アメリカ経済は確実に減速している、2022年4QアメリカGDP

さて、今週発表された2022年第4四半期アメリカGDP統計である。物価高騰でアメリカ国民が苦しんでいる中、アメリカの実質経済成長率はGDP1.0%(前年同期比、以下同じ)となり、前回1.9%から減速した。

アメリカ経済は着実に減速

大手メディアでは前期比年率の2.9%という数字が独り歩きしているためGDPの数字が良かったように報じられているが、第3四半期(7月から9月)と第4四半期(10月から12月)を比べる前期比年率は、季節の違いを恣意的な計算で調整しているため、筆者は2021年と2022年の第4四半期同士を比べる前年同期比の数字の方を信頼している。

さて、まずはいつも通り全体のチャートから見てゆこう。今回の数字が1.0%となった実質GDP成長率のチャートは次のようになっている。

物価高騰で中央銀行が金利を大幅に引き上げるなかでアメリカ経済は着実に減速してはいるが、金利がゼロから4%まで引き揚げられた中でまだプラス成長となっていることは素直に褒めてよく、経済学者ラリー・サマーズ氏などもそのことを指摘している。

だがやはり今後のGDPの動向を予想するためにはGDPの内訳を見てゆきたい。

緩やかに減速する消費

まずは個人消費だが、実質個人消費は1.9%の成長となり、前回2.1%からやや減速した。チャートは次のようになっている。

全体の数字と同じく着実に減速してはいるが、まだ底堅い。以下の記事でも解説したが、これは恐らくアメリカの消費者がクレジットカードの融資枠を使って買い物をしているためだと想定している。ジェフリー・ガンドラック氏は次のように述べていた。

2022年には食料品とガソリンのために消費者は借り入れ額を増やした。「人々はクレジットカードを大胆に使うことにためらいがない、これは将来にとって良い兆しだ」などというのは単純に馬鹿げている。人々は好んでそうしているわけではない。そうせざるを得ないだけだ。

だがそれでも個人消費はもっている。問題は、それが持続するかどうかである。

マイナス成長の投資

一方で、今回一番駄目なのは、前回第3四半期と同様に投資である。実質国内総投資は-4.6%のマイナス成長となり、前回の1.9%から急降下した。

設備投資は明らかに借り入れの金利に影響されるため、金利上昇の影響を真っ先に受ける項目である。アメリカの長期金利は次のように推移している。

増加した政府支出

さて、今回アメリカ経済を景気後退から救った要素が何かと言えば、政府支出である。実質政府支出・投資は0.9%の成長で、前期の-0.3%からかなり改善した。

以下の記事で述べた通り2020年と2021年の莫大な政府支出が世界的なインフレを引き起こした原因なのだが、アメリカ政府は今回再び政府支出を増やしている。

だがインフレをもう一度引き起こすほどの支出増加はもう出来ない。また、日本において既にそうなっているように、債務の増加は将来の増税となって長期的にはGDPを冷やしこむ。日本ほど詰んではいないが、アメリカも似たような状況に置かれている。

失速した純輸出

さて、最後は輸出入である。実質純輸出は-5.0%で、前回の0.1%からマイナス成長に転落した。

ちなみに純輸出は輸出から輸入を差し引いたものだが、輸出と輸入を並べると次のようになっている。

前回上向きになっていた輸出が減速に転じている。

以下の記事で説明したように、前期の輸出は対ロシア制裁でロシア産エネルギーの禁輸を日本やヨーロッパに強制する一方で、アメリカ自身がこれらの国にエネルギーを売ることでかなりの底上げがなされていた。

だが原油価格が下落していることにより、今回はその効果も薄れていると筆者は予想していたが、やはりそうなったようだ。原油価格のチャートは次のように推移している。

原油価格が急騰でもしない限りは、輸出は当分GDPのドライバーにはならないだろう。

結論

ということで、アメリカのGDPはクレジットカード残高の増加と政府の借金によって1.0%の成長を達成した。

これからどうなるか。クレジットカードの融資は、金利が上がっている状態では増えにくいだろう。2023年の個人消費には期待できない。

一方でアメリカは去年11月の中間選挙によってバイデン大統領の与党民主党は下院の過半数を失っており、支持率回復のための財政支出法案はもう通らない可能性が高い。

アメリカ経済に関してはサマーズ氏が警戒しながらも強気、ガンドラック氏が確信をもって弱気となっている。

筆者は上記の理由により、やはり2023年のアメリカGDPは景気後退入りするだろうと予想している。

だがアメリカ経済が予想よりも強いのは確かであり、その意味で株の空売りよりも金利低下とドル下落に賭けた今年のトレードはやはり正しかったのではないかと考えている。

読者はどう見るだろうか。引き続きアメリカ経済の動向をフォローしてゆく。