ドラッケンミラー氏、ビットコインとゴールドの使い分けを語る

ジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementを運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏が、Sohn Conferenceにおいてビットコイントレードと金トレードの違いについて説明している。

ゴールドとビットコイン

ゴールドとビットコインはしばしば対比して語られる。ともに貨幣価値の下落を心配する人々によって買われ、金融の世界では両方ともコモディティに分類される。

だが一方で、ビットコイン相場と金相場は値動きがかなり違うことも投資家の間では認識されてきた。例えばビットコインは現在次のように推移している。

年始から半値以下に下落している。

一方で金相場は次のように動いている。

横ばいかやや上昇である。

リーマンショックでもそうだったように株式の弱気相場はゴールドにもマイナスなのだが、インフレの上昇圧力が相殺し、半値になったビットコインとはまったく違う値動きとなっている。

値動きが違う理由

この状況を踏まえてドラッケンミラー氏は次のように主張する。

これから無責任な金融政策が続き、インフレが続くと信じるならば、強気相場ではビットコイン、弱気相場ではゴールドを保有するべきだ。長らく続いている傾向を観測した結果こう信じている。

事実、ビットコインはある程度ハイテク株などの高リスク資産に連動していて、下げ相場に弱い。ジェフリー・ガンドラック氏などはビットコインはレバレッジをかけたNasdaqだとも主張している。

しかしこの違いは何故生じるのだろうか? ドラッケンミラー氏は次のように説明する。

買っている投資家の違いではないか。FANG株を買うような比較的若い投資家がインフレを予想したときにはビットコインを買うだろう。世界の破滅を予想するような気難しい年寄りは、ビットコインではなく金を買うだろう。

一方でこうも続ける。

だがこれはやや反則だ。観測したトレンドのために理由をでっち上げたようなものだ。

個人的には、ドラッケンミラー氏の説明はそれほど的外れではないと考えている。ビットコインを買うような個人投資家は弱気相場では資産を現金に戻す。一方で金相場に参加している機関投資家らは株式が下落すればゴールドなど別の資産に資金を移すことを考える。

一方、合理的な説明を考えようとする筆者をよそに、ドラッケンミラー氏はなかなか強烈なことを言う。

しばしば理由などどうでも良い。この傾向は十分長く続いているという理由で観測されている傾向を信じる。

マクロトレンド

だがマクロの投資家にはそうしなければならない瞬間があることは理解できる。

例えば以下の記事で説明したように、貨幣価値の下落であるインフレでドル高になるということは、完全に不合理ではあるが、短期的にはこれまで何度も観測されてきたトレンドである。

短期的には金利高が勝るという説明をすることは出来る。しかし何故短期的に市場が不合理になるのかの説明は結局のところ出来ない。

マクロの投資家はある程度事実をそのまま飲み込むしかない。しかも飲み込んだ事実は、次の年には事実ではなくなっているかもしれない。ドラッケンミラー氏は次のように続ける。

1年後にも同じことを信じているとは限らないが、これが今のところのわたしの相場観だ。

金融市場ではルールは常に変わってゆくからである。

結論

だからどんな相場でも使えるような方程式は存在しない。昔は為替市場を貿易収支で予想していたが、今では金利とインフレ率で予想している。

だから投資家は常に新たな状況に適応していかなければならない。これはドラッケンミラー氏の上司であるジョージ・ソロス氏も言っていたことである。

ドラッケンミラー氏は次のように纏める。

投資家は常に革新を続けなければならない。過去の成功の奴隷になってはならない。

過去に米国株が上がり続けたという理由で米国株を買っている人にプレゼントしたい言葉である。

また、ドラッケンミラー氏の理論に従えば、株価が大底まで下落して中央銀行が緩和に転じる時、暗号通貨は過去最大の買い場になるかもしれないということになる。そろそろ株安終了後のことを考え始めるべきだろう。