金価格急騰はハイパーインフレ相場の始まり

原油など他のコモディティが高騰を続けていたにもかかわらず、コロナ相場初期に上昇してからその後低迷を続けていたゴールドが急上昇している。

金価格が急上昇

何はともあれ金相場のチャートを見てみよう。

金価格は長らく低迷していた。同じ時期に原油が高騰しているのとは好対照である。原油価格のチャートを見てみよう。

農作物など他のコモディティ銘柄と比べてもゴールドの低迷は顕著だった。

金価格上昇の意味

金価格がこれまで上がっていなかった理由は間違いなくインフレによる中央銀行の金融引き締め懸念である。

インフレ自体はものの価格が上がることなので、ゴールドにとってプラス要因なのだが、インフレを抑制するための利上げはマイナスに働く。金利が高くなれば、金利の付かないゴールドより金利の付くドルを保有しようとする人が増えるからである。

それで中央銀行がテーパリング(量的緩和縮小)を始めたあたりから金相場は低迷を始めた。そして今や利上げと量的引き締めという最大級の金融引き締めが来ようとしている。

だがインフレと引き締めという相反する2つの要因のうち、金価格にプラスであるインフレが無視され、引き締めだけが金相場に反映されてきた理由は何だろうか?

それは過去30年間のインフレが金相場に影響を与えられるような規模のインフレではなかったからである。インフレ率が年に1%から2%になったところで、今後10年の金価格にせいぜい10%程度の違いしか生まない。

それよりも金利の変化による要因の方が金相場への影響が大きかったということである。

しかし今のアメリカのインフレ率は1年で7.5%である。

それでも市場は物価高騰を一時的なものと見なし続けてきた。Fed(連邦準備制度)のパウエル議長が「インフレは一時的」の文言を撤回しても、市場参加者はこれまでのデフレトレンドがそのまま続くと心の何処かで信じ続けていた。

だがFedが資産価格を下落させてでもインフレ抑制のために金融引き締めを行わなければならないと気付き始めている今、長期のインフレは特に欧米人にとって差し迫った問題になりつつある。

日本人にはまだ実感がないかもしれないが、アメリカではスーパーの物価が実際に上昇を始め、ヨーロッパでは電力価格が2倍になっているのである。欧米の消費者は生き残りに必死になるだろう。

ついに駆逐され始めたデフレマインド

筆者が散々馬鹿にしてきた「デフレマインド脱却」という言葉だが、今の相場では無視できない威力を持つ。レイ・ダリオ氏が言うように、それは人々が本気で継続的なインフレに備え始めるという意味だからである。

今後物価が上がると人々が思えばどうなるか? 物価が上がる前にこぞってものを買おうとするだろう。自動車などの耐久財を買うか、不動産を買うか、あるいはゴールドを買うということになる。リフレ派の皆さんお待ちかねのデフレマインド脱却がアメリカでは本気で始まっているのである。

筆者はその流れが金相場に現れ始めていると見ている。ゴールドはもはや金利をあまり気にしていない。ここ最近の金価格急騰は金利が原因ではない。利上げのお陰でアメリカの金利はむしろ上がっている。それにチャートをもう一度見て欲しいのだが、金価格は下落トレンドにありながらも妙な底堅さを発揮してきた。

人々の行動が変わってきているのだろう。

結論

ゴールドについては以下の記事で次のように書き、買い推奨に加えていた。

ゴールドはこれまでコモディティの中では売られてきた方である。これは利上げがゴールドにマイナスだったからだが、現状の利上げペースではインフレを止められないということがはっきりしてきた今はゴールドに風が向き始めているだろう。

タイミング的にも良かっただろう。

短期的には色々な動きがあるだろうし、株式市場の暴落が本格化すれば、金価格にもやはりマイナスになるだろう。だからゴールドの買いは株式やジャンク債の空売りと組み合わせるよう表明したのである。

しかし最近の動きは7.5%のインフレが一時的なものではなく、これから1970年代のようなハイパーインフレが現実化するということを織り込んでいるように見える。当時の金価格のチャートは以下の通りである。

前にも書いたように、ハイパーインフレは継続的な物価高騰ではなく、何度かの波に分かれて来るものである。

だから1970年代の相場の再来があるとしても、金相場にも波があるだろう。しかし上記の記事のようなトレードをすれば、波の合間のデフレ期には株式の空売りが守ってくれるだろう。そして長期的には当時のような大相場へと突入してゆくのである。

スコット・マイナード氏の予言した通りである。株価の急落も含めてここではすべて事前に報じているので、参考にしてもらいたい。