著名ファンドマネージャーらが12月FOMC会合の利上げの危険性を警告

2018年10月から始まった世界同時株安が継続している中、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間12月19日にFOMC会合において今年4度目の利上げを決定する可能性が高いと予想されている。

その直前となった今、複数の著名ファンドマネージャーが相次いで12月利上げの危険性について警告を発しているので紹介したい。

ジェフリー・ガントラック氏

先ずは2018年の市場下落予想を的中させたジェフリー・ガントラック氏である。ガントラック氏は2018年の相場の流れを的確に予想していた。

さて、そのガントラック氏が12月FOMC会合においてFedは利上げをしてはならないと言っている。CNBC(原文英語)などが伝えている。

Fedは今週利上げをすべきではないと思う。債券市場は「Fedよ、利上げを続けてはならない」と言っている。2年物、3年物、5年物の米国債利回りを見れば、全て2.7%で横並びになっている。

ガントラック氏の言及した短期金利は、基本的には今後の政策金利がどうなるかを示したものである。その短期金利は具体的には次のようになっている。

  • 1年物米国債: 2.66%
  • 2年物米国債: 2.70%
  • 3年物米国債: 2.68%
  • 5年物米国債: 2.69%

通常、金利は期間が長いほど高くなるのだが、今や2年物国債の金利は3年物や5年物より高くなっている。これを逆イールドと言い、景気後退の前兆とされている。

より政策金利に即した観点から言えば、債券市場は近い将来Fedが利下げをしなければならない状況に追い込まれることを予想しているのである。Fedが利下げに追い込まれる状況とは、例えば株価の暴落である。

債券投資家であるガントラック氏はこれを凶兆として利上げを一旦止めるべきだと言う。しかし、ガントラック氏は利上げが問題の本質だとは考えていない。彼は次のように言っている。

しかし、問題はFedが利上げしてはならないことではない。問題は金利をこれほど長い間低く保つべきではなかったということだ。

問題は、ヨーロッパで今も行われているマイナス金利など導入すべきではなかったということだ。そして量的緩和など行うべきではなかったということだ。量的緩和はねずみ講だ。

量的緩和はねずみ講だとガントラック氏は遂に言ってしまった。その通りなのである。経済のパイは無限ではないのに、紙幣は無限に刷ることが出来るので、人々は無限に資金を使えると錯覚する。量的緩和はねずみ講なのである。

個人的に非常に面白いのは、暗号通貨をねずみ講だと言って切り捨てる金融業界の人々が、政府発行の通貨や量的緩和は肯定することである。どちらも同じことなのである。暗号通貨も量的緩和もねずみ講である。通貨とはそういうものである。

違いがあるとすれば、資金の流れがどうなるかということである。わたしが2月に予想した通り、ビットコインからは既に資金が流出している。ガントラック氏はビットコインが株価の先行指標だと言っている。

政府発行の通貨の問題も同じことではあるが、結末は暗号通貨とは異なるかもしれない。そしてその結末の1つは、この世界同時株安かもしれないと個人的には考えている。

スタンレー・ドラッケンミラー氏

さて、12月利上げの危険性を警告するもう1人のファンドマネージャーは、ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用して有名になったスタンレー・ドラッケンミラー氏である。CNBC(原文英語)によれば、ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

中央銀行は利上げと量的引き締めという二重の攻勢を一時停止すべきだ。

米国経済は2019年も強いパフォーマンスを維持することが出来るだろうが、Fedやその他の政府機関の政策上の重大な誤りを許容することは出来ないだろう。経済や市場の最近の動向を考えれば、Fedは金融引き締めを少なくとも一時的に停止するべきだ。

ドラッケンミラー氏も最近の市場の動向を懸念している。しかし、ここの読者は覚えているだろうが、ドラッケンミラー氏は本来、金融緩和批判の急先鋒なのである。彼は以前次のように述べていた。

一体どれだけのゾンビ企業が緩和マネーによって延命され続けているのか、実際のところは誰にも分かったものではない。あらゆる個人が永遠に上昇すると思われている資産価格にとめどない量の資金を注ぎ込んでいる。個人だけではなく、政府も同じである。金融政策が既に正常化されていたならば、これほどの財政赤字は生まれていなかっただろう。

そのドラッケンミラー氏さえも利上げを停止して金利を低く抑えるべきだと主張しているのだから、世界同時株安の状況は緊迫していると言うべきだろう。米国株のチャートは次のようになっている。

利上げを批判するもう1人の著名人

さて、最後にここ数日で利上げ批判を表明したもう1人の著名人に言及しておきたい。それはトランプ大統領である。

信じられないことだが、ドルは非常に強く、インフレの危険も存在せず、パリの騒乱や中国の問題もあるにもかかわらず、Fedはまた利上げをしようとしている。

トランプ大統領は以前より利上げを批判している。これは筆者の見解によれば、この状況下の金融引き締めが株価暴落に繋がることを知っているからであり、そうなったとしても責任を逃れられるように予防線を張っているのである。これも以前書いた通りである。

さて、多くの人々が利上げの危険性を警告しているが、Fedのパウエル議長はどうするのだろうか? 因みに金利先物市場は68.9%の確率で利上げが行われると予想している。確率は高いが、絶対ではないというところだろう。

利上げが停止された場合に株価がどうなるかということは、前々回の記事で説明した通りである。

Fedの決断はどうなるだろうか。パウエル議長の判断を見守りたい。