2月FOMC会合結果の市場予想と今後の利上げ予想

さて、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間2月1日に金融政策決定会合のFOMC会合の結果を発表する。日本時間では2月2日未明となる。

1年間続いてきたアメリカの利上げがクライマックスに差し掛かっているわけだが、この会合でFedは何を決定するのか、会合前に纏めておこう。

利上げはどうなるか

まず1つ目の論点はこの会合で利上げがされるかどうかだが、以下の記事を書いた1週間前の時点では、金利先物市場は今回の会合における利上げを次のように予想していた。

  • 0.25%利上げ: 62%
  • 利上げなし: 38%

恐らく多くの投資家の感覚よりも利上げがない可能性を多く織り込んでおり、驚いた人も多かったのではないかと思う。

それが1週間ほど経った今は次のようになっている。

  • 0.50%利上げ: 3%
  • 0.25%利上げ: 97%

0.25%利上げでほぼ確定となったが、今度は0.50%利上げの可能性を織り込んでおり、1週間の間に多少急な展開ではないか。

だがやはり利上げは0.25%だろう。そして今回の会合での利上げ幅よりも重要なのは、次の会合以降の利上げがどうなるかである。

アメリカの利上げ動向

アメリカのインフレ率が急落する前からインフレ率の急落を予想していたジェフリー・ガンドラック氏は今でも金利低下トレンドを支持しており、利上げはこの会合が最後だと予想している。

そうでない場合は株価が急落するという条件付きではあるが。

ガンドラック氏がインフレ率の推移を的中させたのは、債券市場がそう予想していたからである。彼は債券投資家らしく債券市場が正しいと読んだのである。

その債券市場は今どう考えているか。今後の政策金利を織り込んで上下する2年物国債の金利は次のように推移している。

政策金利は今回利上げされると4.5%になる。2年物国債の金利はまさに4.5%近辺まで上がってから4.2%まで落ちてきている。

債券市場を信じるならば利上げはやはり今回で最後だろう。パウエル議長は5%以上に利上げをすると言い続けているが、市場はまったく信じていない。

絶対に実現しないFedの言い分

会合前にFedの自己申告をもう一度精査してみよう。彼らはこれから政策金利を5%に上げ、しかもその位置に一定期間保ち続けると主張している。

ガンドラック氏も指摘していたが、まず米国債のイールドカーブ(金利を期間順に並べたもの)のどの部分も5%以上になっておらず、債券市場は政策金利が5%以上になるとは信じていない。

だが筆者の意見では、「5%まで上げる」部分よりももっと重要なのは「その位置に保ち続ける」のところである。そしてそれは絶対に無理なのである。

何故か。悲しくも投資家に信じられていないパウエル議長の他の発言に、「痛みを伴ってもインフレ退治をやり切る」というものがある。専門家はほとんど全員が景気後退後の緩和転換、そしてインフレ再来を予想している。

だが考えてもらいたいのだが、パウエル氏がインフレ退治をやり切ろうとも、彼が途中で緩和に転換しようとも、どちらにしても彼は利下げをやることになる。

何故ならば、1970年代のインフレ退治をやり切ったポール・ボルカー議長の時代でさえも、政策金利はインフレがピークを迎えると下がったからである。当時のインフレ率と政策金利のチャートを並べてみよう。

金利はこのようにインフレ率が下がるにつれて下がっている。当たり前である。経済に影響を与えるのは政策金利の数字そのものではなく、そこからインフレ率を差し引いた実質金利の方だからである。

だからこのチャートを見ると、政策金利とインフレ率の差(つまり実質金利)はある程度一定に保たれていることが分かる。

もうお分かりだろう。ボルカー議長がやったインフレ退治とは、実質金利をある程度高い水準に留めることであって、その場合当然ながら政策金利そのものはインフレ率が下がれば下がることになる。

そしてパウエル議長はアメリカの中央銀行のトップでありながら実質金利と名目金利を間違えている。名目金利をインフレの頂点と同じ水準でとどめ続ければ、それはボルカー氏さえもやったことのない未曾有の金融引き締めになってしまう。だが彼は中央銀行の議長を務めながらそれに気付いていない。

結論

パウエル議長は遅かれ早かれこの致命的な誤りを訂正することになるだろう。つまり、政策金利は彼がどう言おうが下がる(Fedは利下げする)のである。

ちなみに前にも言ったがプライベート・エクイティ出身のパウエル議長はマクロ経済学を専門にしたことがなく、完全な素人である。それだけならまだましだったのだが、名目金利と実質金利の違いさえも分からないらしい。

アベノミクスから就任している日銀の何とかいう総裁もそうだが、何故金利という経済の根幹をこういう素人たちが素人考えで勝手に操作しているのか。

緩和が強すぎたり引き締めが強すぎたりしてインフレやデフレが起こって当然である。何故誰も分からないのか。

ガンドラック氏の言うように、政策金利を廃止して2年物国債の金利で置き換えれば良いのである。まともな反論があるだろうか。