ECB、新型コロナウィルスで量的緩和を拡大もドイツ株暴落

ドイツ時間3月12日、ECB(欧州中央銀行)は政策決定会合を開催し、債券を市場から買い入れる量的緩和の年末までの規模を1,200億ユーロ追加すると発表した。新型コロナウィルス肺炎がヨーロッパ中に広まっていることで景気後退が懸念されているためである。感染者が1万5,000人を超えているイタリアは国土全体を封鎖しており、スペイン、フランス、ドイツでも同じ規模の流行が懸念されている。

追加緩和の規模と効果

投資家としてはまず量的緩和を査定していきたいところだろう。年末までに1,200億ユーロという追加緩和が大きいか小さいかだが、昨年9月に開始されたECBの量的緩和は年間2,400億ユーロの規模であり、年額の50%を上乗せしたことになる。

ECBの量的緩和については規模拡大の余地が少し残されていると書いてきたが、その余地が狭まったわけである。その代償を払って市場の下落を止めることができたかと言えば、止めることができなかった。以下はドイツの株価指数DAXのチャートである。

ちなみにその後に続いて行われた米国市場も大幅下落となった。

わざわざパウエル議長が不必要な緊急利下げによって新型コロナウィルス肺炎に金融緩和は効かないと証明してくれたにもかかわらず何故こうなるのかは分からないが、兎に角追加緩和が行われたということである。

そして次は日銀が同じ穴に落ちようとしている。コメディか何かなのだろうか。

浪費される追加緩和余地

繰り返しになるが、株式市場は上昇もすれば下落もするものであり、悪材料がある場合にはその分きっちり下落しなければ経済に歪みができてしまうものなのである。政治家がいくら永遠に上昇する株価を求めようとも、株式市場を完全に国有化しない限り無理なのである。

ということで、今回の下落相場の底は中央銀行の動きでは決まらず、新型コロナウィルス肺炎の流行状況がすべてを決める。レイ・ダリオ氏の一ヶ月以上前のコメントをもう一度掲載しておく。

一般的にはこうした一生に一度のレベルの災害はまず最初に過小評価され、そして状況が進むにつれて過大評価される。そしていずれファンダメンタルズが逆回転し始める(例えばウィルス感染が拡大から縮小になる)。

だから注意を向けなければならないのは何が実際に起っているのか、人々が何を信じていて何が資産価格に織り込まれているのか、そして状況の反転を示唆する指標である。

つまり中央銀行の動向は気にせずウィルスの流行状況を見ておけば良いのである。そして流行状況のピークがいつか、つまり株価の底はいつかという問題については以下の記事を参考にしてほしい。

2018年の世界同時株安の時もそうだったが、ここでは市場の動きをすべて事前に書いているので、事が起こった後には以前の記事を繰り返すだけになってしまう。

新型コロナウィルス肺炎についても下がって上がる相場だとずっと書いてきたはずである。ただ、そうなるためにはパウエル議長がパニックになって緩和余地を使い果たしてしまわないということが条件となる。さもなければ別の大きなバブルが崩壊に近づいてしまうだろう。

18日には運命のFOMC会合が控えている。楽しみに待っていたい。