マイナード氏: 利上げ強化でアメリカ経済は墜落するがそれまでは株高継続へ

止まらないインフレからいよいよ実体経済の墜落が視野に入り始めたのではないか。Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏がCNBCのインタビューでアメリカの金融引き締めと株価の見通しについて語っている。

アメリカの利上げ

アメリカでは物価高騰が止まっていない。Fed(連邦準備制度)のパウエル議長はインフレは一時的だと長らく言い張っていたが、最近ようやくそうではないと認めた。

11月に発表されたテーパリング(量的緩和縮小)も加速させるとのことで、量的緩和は6月終了の予定だったが恐らく3月前後に終了となり、その後は利上げが行われると市場では予想されている。

テーパリング完了が早くなった分利上げも早くなったと見るのが当然であり、利上げが株価に与える影響が注目されている。マイナード氏は次のように述べている。

現在行われているテーパリング加速の話は、Fedがインフレ抑制に本腰を入れるというメッセージだ。10年物や30年物などの長期国債の金利が下がっているのは、Fedが最終的に強すぎる引き締めを行い、景気後退を引き起こすという予想を織り込んでいる。

際限のない紙幣印刷の結果、中央銀行はついに景気がそれほど良くないにもかかわらず金融引き締めを行わなければならない状況に陥った。引き締めなければ物価が際限なく上がっていくからである。

その結果一番最初に反応するのは債券市場で、これについてはどうなるか以下の記事で事前に説明している。

テーパリングが強行され、利上げが行われる場合、アメリカ経済は高い確率でそれに耐えられない。短期金利が利上げに連動して上がる一方で、長期金利はそれほど上がらないか、むしろ下がってゆくだろう。

そして実際にそうなった現状をマイナード氏は説明しているのである。10年物国債の金利は次のようになっている。

利上げを意識したここ最近になって頭が下がり始めている。景気後退を意識しているのである。

一方で今後の利上げ動向を織り込む2年物国債の金利は上がり続けている。

すべて予想通りである。この米国債のトレードは今年の筆者のポジションの中でも特に利益を上げてくれている。

利上げ後の株式市場

さて、では今後利上げをしてゆくにあたって株式市場と経済はどうなるだろうか。マイナード氏は次のように続けている。

金融市場における今後の金利の織り込みを見れば、短期金利が最終的に1.75%付近まで上がるということになっており、もし本当にそうなれば経済は景気後退に陥るだろう。

しかし奇妙な点もある。以前指摘したように、名目金利は上がってゆくものの、インフレ率を差し引いた実質の金利はかなり低いままなのである。

誰もがマイナスの実質金利に注目している。インフレ率が6%か何かだとして、長期金利が1.4%だから、長期国債の実質リターンは-4%かそれ以下だ。

では実質金利が低いままだから株価は大丈夫なのだろうか? マイナード氏は次のように続ける。

仮に中央銀行がインフレ率と同じだけ(訳注:6%)利上げしたとすれば、実質金利は0%になるが、6%の政策金利に対して金融市場がどう反応するかと言えば、言うまでもなく資産価格は暴落し、経済成長は墜落するだろう。

ここでは何かが起こっている。わたしが自分のキャリアで見たこともなく、歴史上に例も見つからないような何かだ。実質金利がこれほど低いにもかかわらず、それでせいぜい経済成長を何とか維持することしか出来ない。

ここの読者には言うまでもないだろうが、これが紙幣印刷政策の最期なのである。人々はリフレ派に騙されたのだ。

しかし「紙幣を印刷すれば皆が豊かになる」というオレオレ詐欺並みの妄言に何故人々が騙されたのか、筆者にはまったく理解できない。彼らにはもう一度レイ・ダリオ氏の言葉を贈っておこう。

紙幣は食べられない。

ちなみにマイナード氏はビットコインの暴騰と暴落の両方を的確に宛てた手腕で株式市場の今後についても占っており、短期的にはまだ売り場ではないという。

歴史的には、株式市場は景気後退の数ヶ月前までは上がり続ける。短期的には経済はまだもう少し成長し、景気後退はまだ1年か2年先のことだから、株価はまだ上がるだろう。