マイナード氏: 米国株は下落する前に上昇へ

急減速した10月のインフレデータを受けて米国株が急上昇しているが、Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏がCNBCのインタビューで株式市場の先行きについて語っているので紹介したい。

選挙結果の株価への影響

まずはマイナード氏は11月8日に行われたアメリカ中間選挙の結果に言及している。選挙結果はジョージア州の上院選挙が12月6日の決選投票に持ち越されたこともあり、4日経った今も結果は出ていないが、概ね下院では共和党が過半数を取る見込みで、上院の方は難しいと見られている。

いずれにせよ下院を野党共和党が抑えたことでバイデン政権は自分の政策を通すことが難しくなった。中間選挙では与党が負けることが多いため、これは典型的な結果ではあるのだが、マイナード氏はこの結果が市場にとってプラスだと見ている。

マイナード氏は次のように説明している。

分断された議会は株式市場にとって良い結果だ。

政府は財政支出に動きにくくなる。減税も公共事業も大して行えないだろう。結果として実体経済はより冷却され、Fed(連邦準備制度)が行わなければならない利上げの量が減るだろう。

マイナード氏はバイデン政権が自分の票田へのばら撒きを出来なくなるので金融引き締めの量も減ると主張している。その上で株高を予想している。彼はこう続ける。

統計的には、中間選挙後の6ヶ月では、Fedが利上げをしている場合でさえも8%〜15%程度の株価上昇が期待できる。

事実、その後株価は上がっている。S&P 500のチャートは次のようになっている。このインタビューはここ2日の株価上昇の前に行われたものである。

実際には、選挙後に株価は一度下がったが、その後のCPI統計でインフレ減速が明らかになり株価は上がった。

株高の理由は選挙よりもインフレ率だが、ラリー・サマーズ氏などが利上げ強行を支持する一方で、マイナード氏はこれまでFedの金融引き締めは過剰だと主張してきた1人であるから、その点においては彼の勝利だと言っても良いだろう。

株価の長期見通し

しかし短期的には株価に強気なマイナード氏だが、長期的にはそうではないらしい。彼は次のように述べている。

問題は来年が景気後退になるかどうかだが、景気後退になる場合、中間選挙の後に景気後退になった年の株式のリターンはネガティブになる。

アメリカ経済が金融引き締めで傷んでいるという相場観は、著名投資家の中では全員が一致している。

それが株安に繋がるかという問題は必ずしも同じではないが、マイナード氏は株式市場は一時的な反発の後、下落トレンドに戻ると見ているようだ。彼は次のように続けている。

S&P 500は下落に転じる前に4,100まで上がると思う。だがいずれにせよ株式市場はまだ長期の弱気相場の中にある。下落トレンドはまだ強固に存在している。

現在の上昇は弱気相場中の一時的な反発に過ぎない。

とはいえ株価が反発していることは事実である。

現在の株価反発に対して筆者がどうしたかと言えば、筆者はインフレ率の減速を予想した上で10月の初めにゴールドの買いを開始した。

この記事では次のように書いておいた。

金融引き締めへの過度な悲観が和らげば、株価にとってプラスになる可能性はある。だが中期的には8月に述べた通り企業利益の減少を織り込んで行かざるを得ない。

一方、金価格は引き締めのピーク超えを織り込んだとしても、企業利益の減少を織り込むことはない。よって今後半年ほどは、ゴールドに対するプラス要素が株価に対するプラス要素を上回るだろう(あるいは少なくとも、短期的に株価の反発があっても空売りの含み益減少を軽減してくれるだろう)という目論見である。

そしてその後事実そうなったということである。金価格はインフレ減速を受けて次のように推移している。

結論

短期的な株高を予想していたのであれば、株式の空売りを一時的にでも撤回する選択肢があったのではないかと言われるかもしれない。事実、今年の夏には7月の初めに空売りを利益確定した後、8月の半ばに空売りを再開した。

このトレードは結果的には最高の短期トレードとなった。米国株のチャートを再掲しよう。

だが短期トレードの成功率は中期トレードの成功率に比べて低いものである。筆者はマクロの投資家なので、毎回毎回Renaissance Technologiesの真似事をやるわけには行かない。

短期的な美味しい所取りの成功に一喜一憂せずに、しっかり腰を据えて長期トレンドに賭けるべきだろう。それで今回は株の空売りの短期的な利益縮小をゴールドの買いでカバーする方針で行ったということである。

では株式市場の長期的なゴールとは何処だろうか。マイナード氏は次のように述べている。

Fedは自覚しているよりもタカ派の状況にあると思う。マネーサプライは世界恐慌以来の未曾有の減少を見せている。

株価の反発後の下落については、S&P 500は最終的に3,300近辺まで行くか、より低くなれば3,000まで下がるだろう。

S&P 500の長期チャートは次のようになっている。

米国株の最終的な底値については更に不吉な予想を立てている専門家もいるが、おおよその相場観は皆それほど違っているようには見えない。

何故そうなるのかについては、8月の記事に既に書いておいたのでそちらを参考にしてもらうのが良いだろう。