ジム・ロジャーズ氏: 新型コロナ株安はまだ終わっていない

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを創業したジム・ロジャーズ氏が新型コロナウィルスによる下落相場はまだ終わっていないと主張している。下落予想もそうだが、それよりも面白い観点もあったのでここで紹介したい。

新型コロナ株安

2月以来、株式市場は新型コロナウィルスによる都市封鎖の影響で暴落してきたが、3月末からその下げ幅の半分程度を取り戻そうとしている。

その背景にはアメリカとヨーロッパにおける流行状況の改善がある。イタリアでは既に流行はピークを超えている。

しかしロジャーズ氏は株安はまだ終わっていないという。彼はBarron’sのインタビューで次のように述べている。

市場にとって最悪の瞬間はまだ来ていない。経済へのダメージは世界どこでも深刻だ。経済は深刻な景気後退に陥る。まだ終わっていない。

さて、どうなるだろうか。株価がもう一度下落すると予想している投資家には他に債券投資家のガンドラック氏がいる。ガンドラック氏は新型コロナ相場を空売りして儲けたそうだが、彼の予想はもう一度当たるだろうか。

ドル上昇予想

ロジャーズ氏は他にドルの上昇予想をしている。

下落相場になると人々は安全資産を求める。ドルは安全資産ではない。アメリカは莫大な負債を負っている。しかし多くの人がそれを安全資産だと思い込んでいる。だからドルを保有している。ドルは上がり、バブルになるだろう。

ドルが安全資産としてバブルになるというのは前回紹介したレイ・ダリオ氏の観点に似ている。ダリオ氏によるとドルは準備通貨としてバブルの状況にあり、それはいずれ崩壊するという。

また、テクニカルな話で言えば新型コロナによる金利高によってアメリカ国外の多くの事業者が借金を借り換えられなくなり、ドル建ての借金返済を余儀なくされていることがドルを押し上げている。

個人的には現在ドルをトレードしておらず、ドルの値動きは上に書いた意味で新型コロナ相場で借金の行方がどうなっているかを測るためにモニターしている。ドルが上がりすぎればクレジット市場が不調だということである。

金と銀と砂糖

しかしロジャーズ氏のインタビューで一番面白かったのは次の部分である。

金と銀も保有している。あとは砂糖だ。砂糖は史上最高値から75%か80%も下落している。何があっても人が砂糖を使うのを止めることはないだろう。投資機会は何処にでも転がっているのである。

この状況で砂糖というのはロジャーズ氏ならではの推奨だろう。ちなみに日本の個人投資家には馴染みがないかもしれないが、砂糖先物は実際にトレードできるのである。チャートは次のようになっている。

新型コロナで人が砂糖を使わなくなることはないというのは事実だろう。砂糖の買いは面白いかもしれない。

ヘリコプターマネーと砂糖

しかし個人的にはもう少し別の意味で注目している。アメリカが無制限の量的緩和を行い、アメリカと日本がヘリコプターマネーを行おうとしている中、インフレになるのかデフレになるのかということである。

ヘリコプターマネーによって人々が実際にお金を使い始めたらどうなるだろうか。お金を使い始めるというのは、つまりは現物資産と紙幣を交換するということである。膨大な負債で支えられた現在の世界経済で人々が紙幣とものを交換しようとするとき、人々は紙幣が保証するほどにはものが存在していないことに気付くことになる。「現金がゴミ」になる瞬間である。

その瞬間はいつかは来るのだが、これまでは来なかった。しかしヘリコプターマネーがそれを引き起こす可能性は考えておかなければならない。

人々が実はものが足りないのだと気付くとき、投資家はどうすべきだろうか。実際に高騰するのは生活にどうしても必要になるもの、つまり砂糖などの農作物なのではないだろうか。

それが砂糖かどうかはまだ分からないが、ダリオ氏が最近考えていることは恐らくそういうことなのである。