1974年の物価高騰で株価が暴落した時、ゴールドや原油などはどう動いたか?

インフレと株価暴落が同時に起こっている。金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティ銘柄にとって、物価高騰は価格上昇要因だが、株安は下落要因である。

この状況でコモディティ銘柄がどう動くかが問題となる。そこで、前回の記事では今と同じように中央銀行の金融引き締めで株価が下落した2018年の世界同時株安において、様々なコモディティ銘柄がどう動いたかを検証した。

当時、大体のコモディティ銘柄は株安に従って下落していた。だが2018年の事例は時間的に近く、今の状況と比べやすい一方で、2018年は金融引き締めはあったがインフレはなかったという点で今と異なる。

当時の状況はコモディティ銘柄にとって一方的に不利な状況だった。だが今は株安と同時にインフレが起こっている。

では、インフレと金融引き締めの両方があった事例ではコモディティ銘柄の値動きはどうなのだろうか?

1974年の株価暴落におけるコモディティ

これを考えるためには、時間をかなり遡らなければならない。何故ならば、ここ40年間インフレがなかったからである。

だから今回持ち出すのは、ここの読者には既によく知られた期間、アメリカで物価高騰が起こった1970年代のうち、株価が崩壊した1973年から1974年である。

このようにまずは米国の株価指数S&P 500のチャートを掲載した。ほぼ半値まで落ちたということである。現在の下落相場もこの規模になることが予想されている。

では、当時の状況でコモディティ銘柄はどうなったか? まずは原油から見てみたい。

原油

何故ならば、当時も原油がインフレの中心にあったからである。

当時の原油価格のチャートを見ると、見慣れない形をしていることが分かる。

何故このような形をしているかと言えば、当時の原油価格はOPECが独占的に決定していたからである。

そこで起こったのが、1973年10月の第4次中東戦争である。この戦争はイスラエルとアラブ諸国との戦争で、アラブ諸国はこの間、原油価格を3ドルから11ドルまで引き上げた。

ロシアのウクライナ侵攻が原油価格に影響を与えている今と、似ているようで似ていない。そこが難しいところである。それについては後述する。

次は金相場を見てみよう。

適切な期間のチャートがなかったので以下のチャートで代用するが、これが1970年代における金価格のチャートである。

細かな上下動はあるが、期間を通して10倍以上に暴騰していることが分かる。

そして株安だった1973年から1974年に関して言えばどうだったかと言えば、チャートを見れば分かるが大きく上昇しており、むしろ株安が収まった1975年に調整局面に入っている。

では銀はどうか。銀価格も1973年から1974年を通して上がっている。

後半にはやや失速しているが、期間を通して2倍から3倍に高騰している。

小麦

他にももう1つ、農作物の代表として小麦のチャートを掲載してみよう。

銀と同じく後半に失速しているが、期間を通して見れば大きな値上がりである。

結論

2018年の相場と比べてみてどうだっただろうか。筆者が強調したいことは2つある。

まず1つ目は、2018年には下落していたコモディティが1973年から74年には上昇していることである。インフレはコモディティ価格にプラスの影響をもたらすため、単純に2018年のようになると考えるのは誤りだろう。

一方で、1973年から74年のように株安でもコモディティが上昇すると考えるのも早計だろう。

当時の物価高騰相場は、コモディティ価格高騰が相場を牽引した感が強い。コモディティ価格が上昇したから株価が下がったのである。金融政策が今ほどは相場全体を支配していなかった時代だったということもある。

コモディティ相場は株式市場とは独立に動き、むしろ物価高騰というマイナス要因によって株式市場に影響を与えた。

だが今の市場ではコモディティ銘柄は金融政策で動く側面が強く、市場の値動きもそれを反映しているように見える。

ここから考えられる結論は、やはり前回の記事と同じである。株式の空売りは続ける一方で、インフレが止まらない状況でインフレヘッジであるコモディティの買いを外すことはできないが、買いの規模を縮小した上で、前回の記事で検証したようにゴールドなど2018年でも下落幅の少なかった銘柄に絞るべきだろう。

金融引き締めが株価暴落と景気後退をもたらし、その時に中央銀行が緩和を再開するならば、インフレは第2波に突入し、その時にはコモディティの全力買いを再開するタイミングとなるだろう。

だが今のところは景気後退に賭ける方が分が良さそうである。リフレ派のせいなのだが、株式の空売り以外ではあまり利益の出せない相場となってしまった。