原油安はいつまで続くのか? 原油安をトレードする5つの方法

原油安に関する詳細な記事を書こうと考えていたら、ロイターにほとんど同じ内容の記事が載ったので、詳細はそちらに譲り、原油安に関する要点と、そして投資家はどのようにトレードすべきかについて書きたいと思う。

記事にもある通り、底値がいくらかという問題はさておき、原油安がどれくらい続くのかという問題は予測が比較的容易である。サウジアラビアがシェールオイル産業の一掃に本気である限り、その目的が達成されるまでは減産を行うことはないだろう。したがって、米国のシェール産業が実際に深刻なダメージを受けるまで、原油価格が反発する可能性は低い。

アメリカの新興の原油採掘企業が操業停止またはデフォルトに追い込まれるまでには、ある程度の時間がかかる。早くとも半年か、恐らくは1年を見ておくのが妥当だろう。その間、原油価格はシェールオイルの損益分岐点である60ドル付近を下回るよう方向付けられると予測される。

投資家はこういった局面にはどういう戦略を取るべきか? 原油先物やロシアルーブルの空売りなど、一番の旬が過ぎた投資は除外して、現実的なトレード戦略を下記に列挙した。先ずは原油先物のオプションの売りである。

原油先物のコール・オプションの売り

証券価格がある期間一定の高値で抑えられると予測するときに有効な投資方法は、コール・オプションの売りである。シェールオイルがらみの戦略であるため、英国のブレントではなく米国のWTI原油先物で、極力60ドルに近い価格で売りを行うことができれば、上記のシナリオが実現するときに利益を上げることができる。原油安にかぎらず、底値や高値が不明であり、レンジのみが明確である場合にはオプションの売りを考えたい。

石油会社の買い

下落している石油会社の株を直接買うという戦略は、Exxon Mobil (NYSE:XOM、Google Finance)など優良な企業がかなりの安値まで落ちてきた場合にのみ可能だろう。現在の価格では1年近い原油価格の低迷はまだ織り込まれていない。

また、米国のシェールオイル産業で、高い原油価格を当てにして高利回り債を発行し、設備投資を行った企業などは避けなければならない。原油安で真っ先に淘汰される対象だからである。

ロシア株の買い

原油安と西側諸国の経済制裁によってロシア株は既にかなりの安値に落ち込んでいて、魅力ある企業も多いが、こちらは石油会社以上に銘柄の選別が必要である。ルーブルの急落はロシア企業のドル建ての債務を肥大させ、高利回り債の利回り上昇(債券価格下落)を招いている。財政の危うい中小企業などはデフォルトの懸念もあるだろう。また、輸入物価の上昇が個人消費にどれだけ悪影響を及ぼすかということも不透明である。

しかし、幾つかの企業がかなり割安な水準まで売り込まれていることも確かである。輸出株などはルーブル安の恩恵を受け非常に魅力的である。ロシア株について言えるのは、厳選した買いは推奨できるが、急ぐことはないということである。プーチン大統領自身が述べている通り、ロシアが原油安からの経済停滞から復活するまでには数年かかる。原油の先行きから考えて、一番の買い場は、早くとも2015年の半ば以降ということになるだろう。

航空株の買い

これはやや旬が過ぎてしまったが、再度株価が落ちてくる可能性を考えてここに挙げておく。原油安が直接のコスト削減となる航空株のなかでも、通貨・経済の見通しが比較的強い米国と英国の航空会社は狙い目で、米国では格安航空会社のJetBlue (NASDAQ:JBLU、Google Finance)、イギリスでは以前少し紹介したEasyJet (LSE:EZJ)などが有望である。現在でも株価はリーズナブルな水準だが、10-20%ほど株価が落ちてくる局面があれば、買いを入れたいところである。

欧州不動産株の買い

原油安による更なる追加緩和を暗に否定した日銀とは違い、ECB(欧州中央銀行)は直近のインフレ指標に敏感に注目しており、原油安による短期的なインフレ率の下落はECBに量的緩和を決断させる要因となるだろう。そうなれば真っ先に恩恵を受けるのは不動産株である。原油安への日銀の反応については下記の記事を参照。

銘柄については、何度も言及しているように、既に高値のドイツ不動産株ではなく、パリのGecina (EURONEXT:GFC)などである。Gecinaは下記の記事で買い場と書いた€100以下の水準から回復し、現在€106前後で推移している。

原油安に限らず、あるトレンドをトレードする方法は、単純にその銘柄の買いと売りだけではない。そのトレンドが時系列順にどのように波及してゆくのかを考えることで、更なる利益の追求が可能である。原油安についてはサウジアラビアの動向を逐次確認しながら、上記の戦略を着々と進めたい。