サマーズ氏: 世界人口の半分以上が国連総会でロシア非難を拒否したことを覚えておくべき

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がロシアのウクライナ侵攻と、それを取り巻く東西の対立についてBloombergのインタビューで語っている。

ロシアのウクライナ侵攻

まずサマーズ氏はロシアのウクライナ侵攻を非難し次のように述べている。

ロシアのしたことは世界の良心に大きなショックを与え、非常に多くの国に影響が及んだ。これからどうなるかを注視しなければならない。

ここまでは政治的な立ち位置にかかわらず同意できる箇所だろう。ちなみにアメリカでは与党民主党がウクライナへの関与を支持しており、野党共和党は消極的である。サマーズ氏は民主党を支持している。

だがサマーズ氏のウクライナ情勢に対する見方は、他の民主党支持者とは少し違うようだ。彼は次のように述べている。

だが国連総会における最初の投票で世界人口の半分以上に相当する国々が、ロシアを非難する決議への参加を拒否し、ロシアの側に立って棄権したことを覚えておくべきだ。

日本を含む西側のメディアを見ているとあたかも「世界」がロシアを非難しているようだが、日本や西側にとって「世界」とは日本とアメリカとヨーロッパのことである。それは世界全体ではないのに、何故それを世界と呼ぶのか。要するに自分の意見が皆の意見だから自分の意見を通せと言いたいのである。

それが西側の「民主主義」なるものの正体でもある。だがサマーズ氏が指摘する通り、実は世界の半分以上はこの西側の論理に同意していない。

世界の半分以上が西側に同意しない理由

何故世界人口の半分以上がロシア非難決議に加わらなかったのか。

ウクライナ情勢はどういうものか。

西側から見れば、ロシアが「突如」ウクライナを侵攻し始め、正義のアメリカとヨーロッパが可愛そうなウクライナを支援して悪者ロシアを退治しようとしている。

しかし同じものを非西側から見れば、西側諸国がベルリンの壁崩壊以来、その壁を30年以上東側に向けて動かし続け、東側に向けて軍事勢力を拡大し続けた結果、それがついにロシア国境にぶつかったのである。

もしロシアが西側に勢力を拡大した結果が現状ならば、戦争はロシア国境のウクライナではなくヨーロッパのもっと西で起こっていなければおかしいだろう。しかし東西の勢力はロシア国境でぶつかっている。西側のメディアを通さない目から見て、軍事的に勢力拡大を続けてきたのはどちらに見えるか。

だが西側のメディアの偏向報道に頭をやられた人々はそれに気付くことはないし、マイダン革命やブダペスト覚書などあまりに多くの紆余曲折があった後に始まったロシアのウクライナ侵攻が「突如」起きたように見えるのは、単に自分たちがウクライナ情勢について何も知らされていないからだということにさえ気付かない。

何故人々は自分の頭で考えず、少し考えれば分かるようなメディアの偏向報道に騙されるのか。メディアに乗せられてロシアを憎んでいる人々は、もし第2次世界大戦の時に生きていたならば、まったく同じ理由で鬼畜米英と叫んでいただろう。

彼らには意見がない。そしてこういう連中こそが戦争が起きる直接原因なのである。

結論

だが経済学界で最高の頭脳であるサマーズ氏は、ウクライナへのアメリカの介入を推し進める民主党の支持者でありながら、こうした西側のバイアスから逃れようとしている。彼は次のように言っている。

われわれアメリカ人は、自分で自分を見る優しい見方で他の人々が自分を見てくれると楽観してしまうふしがある。

だが西側の目から見た西側の正義感あふれる姿は、非西側の国々から見るとかなり歪んでいる。アメリカは北朝鮮を非難しているが、筆者から見れば朝鮮半島を半分に割って朝鮮人同士に殺し合いをさせた張本人が何を言っているのだろうと笑ってしまう。

そしてロシアとウクライナでも同じことが起きている。姉妹国が殺し合わなければならなかった経緯を、日本人はもっと調べてみるべきだろう。

アメリカでは共和党支持者はそれに気付き始めている。民主党支持者でもサマーズ氏のような良識人は公平な見方をしている。

これからウクライナ情勢は、バイアスのかかった目では予想できない方向に進んでゆくだろう。メディアの作ったまぼろしも徐々に晴れてきたのである。