ドラッケンミラー氏: ハイテク株はまだ買えない、エネルギー株は安い

引き続きジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のSohn Conferenceにおけるインタビューである。

今回は株式市場の各セクターについて語っている部分を紹介しよう。

下落したハイテク株は買いか?

ドラッケンミラー氏と言えば、コロナ株安でAmazon.comなどのハイテク株を買い漁り、その後もしばらく保有していたことで有名である。

また、ドラッケンミラー氏は高成長株が元々好きなようだ。彼はこう述べている。

これまで株式市場でわたしを一番儲けさせてくれたのは高成長株だ。

そしてこのインフレ相場で一番下落しているのがハイテク株などの高成長株である。将来の収益に依存して株価が決まる高成長株は、将来の現金の価値が失われるインフレに弱い。

それでNasdaqは以下のように推移している。

指数で見ても30%下落しているし、個別株で見れば半値以下に落ちたものもある。

これほど安くなったハイテク株は買いなのだろうか? 少し前までハイテク株を好んで買っていたドラッケンミラー氏は次のように語る。

いや、まだだ。世界経済の見通しに悲観的であることが理由でハイテク株はまだ買えない。

仮に個別株として魅力的であっても、この状況で株式を買い持ちにするのは少なくとも簡単ではない。

筆者もハイテク株について次のように書いておいた。

株価収益率などを見ながら「インフレでも米国株は利益を上げているではないか」と考える人は用心した方が良い。下落相場では利益が株価に影響を与えるのではなく、株価が利益に影響を与えるからである。この点は非常に重要であり、単純に株価収益率を見て投資をすることの間違いを明らかにしている。

そしてこの記事の予想通りNasdaqはその後更に下がった。上記の考察を理解できる人は多くないが、ソロス氏の弟子であるドラッケンミラー氏は当然理解している。

また、1980年から始まった金融緩和がインフレのために終わろうとしており、それはつまり40年来の巨大緩和バブルが崩壊することを意味している。

この下落が20%程度で終わるはずがない。

この巨大な下落相場がまだ途中である以上、ここで買いに入るのは良い手ではないだろう。相場全体が落ちきってからでもハイテク株を買うのは遅くないはずである。

一方、ドラッケンミラー氏はそれほど一方的にハイテク株に悲観しているわけでもない。彼は次のようにも述べている。

だが少なくとも、わたしの空売り対象となるにはもう安くなり過ぎたということは言える。

これまで取り上げている通り、ドラッケンミラー氏は年始からの空売りを成功させて空売りを一時休止している。

ドラッケンミラー氏によれば、もっと過大評価されているセクターがあるという。

ハイテク株はコロナ特需で一時的に利益が嵩上げされているということが広く認識されていた。

確かに以前はそうだったかもしれないが、現在の特需銘柄は小売や陸運、海運などだろう。一方、わたしは世界は2年後には世界貿易が流行らない状況になるだろうと予想している。

この世界貿易についての付け足しは興味深い。このことについてドラッケンミラー氏は多くを語ってはいないが、恐らくはNATOと非NATOの対立によって貿易が制裁の対象になり、貿易が滞る状態になるということを言いたいのではないか。

エネルギー株はまだ安い

では、この状況で買える株とは何だろうか。最近の開示では、ドラッケンミラー氏のファミリーオフィスはエネルギー株に投資していた。

彼はこれについて聞かれ、次のように答えている。

まだ投資している。

懸念はある。エネルギー株への投資はコンセンサスになりつつある。6ヶ月前はそうではなかった。

この表現が面白い。人が集まってきた投資は潮時ということである。ドラッケンミラー氏らしいではないか。

だがそれでもエネルギー株の保有を続ける理由を彼は次のように語る。

われわれがまだエネルギー株に投資している理由は、ESGなど誰もが知っている理由で、エネルギー高のこの状況がより持続可能になってきていると考えているからだ。

それはある程度続くだろうし、それが株価に織り込まれているようには見えない。

ESGで原油企業の株高が「持続可能」になるということを当たり前のようにドラッケンミラー氏は語っている。

ESGだかSDGsだか知らないが、愚かな政治的潮流で世界中の電力価格を高騰させるのは止めてほしいものである。リベラルの連中は本当にろくなことをしない。

一方、エネルギー株への投資には懸念もあるという。彼は次のように付け足している。

1年後や2年後のことを考えれば、エネルギー株はまだ安いと思う。だが明らかに、世界規模の恐ろしい景気後退が来るということは懸念事項だ。エネルギーへの需要は崩壊するだろうが、今のところまだそれは視界にない。

インフレ対策の金融引き締めは株価の暴落と景気後退をもたらす。それは避けられない。

そしてそうなれば、これまで好調で来ている原油などのコモディティも無事では済まないだろう。

結論

ここまでがすなわち筆者が1月の時点で予想しておいたことである。

だからコモディティ価格の下落に対応する方法を知りたければこの記事を読めば良い。

だが株価に関する専門家の意見と、世間一般の見方にはまだまだ乖離があるようだ。筆者はいまだに一般の人々から資産運用や投資について聞かれる。

彼らが投資の話などしなくなった時が、買いに転じるべき時である。その時はまだまだ先のようだ。