トランプ氏の経済顧問: 利上げは経済成長の証拠で素晴らしいこと

恐らくはこれを先に書くべきだったのだろうが、ドナルド・トランプ次期大統領の経済顧問デイヴィッド・マルパス氏による金融政策および利上げについてのコメントを紹介したい。2017年からのアメリカの金利がどうなるかを気にしている投資家にとっては重要な情報だろう。

共和党ロナルド・レーガン大統領やジョージ・H・W・ブッシュ大統領のもとでも働いていたマルパス氏は金融政策について高金利を好むタカ派である。レーガノミクスの時代における高金利については1987年のブラックマンデーについて解説した記事で触れている。

さて、Reuters(原文英語)の伝えるところによると、マルパス氏はアメリカの実質的な中央銀行であるFed(連邦準備制度)の低金利政策について以下のように語っている。

われわれはFedへの依存から離れ、より即効性のある別の政策を議論すべきだ。

マルパス氏はトランプ氏の経済顧問となる前から低金利政策に批判的であった。例えば2013年にWSJに寄稿した記事(原文英語、PDF)で以下のように述べている。

Fedの低金利政策と国債買い入れ(訳注:量的緩和)は金融市場を毀損し、預金者の資金繰りを悪化させ、政府の財政を改善させるために(訳注:賃金上昇という形で)雇用者に負担を強いたものである。このようなゼロサムの状況は雇用と経済成長に悪影響を及ぼすため停止すべきものである。

その後3年が経過しているが、マルパス氏はその意見を変えていないようである。Reutersの記事では以下のように彼の発言を伝えている。

Fedは独立した機関だ。しかし問題は、そのパフォーマンスがこれまで決して良いものではないということだ。経済成長はあまりに遅い。だから疑問は、彼らがこれを反省し、低成長の問題のうち彼らに責任のある部分をしっかり見つめるのかということだ。

ではFedの責任とは一体何か? マルパス氏によれば、それは低金利を保ちすぎたことである。思い出されるのは著名債券投資家のビル・グロス氏のマイナス金利批判だろう。金融業界でも債券投資家には低金利に批判的な論者が多い。

マルパス氏はトランプ次期大統領と同様、金融政策の詳細について言及することを避けながらも、以下のように言っている。

Fedについては今日議論すべき問題ではないと思う。彼らは彼らの仕事をしている。それは経済指標次第であり、経済成長の度合いを見ながら12月の利上げを決めるだろう。すべての証拠がアメリカ経済の加速を物語っており、それはアメリカにとって素晴らしいことだ。

つまりこれまで出ている情報を総合すると、トランプ政権は国債の大量発行と利上げによって長期金利を大幅に上昇させる政策を主張していることになり、金融市場もこれまでそのように反応している。これはわたしが前回の記事で主張したこと、つまりトランプ大統領の経済政策には量的緩和が必要となる可能性があるという仮説とは正反対なのである。

こうした文脈を踏まえれば、前回の記事におけるわたしの主張がかなりアグレッシブなものであることが分かる。しかし、それでもわたしの仮説には一定の理屈が通っているはずである。トランプ氏の経済政策をすべて達成するためには、金利が高ければ非常に都合が悪いはずなのである。

次期大統領は最終的に何を選択するのだろうか? 上記はマルパス氏の発言であり、トランプ氏自身の発言ではない。そしてトランプ氏自身は金融政策について沈黙を保っている。トランプ大統領の経済政策については今後も報じてゆく。