ガンドラック氏: アメリカの政策金利は5%以上にはならない

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がTwitterでアメリカの利上げについて語っている。

政策金利とインフレ率

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)はもう1年ほども急激な利上げを続けており、ゼロだった金利は4.25%まで上がってきている。

この利上げが何処まで行くのか、政策金利は何処まで上がるのかということが話題になっており、Fed自身は5%以上まで利上げをすると言っているが、インフレ率が急落する中、何人かの著名投資家がそれに懐疑的な目を送っている。

2022年終盤のインフレ率急減速予想を的中させたガンドラック氏以外の債券投資家であるスコット・マイナード氏は、利上げについて次のように言っていた。

5%まで行くかもしれないが、そこに長く留まるとは思えない。

2人の債券投資家は債券市場において長期金利が下がっていたことを理由にインフレ率は下がり、金利は上がらないと主張していた。ガンドラック氏は昨年9月にこう言っていた。

債券市場と経済学者のコンセンサスとが意見を違えるとき、債券市場の方が正しい。そして債券市場は金利は上限に達したと言っている。

そして実際にインフレ率は鈍化した。

政策金利は何処まで上がるのか

インフレ率は鈍化したものの、Fedの方は手を緩めようとしていない。彼らは依然として5%以上に政策金利を上げようとしている。

このことについてガンドラック氏はどう思っているのか。彼は次のようにツイートしている。

米国債のイールドカーブで金利が一番高いのは6ヶ月物の4.8%だ。Fedが5%まで利上げすることは有り得ない。

まずは米国債のイールドカーブ(債券の金利を期間の順に並べたもの)を見てみよう。すべて並べると次のようになっている。

  • 1ヶ月物: 4.42%
  • 2ヶ月物: 4.62%
  • 3ヶ月物: 4.72%
  • 4ヶ月物: 4.82%
  • 6ヶ月物: 4.84%
  • 1年物: 4.73%
  • 2年物: 4.20%
  • 3年物: 3.90%
  • 5年物: 3.66%
  • 7年物: 3.61%
  • 10年物: 3.54%
  • 20年物: 3.84%
  • 30年物: 3.67%

ガンドラック氏の言う通り、一番金利が高いのは6ヶ月物の4.84%であり、長期のものは短期のものより下がっている。金利は下がると債券市場は予想しているのである。

市場の織り込みとFedの自己申告

債券市場はまたもやFedの自己申告を信じていないようだ。ガンドラック氏の予想はシンプルであり、Fedと債券市場が意見を違えるとき、債券市場が正しいというものである。

ガンドラック氏は次のように続けている。

Fedが金利を決めてるんじゃない。

債券市場が金利を決めているんだ。

思い出されるのは、アメリカでインフレ率が急上昇していた2021年である。パウエル議長はインフレは一時的だとして利上げを否定していた一方で、債券市場では利上げが不可避だという予想から金利が上がっていた。

ガンドラック氏はパウエル氏の予想を根拠のない希望的観測だと批判していた。

当然のことだが、結局債券市場の方が正しかった。リーマンショックの時(あるいはもっと前)からそうだが、Fedの予想が正しかったためしがない。マイナード氏などは次のように言っていた。

エビデンスに基づけば、Fedの予想は常に間違っていると言える。

そしてBloombergのコメンテーターに「もっとオブラードに包んでくれ」と突っ込まれていた。

パウエル議長自身もそれに懲りている。だから彼はもはや市場の織り込みに反することがない。ただ債券市場の事前の織り込みに従って政策金利を決めているだけであり、次の会合で利上げ幅が0.25%になるのは、パウエル氏がそう決めたからではなく、市場でそう織り込まれているからである。

この状況を見てガンドラック氏は以前次のように言っていた。

はっきり言ってFedがある意味が分からない。Fedは2年物国債の金利で代替可能なのではないか?

だがこれは何も新しい意見ではない。何十年も前に20世紀最高の経済学者(何度も言うがそれは絶対にケインズ氏ではない)が主張していたことである。

中央銀行家が経済を何も予測できないにもかかわらず、彼らが金利を決めているのは何故か。それについては以下の記事で説明している。何故日銀の黒田氏は、国民がインフレで苦しむ中でインフレ政策を最近まで続けていたのか。

だが正しい意見は決して主流派にはならない。政府や中央銀行の人間が経済について何も理解していないという単なる事実に、人々は良い加減気付いてはどうか。