株式市場と長期金利が急落、原因はイタリアではなく金融引き締め

もう去年からこういう相場になると言い続けているのだが、実際にそうなるまではなかなか理解されないものである。

さて、2月に世界同時株安を引き起こした原因であるところのアメリカの長期金利が面白い動きをしている。米国株も急落しているが、日本株や欧州株、新興国株などがそれよりも数日前から下落を始めているのは読者もご存知の通りだろう。

長期金利が暴落

先ずは長期金利の動きから見てみたい。

かなりの急落である。債券の金利低下は価格上昇ということになるので、米国債に資金が流れ込んだことになる。他の市場から資金が流出して、米国債に流入したのである。

同じ日には米国市場が急落している。

しかし他の株式市場は数日前から下落を始めている。例えば日本株である。

中国株も同じような動きになっている。市場全体から資金が引き揚げられるときにはリスクの高い市場から下落してゆくからである。米国株は通常最後となり、それは前回の記事で説明した通りである。中国株のチャートは次のようになっている。

こうして見ると、米国債への資金流入は米国株だけではなく、世界の株式市場からの資金流出に関連しているようである。また、理由は異なるが米国債と同じように円も買われており、ドル円もこうした動きに連動して下落している。

ドル円がこういう状況で下落する理由については前回の記事で説明してあるので、そちらを参考にしてもらいたい。

因みにドル円の下落はこの記事を書いた次の日に始まっている。

こうした状況はイタリアの政治不安が理由ではない。イタリアでは国民ではなく政治家によって選ばれた(象徴的で権限のあまりない)大統領が、選挙で勝った右派政党の選んだ反EUの経済相の承認を拒否し、右派政党は組閣に失敗したが、イタリアでは再選挙が行われ同じ政党が勝利するだろう。あるいは、国民の選んだわけでもない既存勢力派の大統領の権限を弱める方法を与党が見つけるかもしれない。

いずれにせよ、こうしたニュースでイタリア国債が売られるのは理解ができ、米国債の上昇がやや激しいのはイタリアからの資金流入分が追加されたからだが、それは米国株や日本株が下落する理由にはならない。下落相場は色々な短期的な口実を見つけながら下落してゆくものであり、本当の原因はマスコミが指摘する原因ではなく、別の所にあるのが普通である。

本当の原因

では何が起こっているのか? ここの読者には今更だが、何が起こっているかと言えば金融引き締めである。利上げもそうだが、アメリカのFed(連邦準備制度)が量的緩和の巻き戻しでバランスシート縮小を行い、量的緩和と同じ速度で市場から資金を吸い上げている。

2008年以降の上げ相場に慣れてしまった金融市場は、下落はないと高をくくり、金融引き締めの影響を事前に織り込むことを拒否したため、Fedが毎月吸い上げる一定の資金の量に応じて世界の金融市場から徐々に資金が流出しているだけのことである。ここでは去年からそうなると言い続けている。

因みに上記のチャートでトレード出来そうな部分はと言えば、米国債である。はっきり言うが、この程度の株式市場の下落でアメリカの金融引き締めが止まることはない。2.7%台の長期金利は低すぎると言うべきだろう。

筆者ならばこの状況でオプションを売る。金利がこれ以上下がらなければ(つまり債券価格がこれ以上上がらなければ)利益の出る取引である。ボラティリティの高い状況ではオプション価格は高くなるので、高値で売れるというわけである。

こうした市場からの資金流出状況については去年より想定していた通りなので、あまりコメントはないが、引き続き世界市場の状況をフォローしてゆく。