世界市場の下落相場を見て日経平均の先行きを予想する

ここでは何度も伝えている通り、2018年の市場では一番最初に新興国市場が暴落した。アメリカが利上げと量的引き締めという強力な金融政策を実行し、グローバル市場から資金を大量に引き揚げているため、一番リスクの高い新興国市場から資金が流出しているのである。

そしてその下落相場は着実に進行している。先進国の市場だけを見ている投資家には実感できないかもしれないが、例えば中国株の下落は何も解決していない。

年始から20%程度の下げである。

また、アメリカの利上げと経済制裁の両方に見舞われたトルコリラの暴落も、何も変わっていない。以下はドルリラのチャートで、上方向がドル高リラ安である。

リラについては以下の記事で取り上げている。

しかし、状況は何も変わっていないにもかかわらず、市場は悪いニュースに慣れてゆく。これこそが天井相場の特徴なのである。何度でも引用するが、著名投資家ジョージ・ソロス氏が著書『ソロスの錬金術』で述べている言葉を思い出したい。

強気相場は小爆発にときおり見舞われながら続いていく。そうしているうちに、だれも小爆発を恐れなくなる。このときこそ、大暴落の条件が整ったときなのである。

そしてその投資家の楽観を象徴するのが、米国株のチャートである。

いまだ市場最高値近辺で推移している。中国株と比べればその好調ぶりは明らかだろう。

次に下落する市場

さて、投資家にとっての問題は、では次に下落する市場は何かということである。アメリカの中央銀行はこのまま資金を吸い上げ続ける。アメリカのGDPの好調ぶりを考えれば、少なくとも半年は引き締めが続くだろうと以下の記事に書いた通りである。

新興国市場から資金が引き揚げられた後、資金の吸い上げが止まらなければ、次の市場が餌食となる以外に選択肢はない。そして新興国の次に下落する市場が何かと言えば、アメリカ以外の先進国ということになる。グローバル市場にとって「亜流」の市場から順番に下落してゆくからである。米国株は一番最後である。

実際に、日経平均のチャートを見ると、新興国ほど下落はしていないが、アメリカほど好調でもないことが分かる。

このチャートだけ見ている日本の個人投資家の中には、まだ落ちない、大丈夫だと考えている人も多いのではないか。しかし、日本市場も日経平均以外はもうかなり下落しているのである。指数だけが釣り上げられて耐えている状態である。以下の記事でJASDAQ市場などの小型株の状況を説明している。

そして、筆者の予想を裏付けるチャートを更に掲載したい。それは何かと言えば、欧州株である。

下落トレンドに入った欧州株

新興国の次は、アメリカ以外の先進国だと上に書いた。ということは、日本の他にもヨーロッパが候補に入るはずである。では、ヨーロッパ市場はどうなっているのか? 経済規模でユーロ圏最大のドイツの株価指数DAX30のチャートを掲載したい。

日経平均より状況が悪いのが見て取れる。

また、ドイツほど経済の強くない南欧諸国はより状況が悪い。以下はイタリアの株価指数FTSE MIBのチャートである。

結論

米国株はまだ上昇トレンドにある。新興国は既に下落した。次は米国以外の先進国だが、日経平均以外の日本株だけではなく、欧州株も既に下落トレンドとなっている。

日経平均や日本の個別株だけを見ていては分からないかもしれないが、こうして世界市場を見渡してみると、日経平均が辛うじて持ちこたえているのが砂上の楼閣に過ぎないことが理解してもらえるだろう。

因みに筆者は、以下の記事で宣言した通り、日経平均の空売りを22700円から23000円の間で開始している。現状でこのポジションは含み益となっている。

また、ドル円に関してはそれよりも以前から空売りを開始し、こちらも含み益となっている。

ただ、短期的な値動きに一喜一憂するつもりはなく、アメリカによる世界市場の資金引き揚げ相場に淡々と賭けてゆくつもりである。今後の展開を楽しみにしたい。

新版 ソロスの錬金術