ガンドラック氏: 5月まではゴールドよりもビットコイン

引き続きCNBCによるDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。今回は金相場とゴールドについて語っている部分を紹介したい。

ウクライナ情勢における暗号通貨

ロシアによるウクライナ侵攻で上昇した資産クラスは原油など色々あるが、少なくない恩恵を受けたのは暗号通貨だろう。

今回の騒動ではまずアメリカとEUが西側諸国にあるロシア人の資産および中央銀行の外貨準備を凍結した。その後、ロシアはリースされている航空機など報復で奪取できるものを西側から奪取している。

これはロシアだけの問題ではない。アメリカやEUに資産を置いていて、かつ自分の国がアメリカやEUの気に食わないことをすれば、その資産が勝手に没収されるということである。

元々このウクライナ危機は2014年にアメリカが始めたことなのだが、欧米諸国は自分が正義のような顔をしている。

選挙で選ばれた親ロシア政権を2014年にウクライナ国内の暴力デモを支援して追い出し、アメリカの外交官ビクトリア・ヌーランド氏が決めた政権を代わりに据えるということを自分はしておきながら、その西側の傀儡政権を追い出そうとするロシアの行動を「傀儡政権を据えようとしている」と批判するのは何かの冗談でしかない。以下の記事で説明した通りである。

どちらの行動も褒められたことではないが、始めたのは西側諸国である。

ドル支配からの離脱

こういうアメリカやEUの行動を見て、大手メディアに頭をやられた日本人は大喜びだが、中国人やインド人など関係のない人々はドルから逃げなければ西側の戦争に巻き込まれると考え始めている。

アメリカの軍事勢力拡大に都合の良いことをしなければ資産を没収されたり、SWIFTを止められて国外送金が出来なくなったりするからである。普段いがみ合っている中国とインドがこの件に関して一致しているのは、ウクライナ情勢に関して日本のような偏向報道がないからだ。西側や、ウクライナ東部の住民に危害を加えていたことが国連の報告書に載っているウクライナ政府にも、どう考えても大義はないからである。

ロシアが既に見出したように、西側の恣意的な制裁を回避するための1つの手段は暗号通貨である。暗号通貨であれば銀行システムがブロックされても自由に送金することが出来る。それでポール・チューダー・ジョーンズ氏などのヘッジファンドマネージャーらはこの状況で暗号通貨の買いに走っている。

ビットコインの相場見通し

では暗号通貨相場の動向はこれからどうなるだろうか? ガンドラック氏はビットコインとゴールドを比較し、次のように述べている。

ビットコインはレンジ相場になっている。上限は6万ドルで、下限は4万ドルだ。

チャートを掲載しよう。

下がってはいるが、リスクオフ相場で耐えている方だと言うことも出来るかもしれない。

ガンドラック氏は次のように続ける。

一方で金相場は1,750ドルから2,000ドルくらいのレンジ相場だろうか。

こちらもチャートを掲載しよう。

面白いことに、ゴールドのチャートとビットコインのチャートはかなり似ている。昔はゴールドは安全資産、ビットコインはリスク資産と見られていたのが、変わってきたのかもしれない。

一方で両者の違いはウクライナ危機で上がったか上がっていないかだろうか。だがそれも西側諸国を客観的に見る人々が行動を開始すれば変わるかもしれない。

ガンドラック氏はこれらのチャートを見て次のように言う。

ゴールドはレンジの中央で、ビットコインはレンジの下限にある。だから次のFOMC会合(訳注:5月4日)まではゴールドよりもビットコインだと思う。

かなりテクニカルな理由だが、ガンドラック氏の頭にあるのはそれだけではないだろう。ガンドラック氏は次のFOMC会合まで株式市場は反発を続けると予想している。

ガンドラック氏はこれまでビットコインを市場に資金が溢れているかどうかの指標として使っていた。余剰資金がビットコインに回るので、リスクオンならビットコイン上昇、リスクオフなら下落ということである。

だから5月4日まで株高のリスクオンを予想するならば、ビットコインも同じように上昇すると見ているのだろう。

結論

ガンドラック氏の予想するように推移するならば、今のところビットコインはリスク資産ということになる。しかし金相場とビットコイン相場のチャートがかなり似通ってきているのは注目に値する。

そしてウクライナ情勢によって「暗号通貨への資金逃避」というシナリオも現実味を帯びてきた。それでも株価反発の後に待っている大暴落の時にはビットコインもゴールドも悪影響を免れないのだが、暗号通貨が面白くなってきたのは事実である。