ついに景気後退入りした第2四半期アメリカGDP、通年の景気後退もほぼ確定か

7月28日に2022年4-6月期のアメリカGDP統計が発表され、実質GDP成長率は前年同期比(以下特筆しなければ同様)で1.6%となったが、前期比年率では-0.9%のマイナス成長となり、第1四半期と合わせて2期連続のマイナス成長となったため、定義上景気後退ということになった。つまりアメリカ経済は縮小している。

景気後退

まずは実質GDPのグラフ(成長率ではなくそのままの数字である)を見てみよう。

2021年第4四半期を頂点としてそこから2度下がっていることが分かる。一般的な定義ではこれが景気後退の定義である。

一方で、2022年全体で景気後退になるかという問いについては、要するに2022年の第4四半期が2021年の第4四半期より高い数字になるかどうかということである。

つまり上のグラフで言えば、頂点から2度下がった後、第3四半期と第4四半期の2回で頂点以上のところまで急上昇しなければならないということになる。インフレがますます酷くなっているこの状況で、それは恐らく難しいだろう。つまり2022年は高確率で景気後退ということになりそうだ。

好調な消費の功罪

しかしアメリカ経済の実情を知るためには、やはりいつも通りGDPデータの内訳を見てゆく必要があるだろう。

まず個人消費は何とか加速を続けている。実質個人消費は2.1%の成長となり、前回の1.9%からやや加速した。

消費はGDPの要素の中では比較的好調のようだ。だがそれを良いこととして捉えるべきかどうかは微妙である。何故ならば、物価が高騰する中で消費が好調であるということは、物価がこれ以上上がる前に買い溜めしようというアメリカ国民の決死の状況を暗示するからである。

買い溜めをするということは、当然ながら来年以降の消費を今年に回すということであり、それは今後の景気後退の深さを示唆するということになる。

債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は、コロナ後の好景気は消費を前借りしたものだと言っていたが、どうやらその前借りはまだ続いている。そしてそれは景気後退の深さというダメージとして後で返ってくる。

減速する投資

次は投資だが、これが今回の減速要因である。実質投資は8.7%の成長となり、前回の11.6%から減速した。

原因として真っ先に浮かぶのは、金利上昇だろう。企業などの投資は融資を受けて行われることが多く、借り入れの金利が上昇すれば投資意欲が減退する。アメリカの長期金利は以下のように推移している。

金利は確かに上がっているのだが、投資の急減速はアメリカ経済が金利上昇にかなり敏感であるという事実を示しているだろう。

金利上昇による投資の減速は、まさに中央銀行の金融引き締めの目的でもある。そうしなければインフレが収まらないからである。

だがインフレがまだ収まっていないにもかかわらず、投資の減速はかなり急である。このまま行くと、インフレが収まる前に景気は急降下し、かなり酷いスタグフレーションになるのではないか。今回の投資のデータはそれを示唆してくれる。

身動きが取れない政府支出

次は政府支出である。実質政府支出・投資は-1.6%のマイナス成長となり、前回の-1.7%からほぼ横ばいである。

横ばいと言ってもマイナス成長が続いているのでグラフとしては急降下している。2020年と2021年にばら撒き過ぎたので、もうばら撒けないということである。

しかしこの状況は、むしろバイデン政権がここに来て比較的まともであるということが言えるかもしれない。公平性のためにそれは言っておくべきだろう。

あるいはアメリカ国民がまともだということかもしれない。ここでばら撒けばインフレを悪化させたと国民から批判されるからバイデン氏はばら撒けない。

一方で日本ではインフレ下のばら撒きという狂気的政策に誰も異を唱えないので、ガソリン給付金を含め日本政府はばら撒き続けている。日本人は馬鹿なのである。申し訳ないがインフレに関してそれ以上に言い様がない。

輸出入

最後に輸出入のデータを見よう。少し興味深いのだが、赤字幅が底なしに拡大していたアメリカの貿易赤字がやや縮小した。実質輸出入のチャートは次のようになっている。

実質輸出入は実質輸出から実質輸入を引いたものだから、状況をより分析するために実質輸出と実質輸入のチャートを見てみると次のようになる。

これを見ると、輸出の伸びが輸入の伸びを上回っていることが分かる。

ドル高の状況下では輸出が抑制されて輸入が増えるはずなので、これはやや意外な結果だが、内訳を見るとエネルギー資源関連の輸出が増えていることなどが影響しているようだ。

ロシアの代わりに原油などの輸出を増やしたものと思われる。ロシア制裁で沈みゆくヨーロッパ経済とインフレに苦しむ西側国民を尻目に、アメリカのエネルギー産業はそこから儲けているということである。

ウクライナ情勢に関して完全に自滅している日本やヨーロッパよりは、実利的でまともな国際戦略と言うべきだろう。

結論

以上、正式に景気後退となったアメリカ経済の様子をお伝えしたが、インフレ統計と比べるとその差が明らかである。

つまり、止まらないインフレと急減速する実体経済というスタグフレーション的な傾向がはっきりとしてきた。年始の予想通りということである。

また、今回の件で興味深いのはドル円が急落していることだろうか。

ちなみにユーロドルはそれほど動いていないので、これはドル安ではなく円高である。またこれについても記事を書きたいと思っている。