12月FOMC会合結果速報: 声明文はハト派だが想定通りでサプライズはなし

先に報じた通り、Fed(連邦準備制度)は2008年の金融危機後初めての利上げを決定した。

前回の記事で予告した通り、今回の記事では利上げと同時に発表された声明文の分析に移りたい。先ず利上げの理由として挙げられているのは、主に経済状態と労働市場の改善見込みである。

今後段階的(gradual)に調整される金融政策のもとで、経済活動は穏やかに拡大し、労働市場の指標は強化されると予想している。

また、前回のFOMC会合で言及されていたインフレ率の短期的な落ち込みに関する記述は消え、中期的な楽観のみが表現された。

インフレ率はエネルギー価格や輸入物価の下落による一時的な効果が消えるにつれ、中期的には2%へと上昇してゆくだろう。

特に強調されているのは労働市場の改善である。これは当然であり、Fedが本当に労働市場を重要視しているのであれば、何ヶ月も前に利上げを始めても良いくらいに、労働市場は改善していた。

今年は労働市場で十分な(considerable)改善が見られたため、われわれはインフレ率は中期的に2%の目標値に向けて上昇するという合理的な確信を持った。

投資家が注目していたのは今後の利上げのペースである。金融市場を驚かさないためにも利上げのペースが緩やかになることを声明に盛り込むだろうと予測されていた。それは一応その通りとなっている。

この利上げの後、金融政策は引き続き緩和的(accommodative)となり、労働市場における更なる改善とインフレ率の2%への回帰を助けるだろう。

今後のペースについては経済状況次第という建前も堅持されている。しかしこれはあくまでも建前である。

今後の政策金利の調整のタイミングと大きさを決定するために、最大雇用と2%のインフレ率という目標に対して、経済状況の結果と予想の両方を評価してゆく。

字面をあげつらえば、今回の声明で二度使われたgradualという単語と、次のcarefullyという単語がFedの慎重さを示すキーワードということになるのだろう。

2%の目標値に遠い現在の状況を鑑み、われわれは経済状況の進展を注意深く(carefully)観察してゆく。

経済の状況は、段階的な利上げのみ(only gradual increases)を正当化するように進展するとわれわれは予想している。フェデラル・ファンド金利は一定の期間(for some time)、長期的に予想される高水準を下回って推移すると見込まれる。

市場はこれらの単語が今後消えるかどうかに注目するのだろうが、イエレン議長自身はこれまで慣例となっていた声明からの単語の消去や変更というコミュニケーションに否定的であり、それらがどれだけの重要性を持つかどうかは疑問である。

結論

以上が声明をざっと読んだ感想である。市場が予想していた通り、確かに今後の利上げのペースが緩やかになることを表現した声明となったが、これらは当然盛り込まれると予想されていた建前であり、逆に言えばハト派方向のサプライズは無かったと言える。要するにすべて織り込み済みの会合となったわけである。

一方で、これまでも書いてきた通り、実際の利上げの速度は金融市場がどれだけ安定するかどうかにかかっている。何度も言うが、Fedは利上げをしたいのであり、株式や債券が急落しないかぎりはFedは利上げを行うだろう。

投資家は声明にあるような建前を無視し、本質のみを見る必要がある。Fedは本当は何がしたいのか? それに対して市場はどうなるか? これまで十分に説明してきたので、これまでの記事を参照してほしい。