ソロス vs イスラエル: イェルサレム・ポストがジョージ・ソロス氏の政治活動を痛烈批判

著名投資家ジョージ・ソロス氏の主宰するオープンソサエティ財団のメールがハッキングにより流出したようであり、そのメールの内容についてイスラエル最大の英字新聞イェルサレム・ポストがコメント(原文英語)している。ユダヤ系のソロス氏がイスラエルの新聞に批判される面白い展開になっているので紹介したい。

メールが暴くソロス氏の真の政治的目標

流出したメールではソロス氏がヨーロッパで移民政策を推進する政治家に資金援助した様子などが暴露され、左派贔屓のいつものソロス氏の政治活動が明るみに出ている。しかしそこにある政治団体の名前がお馴染みのものだからと言って、その膨大なメールの森が全体として示唆するものを見逃してはならないとイェルサレム・ポストは言う。

リークされた情報のほとんどは驚くに値しない。ソロス氏がアメリカ及び世界で極左団体に莫大な資金供給をしていることはもう10年以上ものあいだ周知の事実だ。しかし多くが既知の事実だからと言ってリークされた情報の重要性を見逃すのであれば、あなたは正に「木を見て森を見ず」ということわざの指し示す状況に陥っているのだ。

イェルサレム・ポストはソロス氏が具体的にどういう団体に資金援助をしているかという個別の情報よりも、それを総体として見ることが重要であると言う。ソロス氏が支援した多くの政治団体は一見ばらばらに見えるが、その本質には共通点があるのだという。

例えば地球温暖化に関する団体とイスラエルへのアフリカ系不法移民とはどう繋がっているのか? 「Occupy Wall Street」(ウォール街を占拠せよ)運動はギリシャにおける移民政策とどう関係があるのか? しかし実際にはソロス氏の支援する団体はすべて共通の基本的価値観を持っているのだ。

それらの団体はすべて、西洋の国家や地域がそれぞれ固有の法や価値観を維持する能力を弱めるものだ。それらの団体はすべて、経済的、政治的、科学的な自由を阻害するものだ。そしてそうした阻害活動は民主主義、人権、人種差別反対、男女差別反対などの名のもとに行われる。

言い換えれば、そうした団体の目的は西洋国家の主権を弱体化させ、それぞれの政府が秩序を守れなくなり、それぞれの民族が固有のアイデンティティや価値観を維持できなくなるようにすることなのだ。

要するにグローバリズムである。グローバリズムと言えば聞こえはいいが、しかし大抵の聞こえの良い政治的なフレーズがそうであるように、グローバリズムには恐らく世界最大の偽善と利権、そして事実の歪曲が篭められている。

アメリカの黒人団体

イェルサレム・ポストはアメリカの黒人団体を例として取り上げる。

例えばここ1年ほどで65万ドルをソロス氏の団体から受け取ったアメリカの政治団体Black Lives Matter(BLM; 黒人の命は重要だ)は古典的な例だろう。

確かに黒人の命は重要である。それの何が悪いのか? 何も知らない人々であればそう思うだろう。しかしこうした政治的潮流は往々にして行き過ぎるのである。イェルサレム・ポストはアメリカにおける黒人と警察の対立を以下のように描写する。

今ではアフリカ系アメリカ人のコミュニティへの法の執行そのものが人種差別だと非難されるようになっている。BLMの活動はアメリカのいくつかの都市で起きた黒人による警察官の殺害を扇動したとして非難されているが、彼らの活動はアメリカの警察に対して主に2つの結果をもたらした。

先ず第一に、警察官は自分の職務に対する自信を失い、都市の安全を犯罪者から守ろうと努力した結果、人々から自分自身が犯罪者呼ばわりされるようになった。

第二に、警察官は実力行使が必要となるような状況においても実力行使を行いたがらないようになった。一つには犯罪として起訴される可能性を恐れてのことであり、もう一つには人々からレイシストと呼ばれ非難されることを恐れ、警察官は本来行動しなければならないような時に行動しないことを選ぶようになったのだ。警察官をそのように萎縮させた結果は暴力犯罪の急激な増加に結びつくことだろう。

男女同権も人種差別反対もそうだが、この手の政治活動には理念としては正しいはずのものが実行において極度に歪められ、あるいは個人のイデオロギーに利用され、不必要な利権や不当な逆差別をもたらしているものが多い。

ヨーロッパの移民政策の裏にソロス氏の資金あり

シリア難民の救命を建前としてヨーロッパに多数の経済移民(シリア人ですらない)を呼び寄せ、現地に殺人と強姦をもたらした移民政策は最たるものである。

イェルサレム・ポストはこの点にも言及する。

次に挙げられるのはソロス氏の不法移民を促進する活動である。ソロス氏はアメリカ、ヨーロッパ、イスラエルを含む世界各地で各国のアイデンティティを破壊する手段として移民の増加を支援した。

流出したメールでは、ソロス氏がヨーロッパの選挙に干渉し、中東からの移民に対してオープンな国境政策を支持する政治家を当選させ、また移民に対して同情的な報道をするジャーナリストに対し経済的な支援を行った様子が描写されている。

こうした国境撤廃の政治的潮流は究極的には国家の廃止に結びつく。イェルサレム・ポストは次のように指摘している。

もしギリシャが自己のアイデンティティを守るためにシリアからの何百万もの移民に対し国境を管理するのが人種差別だというのであれば、ギリシャが、あるいはフランス、ドイツ、ハンガリー、スウェーデン、米国、ポーランドなどの国々がそもそも存在すること自体が人種差別だということになってしまう。

イスラエルにおけるソロス氏

そしてユダヤ系であるソロス氏は、実はイスラエルの右派と政治的に対立している。ソロス氏のイスラエルにおける政治活動について、イェルサレム・ポストは以下のように報じている。

ソロス氏はイスラエルにおいても、エジプトとの国境から来るアフリカ系の不法移民の流入を止めようとする政府の努力に反対している。(中略)ソロス氏の支援する団体はイスラエル社会のあらゆる側面をレイシストで不当なものとして貶めようとしている。パレスチナ人はソロス氏による攻撃の中心的役割を果たしており、ソロス氏は彼らの存在をイスラエルが人種差別的な国家である証拠だとしているのだ。

当たり前のことだが、ユダヤ人とは一枚岩ではないのだ。イスラエルに住むイスラエル人、ユダヤ系アメリカ人、イギリスのユダヤ人、ヨーロッパ大陸のユダヤ人など様々であり、それぞれに政治的な利害がある。更に同じグループでも個人がそれぞれ独自の政治的見解を持っており、それぞれがそれぞれの資金で可能な範囲で政治活動をしている。したがって一部の人々が信じているように、何か巨大な陰謀組織が誰か一人の意志によって動いているわけではない。

安心してほしいのだが、あなたの猫はイルミナティではない(これはドナルド・トランプ氏のユダヤ系の娘婿が使っていたフレーズであり、結構気に入っている)。しかし日本人や中国人やアメリカ人と同じように、それぞれの地域のユダヤ系の人々がそれぞれの利害を持っており、自分たちの能力の枠内で個別に政治活動をしているのである。よく言われるユダヤ人陰謀論などはそうした本質をむしろ見失わせるものとなる。

ソロス氏の政治活動の本質

話をソロス氏に戻そう。イェルサレム・ポストによれば、ソロス氏は必ずしも親イスラエルではない。

ソロス氏は左翼団体、アラブ系イスラエル人団体、パレスチナ人団体などを資金援助している。こうした団体は人々に向かって、イスラエルには自らを守る権利などなく、非ユダヤ系の市民に対して何ら法の行使をしてはならないのだと主張するのである。

ソロス氏の目的は「オープンソサエティ」(開かれた社会)なのであり、イスラエル人の望みであるイスラエル国の維持とは異なる。そしてソロス氏はその目的のための自分の膨大な資金を惜しみなく注ぎ込んでいる。そしてソロス氏も、実際に生きる人々よりも自分の政治的イデオロギーを大切にする人々の一人である。

黒人団体、メルケル氏の移民政策、そしてイスラエルにおける多民族化までに至るソロス氏の活動とは、現地に混乱を作り出し、現地の当局を麻痺させて、自身の社会を守る能力を失わせるか、あるいは彼らには自分の安全保障を守る権利などないのだと思い込ませることにあるのである。

日本人のうちどれだけ多くが、あなたがたの見解を曲げさせるためにどれほど膨大な資金が使われており、マスコミというものがどれほど操作されているのかを理解しているだろうか? ここまで言えば、何も知らずにイギリスのEU離脱を馬鹿にしていた一部の日本人にもその重要な意味が分かるのではないか。各国の安全保障がこうした政治活動によってどれだけ故意に脅かされているのか、そして世界各国がどれほどの瀬戸際にあるのかを日本人は理解していない。

途方もない資金が供給された膨大な政治的プレッシャーにもかかわらず、賢明なイギリス人はこうした政治的悪意から早々と抜け出した。一方アメリカではこうした政治的洗脳がより浸透しているため、そこから抜け出すためにはドナルド・トランプ氏のような劇薬が必要となっているのである。

また、トランプ氏についてはイェルサレム・ポストは興味深いコメントをしている。

多くの意味で、ドナルド・トランプ氏の政治活動はクリントン氏などではなく、ソロス氏の活動に対する直接の反発である。

いまやイギリス人も、アメリカ人も、そしてイスラエル人もこうした政治的潮流の悪意に気付きつつある。かつてソロス氏の資金が供給されたこのような政治的感傷主義に距離を置くグループの先頭に立っていたはずの日本はいまや周回遅れである。安倍首相がシリア難民を受け入れる意向を示したのは、イギリスやアメリカが移民政策の欺瞞に気付き始めていた正にその頃であった。

本当に日本人というものはどれほどに国際政治で後手に回れば気が済むのだろうか? 彼らには海外情勢というものが一切分かっていない。安倍首相は戦犯である。お陰で日本は第二次世界大戦でドイツと組んだ時と同じレベルの失敗を移民政策において繰り返そうとしている。日本という国は本当に外交で外れくじを引くのが好きな国である。もう好きにすれば良いのだ。その因果は必ず日本そのものに返ってくるだろう。