景気後退懸念でコモディティ急落、インフレ第1波ピークへの第一歩

アメリカのインフレ率が9%に到達する中、コモディティ市場が急落している。

物価高騰の最中、何故エネルギー資源や金属や農作物などのコモディティが下落するのかと思うかもしれないが、まずそこから説明しよう。

インフレのサイクルとコモディティ価格のサイクル

インフレも、そもそも金融市場を見ている人々にとってはもう2年も前からの話である。ここでは2020年秋にはインフレの火種があったことを報じている。

この記事を見れば、インフレはウクライナ情勢のせいだと言っている人々がいかに間違っているか分かる。インフレはもっと古い話である。ウクライナ情勢は過去に向かって影響を与えられるのだろうか。

だが、実体経済のインフレを金融市場が2年前から先取りしていたように、これから景気後退が来るとすれば、金融市場はその前に先取りを始める。

だからコモディティ急落については事前に警告をしておいた。以下の記事では株安相場でコモディティ価格が下落するということを検証した。

そして特に原油価格についてこう書いておいた。

金融引き締めが強力すぎてインフレから一気にデフレに移行する場合、原油はもともとボラティリティが高いため、原油価格の下げ幅は株式市場の下げ幅を上回る可能性がある。

この記事では年始からのコモディティの買いポジションの縮小を推奨しているが、その後原油価格がどうなったかと言えば、その後急落している。

上記記事で扱っているとうもろこしに至っては、日本時間でまさにその日の夜から滑り落ちている。

小麦はそもそもロシアのウクライナ侵攻で急騰した時に売っているが、それも正解だったようだ。当時の小麦売りのタイミングはほぼ最高値である。

他には金属類も下がっている。銀価格は次のように推移している。

先月末の記事で銀から金に逃げたが、金は下げ幅で言えばまだましである。

結論

ということで、景気後退懸念でコモディティ価格が急落している。

だが、コモディティ価格の天井は春頃であり、これまでも下落していた。では何故先月末にいきなり筆者が騒ぎ始めたのかと言えば、筆者のポジションが以下の記事で提唱したように、株式の空売りとコモディティの買いを組み合わせたものだったからである。

これまではコモディティ価格が下がっていても、株価がそれ以上に下がっていれば筆者にとって利益となっていた。

だが、先月末からのコモディティの下げの問題点は、株価が同じように下がっていないということである。米国株のチャートを掲載しよう。

その理由は、景気後退懸念で長期金利が上がらなくなったからである。金利上昇が止まったことが株価を下支えしている。

結論

状況が変わればポートフォリオも変わるべきである。よってこういう気配を察したのでダッシュで逃げたということである。

そういう脱出をしなければならない時、しばしばそれは1日の差であったり、数時間の差であったりする。だが今回は何とか記事に間に合っている。

投資家は少しでも他の投資家よりも早く状況に気づけた場合、利益を得られたり、損失を免れたりする。相場は正しいかどうかではない。他の投資家より正しいかどうかなのである。

コモディティに関しては、景気後退が避けられない以上、当分はこのような動きが続くだろう。

しかしいつかコモディティを再び買う時が来る。インフレには第2波があるからである。その時までゆっくり待ちたい。インフレのサイクルと、コモディティ価格のサイクルはズレるのである。