世界最大のヘッジファンドの2018年株式市場上昇予想「現金保有は馬鹿を見る」

世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterを率いるレイ・ダリオ氏が、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で2018年の株式市場の見通しを語っている。

「現金保有は馬鹿を見る」

少なくない著名投資家が既に大きく上昇した株式市場に警戒を示すなかで、驚くべきことにダリオ氏は株式と実体経済の両方に非常に強気である。

これから語ることはアメリカについてだが、世界全体についても同じようなものだろう。2008年の金融危機後、積み上がった債務は上手く減少し、実体経済は成長しており、しかもインフレ懸念は問題になっていない。すべてが上手く行っており、今や減税による緩和さえある。

アメリカ経済が好調であることには疑問の余地はない。以下の記事では最新の経済統計を使ってアメリカの景気を説明したが、もうすぐGDPの発表もある。そちらも報じるつもりである。

しかし、ダリオ氏は既にかなり上昇した株式市場がここから更に上がるという。理由は以下の通りである。

あらゆる場所に現金が積み上がっている。投資家の現金だけではなく、銀行や企業も大量の現金を抱えている。だから市場はこれから大量の現金に溺れることになる。それは強力な緩和となり、市場は恐らく吹き上がることになるだろう。言葉を変えれば、現金をそのまま保有している投資家は馬鹿を見ることになる。

相当に強い表現から考えれば、彼は自分の予想にかなりの自信があるようである。

金融引き締めは影響するのか?

しかし、投資家であれば誰もが気にしているのが、進行しているFed(連邦準備制度)による利上げとバランスシート縮小である。金融引き締めは株式市場にとって問題ではないのだろうか? ダリオ氏は次のように述べている。

Fedはどう反応するだろう? あるいは、他の中央銀行はどう反応するだろう? 的確な金融政策を実現するのは非常に難しい。それが失敗した時にこそ景気後退が起こる。

そして2018年はとりわけ難しい。金利はいまだゼロに近く、ほんの少しの利上げが、金利に影響されるすべての資産クラスの弱気相場を起こしてしまうからだ。

株式市場の上昇を予想したダリオ氏だが、利上げについてはかなり警戒しているようである。

問題は、実際の利上げが現在債券市場が織り込んでいるよりも急激なものになるかどうかだ。市場の織り込みよりも少しでも上げ幅が大きくなれば、それはすべての資産価格に影響を与えることになる。債券や株式だけではなく、不動産や非公開株などすべての資産だ。

株式市場のリターンは預金よりも良かったので、例えば平均的な企業の株式保有額は以前に比べて2倍から2.5倍になっている。彼らの決断は正しかったのだが、結果として企業の業績が金利に対してより敏感になった。また、債務も金融危機時に比べて減少したとはいえ、まだまだ多い。このように、現在の経済は前例がないほど金利に敏感になっているのだ。

現在の市場は金利に非常に敏感で、金利が現時点から1.00%か1.25%でも上がれば市場は崩壊するだろう。

一度の利上げは基本的に0.25%の上昇幅なので、1.00%か1.25%というのは、4度か5度の利上げということになる。その結果どうなるかと言えば、わたしが短期国債の金利を見て「利上げの限界」と呼んだ領域にちょうど一致することになる。わたしは以前から2.00%から2.25%ほどの領域が政策金利の限界だと主張しているが、ダリオ氏もやはりそう考えているらしい。

因みにFedは今年4度の利上げを行うと自己申告している。金利先物市場は3度か、そうでなければ2度の利上げを織り込んでいる。つまり、ダリオ氏は、Fedが市場の織り込み以上の利上げを自己申告通り行えば、すべての市場が下落する可能性が高いと言っているのである。

結論

つまりはどういうことか? とりあえずは利上げがまだ深刻な問題とはならない2018年前半は株価は上昇するが、後半になってもまだFedが利上げを強行するようであれば全てが怪しくなるということだろうか。そうであれば、トーンだけ見ればより慎重だった債券投資家のガントラック氏と似たような予想ということになる。

また、ダリオ氏は株式市場は上がると言っているものの、前回分の機関投資家のポートフォリオ開示では米国株ではなく新興国株に投資していた。

今回の発言は米国株に鞍替えしたということなのだろうか? あるいは新興国株への投資を続けているのだろうか? 12月末時点でのポートフォリオの開示が数週間後にあるので、そちらもいつも通り報じるつもりである。