ジョージ・ソロス氏、膨大な損失を出した米国株空売りから遂に撤退

著名ヘッジファンドマネージャー、ジョージ・ソロス氏のソロス・ファンド・マネジメントが、昨年以来損失を出し続けていた米国株の空売りから撤退した。

ソロス氏のトランプ相場空売り

ソロス氏はトランプ氏がアメリカの大統領に選出されて以来、一貫して米国株を空売りしてきた。ソロス氏のこの姿勢は2016年11月の大統領選挙の頃から一貫している。そしてトランプ相場における米国株も一貫して上昇してきたため、ソロス氏は大統領選挙直後の時点で既に損失を出していた。

しかしソロス氏はその後も空売りを撤退するどころか売り増しを行い、米国株は下落するとの姿勢をより強固なものとしていた。

しかしその後も米国株は上昇し続けた。そして11月14日に公開された開示情報で、ソロス・ファンド・マネジメントが9月末の時点でこれらの空売りポジションの大半を精算していたことが明らかになった。ソロス氏は遂に撤退したのである。ソロス氏が米国株空売りを開始した2016年11月以来、9月末までで、米国株は20%近く上昇している。

米国株は9月以降更なる上昇を見せているので、少なくとも撤退の判断は正しかったと言える。しかしその判断は遅すぎた。そもそも、かなり早い段階からその判断が間違っていることをわたしは指摘していた。

ヒラリー・クリントン氏を支持する金融関係者はアメリカ大統領選挙前に「トランプ氏勝利なら市場暴落」と根拠のない話を吹聴してきたが、ソロス氏はその政治的プロパガンダを本当に信じて空売りを仕掛け、そして踏み上げられたらしい。

トランプ相場をより理性的な視点で見ていた世界最大のヘッジファンド運用者レイ・ダリオ氏は、同じ時期にトランプ相場で株高は論理的だと指摘していた。

トランプ政権は基本的に既知の政策を行おうとしているだけだ。彼らは税率を変えると言っており、市場はそれを織り込もうとしているのだから、その動きは論理的だ。

しかし百戦錬磨のファンドマネージャーであるはずのソロス氏は、こうした理性的な分析を無視して、トランプ政権への個人的嫌悪と理性的な投資判断を混同したのである。

今後のソロス氏の投資戦略は?

では、ソロス氏の新たなポートフォリオはどうなっているのか? 公開された9月末のポートフォリオには、精算された米国株空売りに代わる主要なポジションは見受けられない。先ずは損失を出したポジションを精算し、投資戦略を白紙に戻したのだろう。

しかし、以前からの主要ポジションの中で、まだ残っているものが数少ないが存在する。それは皮肉にも、Liberty Broadband (NASDAQ:LBRDA)などのトランプ銘柄の米国個別株である。

ソロス氏が応援していたヒラリー・クリントン氏は敗れ、トランプ相場空売りで巨額の損失を出し、そして利益が出たのは彼の嫌うトランプ政権の恩恵を受ける銘柄という、ソロス氏にとってはかなり皮肉な1年となった。投資家としては、ソロス氏の復活に期待したいものである。今後もソロス氏のポートフォリオをフォローしてゆく。