:GILD、Google Finance)などである。

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あるいは、これまで株安にも巻き込まれずに好調だったため、株安の反発にも同様に影響されていないハンガリーの格安航空会社Wizz Air (LSE:WIZZ、Google Finance)などである。

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Gilead SciencesのP/Eは10.80、Wizz Airは6.68である。

金融相場の復活は束の間の夢

米国株が一時上昇することには必ずしも懐疑的ではないが、上がる理由は利上げの延期ではなく、実体経済の改善でなければならない。金融相場の復活で株が上がる場合には、米国の利上げが実際に行われてその頭を叩くことになるだろう。以下の記事で説明した通りである。

こうした状況をトレードするためには、高値でのS&P 500の空売りやコール・オプションの売りを追加するほかに、上記のようにロングのほうの銘柄を徐々に入れ替え、ポートフォリオをディフェンシブにするという方法がある。売るべきものは上昇し切った銘柄や、長期的には有望だが短期的に上がり過ぎている銘柄などである。

中央銀行さえ先を知らないこのような相場においては、ロングとショートの両方を維持するほかなく、大きな利益を一気に稼ぐことは難しいかもしれないが、機動的なポートフォリオの調整やオプションの売買などで、地味ではあるが着実に利益を出してゆくことはできる。ショートポジションは維持である。

ヘッジファンドも損を出した今回の下げ相場

報道によればヘッジファンドの精算が相次いているらしいが、そのような相場でも損を出さずに米国株の空売りポジションを無傷で持ち続けることが重要なのである。この程度の下げ相場で損を出していては、数度の利上げの後に来る本当の暴落には耐えられないだろう。