ソロス氏: ウクライナはわたしたちの戦いを戦っている

伝説的ファンドマネージャーで政治活動家のジョージ・ソロス氏が、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)でウクライナ紛争について語っている。

ウクライナの戦争か?

ロシアがウクライナに侵攻して以来、外部の人間はこの戦争について様々なことを語っている。

ソロス氏は、この戦争がウクライナだけのものだとは考えていないようだ。彼は次のように語っている。

今日のウクライナはヨーロッパ対して、西洋に対して、そして開かれた社会全体に対して大きな献身をしている。

何故ならば、彼らはわたしたちの戦いを戦っているからだ。

まったくその通りだろう。何故ならば、ウクライナはソロス氏が「わたしたち」と呼ぶ人々の戦いを戦わされているのであり、自分自身の戦争をしているわけではないからだ。

これはウクライナの戦いではない。ロシアがウクライナに侵攻した直後、ウクライナから避難するウクライナ人の中に「ウクライナとロシアは姉妹国で、互いに恨みはなく、それは両国民が分かっている。これは政治的な戦争だ」と言っていた人がいたのが思い出される。

恐らくその言葉を重く取った人は多くはいなかっただろう。だがこの言葉はこの戦争の本質を表している。

西洋のロシア嫌い

ソロス氏のように、西洋にはロシアを嫌っている人々が大量にいて、ロシアを攻撃したいが、しかし自分が犠牲になるのはごめんだと考えている。

ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを設立したジム・ロジャーズ氏はロシアのウクライナ侵攻前に次のように述べていた。

ソロス氏は嬉しそうに言う。

ウクライナがわたしたちの戦いを戦ってくれることは喜ばしいことだ。

これは心からの本音だろう。戦場で実際に死ぬのはウクライナ人であり彼ではないのだから、彼にとっては勿論喜ばしいことである。

そして日本にもウクライナ人が自分の戦いではない戦いを戦わされ、死んでゆくことを喜んで応援している人々がたくさんいる。彼らこそウクライナに行って自分で命をかけるべきだろう。居間でスマホの画面を見ているだけだからそういう残酷なことが考えられるのである。

一方でこの戦争の原因を取り除こうとする人間はほとんどいない。何故今ウクライナで戦争が起こっているのか? 何故それはドイツやフランスではないのか? それはベルリンの壁崩壊以後、東西の境界線が東側に動いたからである。

元々ベルリンにあったものが、今やNATOの境界はロシアに接している。

動かしたのは誰か? 間違いなくロシアではない。ロシアがそれを仕掛けたならば、境界は西に動いているはずである。

そしてその答えはソロス氏自身が語ってくれる。

われわれはウクライナで財団を運営している。それはわれわれの財団のなかで最も素晴らしいものの1つとなっている。

財団とは、ソロス氏が自身の政治活動に使う、自分の資金を投入した団体のことである。彼はファンドマネージャーとして稼いだ莫大な資金を世界中で政治活動に費やしている。そうして自分のロシア嫌いを他人に肩代わりさせようとしている。

ソロス氏は次のように続ける。

また、ウクライナに非常に深く関わっている人物がいる。それはバイデン氏である。事実、わたしが彼と知り合ったのは、ウクライナに関してだった。

ウクライナに対する西側の介入について一番有名なのは、2014年のクーデターだろう。元々ウクライナは親ロシアの国だったが、アメリカとEUが支援したクーデター(事実である)によって当時の親ロシア政権は追放された。

その後の政権を決めたのはアメリカである。アメリカの外交官ビクトリア・ヌーランド氏は、その次の政権に誰を据えるかを話し合っている音声を暴露された。

だが、そうして決まった次のポロシェンコ大統領についても、西側は徐々に不満を募らせていった。その後のことはソロス氏自身が語ってくれている。

バイデンはポロシェンコを民主的な政治家に転向させる努力に関してわたしよりもずっと忍耐強かった。わたしは彼に我慢ならず、それをバイデンに伝えたが、バイデンはポロシェンコを民主側に転向させる努力を続けた。

結局、西側にとって完全に西洋的な政治家をウクライナで見つけることは難しかったらしい。その後ポロシェンコ氏は選挙に負け刑事告訴されている。西側の役に立てなかった政治家のいつもの末路である。

結局、ウクライナは西洋的ではなかったのである。彼らはそれを変えるための努力をしている。だが誰のためだろうか。

ここで興味深いのは、ソロス氏はもはや何も隠さずに、ウクライナの政権に介入していたことを話しているということである。

西洋が世界中に介入する理由

だが何故こういう連中がそもそもウクライナに居なければならないのだろうか? それは自己の政治的目的をウクライナに代理させるためである。特にバイデン氏などは自分の息子の不正を調査していたウクライナの検事総長をウクライナ政府に解任させるなど、ウクライナで好き勝手にやっていた。

ウクライナ政府がそれを飲んだ事実が、アメリカやEUに支援された2014年のウクライナでのクーデター以来、ウクライナ政府がアメリカの傀儡であることを証明している。

そして現在のゼレンスキー大統領は、その役割を引き継いでウクライナ人に他人の戦いのために死ねと言っている。

だが西洋人が中東に来なければ中東はもっと平和であったのと同様に、あるいは西洋人が朝鮮半島に来なければ朝鮮人は互いに憎み合っていなかっただろうことと同様に、彼らがウクライナに居なければ現在の戦争は起きていなかっただろう。

こういう連中は、スマホの画面に向かって勝手なことを言っている日本の人々も含めて、この戦争の原因が彼ら自身だということが分かっていないのである。彼らがロシアを嫌いなのだとしたら、彼らが自分で戦うべきだろう。自分の憎しみのために他人に戦争をさせる自分の本質を一度は覗いてみれば良いのではないか。