世界最大のヘッジファンド、株高で米国株を一部利益確定

引き続き、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はレイ・ダリオ氏の保有する世界最大のヘッジファンドBridgewaterのポートフォリオを紹介する。

ダリオ氏のポートフォリオ

レイ・ダリオ氏は、主に高配当株を保有するという方針は変えないものの、長らくポジション総額を減らす方向で動いてきた。Form 13Fに報告されているポジションの総額は以下のように推移している。

  • 2022年3月末: 248億ドル
  • 2022年6月末: 236億ドル
  • 2022年9月末: 198億ドル
  • 2022年12月末: 183億ドル
  • 2023年3月末: 164億ドル
  • 2023年6月末: 162億ドル

今回は6月末のポジションの開示であり、前回の3月末からは変わっていないように見える。

だがダリオ氏保有の米国株の株価の動きを見れば、そうでもないことが分かる。

例えば、Form 13Fに報告されているダリオ氏のポジションの内、一番大きなものはS&P 500のETF(IVVが9.0億ドル、他にもSPYが4.6億ドル)だが、S&P 500は以下のように推移している。

米国株は3月末から6月末に向けて概して株価が上がっている。株価が上がっているにもかかわらずポジション総額が変わっていないならば、それは値上がり分ポジションを減らしたということである。実際にIVVは2%、SPYは24%保有株数が減らされている。

ダリオ氏の個別株保有銘柄

ETFを除けばポジションの金額が一番大きいのはP&Gである。株価は次のように推移している。

だがダリオ氏の高配当株選択は、指数と比べると上手く行っているとは言い難い。金利が高くなると配当よりも預金や国債を選ぶ人が増えるが、金利は再び上がっているからである。

ちなみにP&Gの株数も7%減らされている。

個別株で2番目に大きいポジションはJohnson & Johnsonだが、こちらは年始までの動きが悪かった分、最近は好調である。

ちなみにこちらも株数は10%減らされている。

3番目はCoca Colaで、こちらもやはり調子が悪い。

株数は2%減らされている。

結論

明確に空売りをしているソロス氏ほどではないが、6月末のポートフォリオを見る限りでは、ダリオ氏は株式に弱気の見方を継続しているようである。

ダリオ氏はその後アメリカ経済のソフトランディングを支持するような見方を発表しているから、その後考えが変わった可能性はある。

だが経済に強気イコール株式に強気とも限らない。ポートフォリオをそのまま見るのであれば、やはりバリュエーションが高くなってきたことによる利益確定ということだろう。

盛り上がる株式市場に対してファンドマネージャーらは慎重な見方のようである。金利と株価の比較については前回の記事に書いているのでここでは繰り返さない。