6月のアメリカのインフレ率、遂に9.0%に

アメリカ発の世界的な物価高騰が問題となっている中、注目の最新の消費者物価指数のデータが公表され、6月のアメリカのインフレ率は前年同月比(以下同じ)で9.0%の物価上昇となった。ついに9%台である。

全面高となった消費者物価

まずは何よりインフレ率のチャートを掲載しよう。

ついに9%に到達したわけだが、今回の消費者物価のデータは内訳を見ても全面的な物価高となっている。

いつも通り順番に内訳を見てゆこう。

家主のみなし家賃

まずはアメリカのインフレの大きな部分を占める住宅価格からだろう。以下は住宅保有者が自分の住宅に仮に家賃を払っていたらという仮定に基づいた「家主のみなし家賃」のインフレ率である。

アメリカの住宅市場は、価格の高騰が続いているものの、販売数は減速するという状況が続いている。

つまり、高くなり過ぎて手を出せない人が大勢いるが、それでも価格は下がっていないということである。

その大きな原因はいまだ低い金利だろう。アメリカの長期金利は以下のように推移している。

上がったとはいえ、インフレ率9%に対し金利2.9%であり、つまり差し引きの実質金利はマイナス6%を下回っている。

住宅ローンに3%程度の金利を払うことで2桁パーセントの価格上昇を続ける不動産を買えるならば、誰でもそうするだろう。住宅価格はインフレの一番の砦である。

エネルギー

次はエネルギーであり、これも急角度の上昇を続けている。

エネルギー価格の高騰により電気代やガソリン代などが上がっているのは、世界中誰もが経験していることだろう。

一方、こちらのインフレは住宅価格ほど盤石ではないかもしれない。何故ならば、原油価格は景気後退懸念でやや減速しているからである。

また別に記事を書きたいと思っているが、原油の他にもエネルギー資源や金属、農作物などのコモディティ価格が下落している。

2年前に始まったコモディティ価格の高騰が今年のインフレに影響したように、現在のコモディティ価格の減速は時間差でデフレ側に作用するだろう。

サービス(エネルギー関連除く)

最後にサービスを見てみたい。

サービス業の主なコストは人件費であり、このチャートはつまり賃金インフレと関連している。

そしてマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏は、賃金インフレが収まらない限り、つまりは多くの人々が失業するような状況にならない限り、インフレは収まらないと言っていた。

まだそれは始まっていないということである。

結論

以上、アメリカのインフレ率の現状と、インフレの主な3要素がすべて現状では加速を続けていることを確認した。

3要素のうちエネルギーに関しては今後の減速が予想される。その次に減速してくるのは、恐らくサービスではないか。企業利益はインフレに侵食されており、来年にかけて人員削減が行われるだろう。

しかし景気後退が懸念されればされるほど、長期金利は上がりにくくなり、それは住宅価格の上昇要因になる。だからやはり、住宅価格がインフレの最後の砦なのである。

ということで、現状を纏めるとインフレ要因の一角がほころび始めてきたというところだろうか。しかし他の要素はいまだ健在であり、数ヶ月はインフレ継続だろう。インフレ率は一時的に10%まで行ってもおかしくない。

一方で、インフレに全面的に賭ける状況から、インフレの減速を予想し始める段階に移ったことは確かである。この分だとピークはやはり年末頃だろうか。だが金融市場は、それより前に何らかの形で織り込みを始めるはずである。